ランチでその並々ならぬ美味しさに味を占めた私は予約して夜に直會撰を再訪したのである。
まず、到着に合わせてお願いしていた焼き筍のおでましである。
焼き筍は大きさや時期などによってえぐみや軟らかさが全く違ってくる。
その日は焼き筍に最適の筍があってそれを焼いてくれた。
その味はこの世のものとは思えないほどの一期一会の美味しさである。
京都塚原の朝堀筍の実力に恐れ入ったのである。
しかし、焼き筍は、その日の宴の序章にしか過ぎなかった。
目眩がするほどの塚原の筍尽くしが始まったのだ。
まずは、最高級の脂の香り漂う近江牛と筍の炊いたんである。
頬が緩む程の牛肉の旨さに相まって筍がそのエキスを吸っているのである。
続いてお造りが出された。
湯葉の刺身も立派だが、筍の刺身には驚かされた。
刺身用の筍は風味がまた違って清々しい。
最上等の鱒の刺身も素晴らしかった。
そして、リクエストしていた昆布と筍の山椒煮を山のようにして出してくれたのだ。
やはり同行者もこの美味しさには目を剥いていた。
八寸には、筍の木の芽和えもあったし、海老豆と筍を一緒に炊いたものもあった。
いずれも癖になる美味しさでたまらない。
さて、いよいよ鳥すきの始まりである。
削ぎ切りされた京赤地鶏が沢山盛られていた。
この店の元締めは野菜専門店である。
筍や漬物だけではなく、京野菜も最高のものが用意されていた。
野菜があまり好きではない私たちだが、夢中になって野菜も頬張る。
黄身の色が濃い京赤地鶏の卵に鶏肉や野菜をつけて食べる。
何と美味しいのだろう。
グツグツと煮えた端からどんどんいただいていく。
忘れてはならないのだが、この鳥すきにも塚原の筍が惜しげもなくたっぷりと入っているのだ。
最後は、とどめの一撃。
筍ご飯と赤出汁と特撰自家製漬物である。
もうぐうの音も出やしない。
赤出汁も
筍ご飯も私は美味しくいただいたが、同行者はあまりの量にギブアップし、筍ご飯をお土産にしてもらうことにした。
しかし、そのお土産の筍ご飯はかなり増量してくれていたのだ。
デザートもいただき、
私たちは心もお腹もいっぱいになって店を後にした。
その時、同行者は近いうちに必ず家族を連れてくると言ったのである。