山玄茶の春の料理とおもてなし | ジャン=ピエールの霧の中の原風景

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こだわりの食とお酒を味わった思い出や情報を綴ります。

祇園東近くにある山玄茶を訪れた。


坪庭の見えるカウンター席に通される。
光の入り方も含め眺めが美しい。


お酒は滋賀の名酒不老泉の山廃純米吟醸をお願いした。


先付は雲丹豆腐であった。
大将の腕のキレがうかがえる。


お椀は塚原の筍と真鯛と蛤真薯である。
出汁が素晴らしい。


お造りは鰹、烏賊、赤貝、鮑、活きサザエ、鯛春キャベツクリームチーズ巻き、いずれも最上質のものでかつサラダ仕立てになっていた。


穴子の飯蒸しもしみじみと美味しい。
特に自家製の近江山の中の餅米はとんでもなく美味しかった。


鱒の山椒焼きは手間がかかっていて香りがとてもいい。


そして、ここで八寸である。
蛸の柔らか煮、鯛の子、バイ貝、近江八幡赤蒟蒻、鯖寿司など、日本酒をどんどん頼まなくてはいけなくなる。
やはり大将は近江のご出身で酒蔵の杜氏も地元の顔馴染みのようである。
大治郎の純米吟醸生酒や一博の純米生酒をぐいぐい飲んでいったのである。
大将はとても優しく気遣いの素晴らしい方で、フルーティな酒しか飲めない私の同行者には英勲の純米吟醸酒有夢を黙って出してくれたのである。


伊勢海老やこごみの天ぷらや


塚原の筍を使った若竹煮に舌鼓を打つ。
その時である。
大将が花咲か爺さんのように桜の花びらを客に向け蒔いてくれたのだ。
毎年この時期にだけパフォーマンスとして行うという。
何という遊び心だろう。
実に楽しい。


最後の食事は、大将が地元の近江で丹精込めて自家用に作られた本物の江州米を出してくれる。
最初に炊きあがったばかりのものを少し味わせてくれる。
その後、釜揚げしらすと自家製鯛のおぼろと一緒に白米をいただく。


赤出汁は何と上澄みだけで作ったものだ。


さらに特別にせっかくだから筍ご飯も食べていってと塚原の筍ご飯をおこげつきで出してくれた。


デザートも苺の和風ムースの後、目の前で関東風の桜餅をと言って作って出してくれた。
道明寺だと珍しくないのでとのことだったが、この桜餅は皮が関東のようにクレープ状のものではなく、プレミアムおたべの皮のようだったのである。


写真を載せるのに制限があるため断念した写真も多いが、兎に角素材も技術もセンスも味わいも抜群で、何よりもホスピタリティに溢れ、たいそう素敵な店だったのである。
全く逆の位置にいるどこぞのデパートに出店している老舗の料亭の責任者にここに食べに来てもらい本物の京料理のサービスを今一度思い出してもらいたいものである。