そのラーメン店一八亭は、青い目をしたイタリア人が経営しているのである。
私が入店した時は、せっせとカウンターを拭いて掃除をしていた。
最初にスーパードライではない、アサヒの瓶ビール熟撰を頼んだのだが、ポルケッタとアペロールをメニュー内に見つけて、
思わず追加してしまった。
アペロールはアペロール・スプリッツをとお願いしたのだが、それをわかる客が少なく今はソーダ割りしかできないと店主は言った。
かまわないのでと私はアペロールのソーダ割りをもらったのである。
ポルケッタは、一見チャーシューのようだが、しっかりポルケッタで美味しい。
アペリティーボのように昼下がりのアペロールに合うではないか。
さて、私はよくビリケンさんと呼ばれ、私が入るとよく後から客が入ってくることが多い。
その日も私が入店した後、立て続けに6人のお客さんが入ってきて、ワンオペの店主はてんてこ舞いの忙しさになってしまったのである。
後から入ってきた客はいずれも醤油ラーメンか味噌ラーメンを頼んでいたが、私はローマまぜそばを注文していた。
このまぜそばの麺は自家製でデュラムセモリナ粉で作られている。
麺の上には、生ハムと葱とペコリーノ・ロマーノと生卵が載せられている。
それをよくかき混ぜ、言われていないが、上から黒胡椒かけ喰う。
まさにカルボナーラではないか。
実際、塩気のあるペコリーノ・ロマーノを使っているのでいい塩梅でたいそう美味しい。
元々ローマではカルボナーラにパルミジャーノはあまり使わない。
使うチーズは、普通ペコリーノ・ロマーノかグラナパダーノと決まっているのだ。
まさにラーメンの麺を使ったカルボナーラの味わいだったのだ。
その辺のカルボナーラよりよっぽど本物臭い。
そういうことを知らないと一味足りないとかカルボナーラとは違うとかいう人がきっといるのだろう。
ティッシュ入れまでローマだった。
調子に乗って、リモンチェッロとエスプレッソまで頼んでしまう。
リモンチェッロは冷えたものをショットでいただく。
エスプレッソは心を込めて作ってくれた。
とても美味しかった。
帰り際に店主と話をして美味しかったと伝えたらとても喜んでくれた。
イタリア人というとパンツェッタ・ジローラモ氏のように陽気で大柄なイメージを抱く方も多いだろうが、この店の店主は小柄でシャイである。
強面に見えるが、話してみると実直で朴訥でいい方である。
イタリア色を全面に出そうとしている部分もあるがなかなかうまくいっていないのかもしれない。
しかし、ここは美味しいのだ。
どこにポルケッタやアペロールやリモンチェッロやエスプレッソが味わえるラーメン屋があろうか。
ちなみにボトルだがシチリアのワイン等も良心的な価格で飲むことができる。
イタリア好きの方は是非お試しあれ。
今度イタリア人を沢山連れて食べに行きたい。