中庭を愛でながら酒の肴を楽しむ蕎麦屋 | ジャン=ピエールの霧の中の原風景

ジャン=ピエールの霧の中の原風景

こだわりの食とお酒を味わった思い出や情報を綴ります。

記念日にリクエストがあってある蕎麦屋を訪れた。

蕎麦屋と言っても酒の肴を民家で楽しるお店である。

店に入り、今日は縁側の傍らの広いテーブルの席に座った。


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縁側への引き戸は取り外されていて縁側と中庭が見渡せる。


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縁側では専門の容器に入った蚊取り線香が焚かれていた。

時おりいい風が入ってきてまさに夕涼みである。

少し離れた縁側では四人家族が仲睦まじく食事をしていた。

小学生の男の子二人が中庭で今日は蛙がいないかなと話をしている。

ここは新宿区の住宅街のど真ん中だがどう考えても青梅か秩父にいる風情である。


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まず日本酒を選ぶ。

最初は佐賀の鍋島の純吟純米生酒にした。


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自分の好きなぐい呑みを籠の中から選ぶ。

私は青の釉薬の使われたものを、連れはガラス製のものを選んだ。

料理は軽いコースに地鶏腿肉の焙り焼きをつけてもらった。


最初に細長い皿が出された。

皿に載っているのは大根の葉を炒めたものと切り干し大根と自家製ポテトサラダである。


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素朴だが丁寧に作られていてどれも美味しい。

マヨネーズも自家製のポテトサラダの優しい味わいが特にたまらない。

コクはあるが少しフルーティな鍋島の冷やによく合う。

この皿の料理を食べ終えた頃大きな丸い皿が届けられた。


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大皿に載っているのは、タコの刺身、煮穴子、カタクチイワシの酢〆、藁で炙った鰹の叩き、自家製アンチョビ豆腐、煮豆である。

タコの刺身と煮穴子の半分は天然塩で食べてみる。

カタクチイワシは仕込みはたいへんだが活きのいいものが手に入ったので酢〆とアンチョビを作ったと言う。

鰹の叩きは藁で炙っているのでその香りが鰹の身に移っていてすこぶるいい香りがする。

自家製の豆腐も美味しいがアンチョビがこの世のものとは思えないほど美味しい。

甘くはないがコンフィチュールのようであった。

煮豆は少し歯ごたえがあり甘くはないが素朴な旨みがある。

酒の肴としては抜群であった。


自家製の漬物も皿に載せられ出された。

蕪と胡瓜のぬか漬けと蕗の醤油漬けである。


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特に大好きな蕗は柔らかく程よい苦みとしょっぱさがたまらない。

気がついたらお酒がなくなってしまった。

通好みの隠れた名酒、徳島の旭若松の純米生原酒を注文する。

ぐい呑みも換えてみた。


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コクと酒の旨みがもの凄い。

このあと結局二合頼んでしまった。

次はお待ちかねの玉子焼きである。


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地鶏腿肉の焙り焼きもできあがった。


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腿肉丸々一枚を炭火で焼いている。

皮がパリパリである。

いい香りがする。

噛みしめると肉汁が溢れ出てくる。

半分は塩で、半分は柚子胡椒でいただいた。

冷や酒に合ってしまってしかたがない。

旭若松はこの料理のためにあるような酒であった。


最後は締めのもり蕎麦である。

100%蕎麦粉、つなぎなしの打ち立てできたての蕎麦である。


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すぐのびるのでつゆを少しつけ蕎麦を手繰る。

最初はつゆに何も入れず、半分ほどになったら擦りたての山葵を入れて食べる。

葱はすべて蕎麦を食べ終わってから入れ蕎麦湯を注いで楽しむ。


夜は静かに更けていった。

私はこの店よりも風情のある蕎麦屋を知らない。


ちなみにこの店へは東長崎駅か落合南長崎駅が一番最寄りの駅になると思う。