肥満細胞腫について その2 | 僧帽弁閉鎖不全症のわんこ。ときどき検査技師のわたし。

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ミニチュアシュナウザーのJerry leeは9歳10ヶ月で虹の橋を渡りました。
僧帽弁閉鎖不全症の手術を受けるため頑張ったジェリーの闘病記録。
そして、飼い主は人間の心エコーとかとっちゃう検査技師なのでちょっとしたうんちく並べてます。

肥満細胞腫。

前回は肥満細胞腫ってなんだろう?
に関して、私なりに調べたこと考えたことを書いてみました。


今回は。

検査について。



ここは、検査技師の出番でしょう


肥満細胞腫は見た目での診断はほぼ不可能です。

なぜなら、
この腫瘍は外見が様々で色や形、硬さなども違うのだそう。


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エヴィのはこれ



わかりづらいですよね。



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エヴィの腫瘍の特徴は



皮膚表面に盛り上がりが少しだけある
まわりの皮膚より白っぽい
その部分に毛が生えていない
大きさは3×4㎜で楕円形
数ヶ月前より大きさは変わらず




火傷をした後の水ぶくれみたいな?
中身がまるで水か油で満たされているかのような。

薄い皮の下に水ぶくれが出来たかのような、
腫瘤というには肉肉しさがないものでした。


なので膨らみ腫れているという印象はなくて、
まさか悪性腫瘍とは夢にも思いませんでした


ただ、
突然、腫れたんですよね


徐々に大きくなったのではなく、とつぜん!


ぷくっと。
厚みが2倍くらいに膨れました


腫瘍自体の範囲は変わってなかったのですが、
中身がたまって厚みだけが増したような変化でした。



急激な変化といえば「炎症」と思い込んでしまって。
でも、これ変化がなかったら病院には行ってなかったかも。



気づいたのが夜だったので、病院には次の日に行きました。




先生の問診。


私は次のことを伝えました。


少なくとも2ヶ月以上前からあるが大きさは変わらない
昨日、気づいたら突然厚みが増して膨らんだ



先生はすぐに
「針生検」をと。


この時点で先生は肥満細胞腫を強く疑ったようです。
なぜか。

前からあるのに突然、大きくなった

これが肥満細胞腫の最大の特徴。
見た目は違ってもこの特徴は同じです。





針生検とは
病気だと疑われる組織(臓器や皮膚など)に直接 注射針を刺し、針の空洞にその細胞を取ること。



わずかに針の中に入った細胞をスライドガラスに吹き付け、染色などを行いその細胞を顕微鏡で観察します。
この検査のことを組織診といいます。


ま。
広くいうと針生検での組織診は病理検査の一つであるということですね。



つまりですが。
針生検だけでもある程度、肥満細胞腫の組織分類(悪性度分類)が可能なんですね〜


ただ。
針生検は病院に常駐の獣医が診ることが多く、
病理医(病理検査で診断する医師)に検査を依頼することが少ないんですね。



肥満細胞腫の疑いはわかっても、
分類までの話はできないといったところでしょう。


獣医でも人間の医師でも、
患者を診る医師と病理医は違います。

これは専門分野がまったく異なるので仕方のないことです。



なので、
手術で切り取ってから「病理検査」に出すんですね。
そして、病理医によって「肥満細胞腫の組織分類」がなされます。



肥満細胞腫の組織分類では

今、主に2つの方法がとられています。


①Patnaik分類

ネットなどでも調べるとよく出てくる、肥満細胞腫を3段階のグレードに分けるものです。


腫瘍細胞の形態、分裂頻度、細胞密度、腫瘍形成場所、間質の反応を評価し判断します。


グレード Ⅰ     高分化型  (低悪性度)
グレード Ⅱ    中間型
グレード Ⅲ    未分化型  (高悪性度)


分化とは細胞の成長度を意味します。
細胞はいきなり大人になるわけではなく、
赤ちゃん細胞を経て子供細胞、大人細胞へと分化(成長)します。


つまり、
高分化とは大人細胞に近いという意味であり、未分化とは赤ちゃん細胞に近いという意味です。

イメージしていただくとわかりやすいですが、
赤ちゃん細胞は核分裂などが活発で、どんどん増えて行きます。
人間の赤ちゃんと一緒で新陳代謝が活発。
悪性細胞が増えていくのは良くないですよね
しかも、赤ちゃん細胞は未知数。
大人細胞の特徴がなく捉えづらいんです。





②Kiupel分類

こちらは最近提唱されてきた分類法で、悪性度を2つに分けるものです。


①の分類より分類方法が明確であり、あくまでも悪性細胞そのものを評価するものです。



低グレード
高グレード



こちらの方が予後予測、つまりこの病気にかかって何年生きられるかに合致するという報告もあります。




ここで、もう一度エヴィの結果報告書を見てみましょうか。


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ちょっと見づらくてすみません



よく読むと、

①Patnaik分類ではⅠ型、つまり高分化型の判定で、


②Kiupel分類では低グレードの判定。


という、2つの分類で報告されているのがわかります。




病理検査の結果なんてむずかしくてよくわからない!
なんて、言わないでくださいね


お気持ちはわかりますが、大事な家族の検査結果です。
犬猿せずに読んでみてくださいね。
それは、病理医からの愛犬についての大事なお話なのですから。






さて。
エヴィですが。


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もさもさ男。

まだ、お風呂も無理ですしね。



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傷はこんなに良くなりました〜


まだ、少しカサブタありますけどね。



実は。
抜糸したはずが、糸が一本残ってましてね

お盆で病院が休みだったので、様子を見ましたが。


ま、いっか


ってことで、鉗子で抜きました



本当に短い糸だったので本犬に気づかれることなく抜けました〜

いい先生なんだけど、
ちょっとあわてんぼうさんなのよね





みなさんの大切な小さな命が、
穏やかな日々の中で輝き続けますように!




今まさに頑張っている君へ

がんばれ!
君には大好きな家族がついてるよ。



祈ってるから。
願っているから。

だから、がんばって!