やるだけやって、
燃え尽きたらそれまでじゃ
笑いのカイブツ
「伝説のハガキ職人」として知られるツチヤタカユキの同名私小説を原作に、笑いにとり憑かれた男の半生を描いた人間ドラマです。
不器用で人間関係も不得意なツチヤタカユキは、テレビの大喜利番組にネタを投稿することを生きがいにしていました。
学生の頃から毎日気が狂うほどにネタを考え続けて6年が経った頃、ついに実力を認められてお笑い劇場の作家見習いになります。
そのなり方もツチヤからしたらよくやったなと思うのですが、ネタ帳をもって直談判。
見るからにコミュ障なのがわかるほどの雰囲気で人を寄せ付けない威圧感もあったりしていたので驚きの行動でした。
晴れて作家への道を歩み始めたかと思いきや、笑いを追求するあまり非常識な行動をとるツチヤは周囲に理解されず淘汰されてしまうのです。
失望する彼を救ったのは、ある芸人のラジオ番組だった。番組にネタを投稿する「ハガキ職人」として注目を集めるようになったツチヤは、憧れの芸人から声を掛けられ上京することになります。
しかしそこでもやはり人間関係で躓きうまくいかないんですね。
社会で生き抜くには才能や実力だけじゃダメで、周囲の人たちとうまくやっていく協調性も必要だし時には自分の意見を飲み込む妥協も必要で。
特にツチヤが身を置いたエンタメ界なんてそれらが顕著な世界じゃないですか。
まともというか馬鹿正直だったり生真面目なタイプは生きていけないのかもしれません。
ツチヤはきっと100%を笑いのことに力を注ぎたいのだろうし、人間関係のしがらみなど考えていなかったはず。
だから希望をもって作家への道を歩んだら自分が思っていた世界と全然違くて戸惑ったと思います。
それがすっごく良く表現されていたし、とてもいい才能を持っていたのに残念だなって。
きっとこういう風に才能がありながら芽が出ず花を咲かせずに終わってしまった人たちはたくさんいるんだろうな。
社会を生き抜く術もまたテクニックですからね。
ツチヤは修学旅行や卒業式にも参加しなかったとセリフにあったのできっと不登校だったのでしょう。
こういうのを観るとやはり協調性などを学ぶのに学校って必要かなって思いますね。
主演を務めた岡山天音がとっても素晴らしくて。
縁起というより憑依した感じて凄みがありました。
もともと役幅が広くて良い役者さんだなと思っていましたが、こうして主演を張れるようになったのが嬉しいです。
個人的には今年の日本アカデミー賞の主演男優賞のノミネートは間違いないと思います。
仲野太賀、菅田将暉は岡山天音と10代から切磋琢磨してきた間柄ですから彼らが「友情出演」しているのが本当に嬉しかったです。
「友情出演」とは僕が勝手言っただけでガッツリ出演しているので彼らの掛け合いもまた見どころです。
岡山天音ホンすごかったな~
日本の映画界は若手俳優の群雄割拠で面白いです!
※2024.1月 ヒューマントラストシネマ有楽町
映画『笑いのカイブツ』公式サイト (sundae-films.com)