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jdeafのインフレカバー研究

世界の超インフレーションの郵便物研究

ほぼコロナ発生以前に戻り、切手展なども開催され、出品したり参観したりできるようになったのは、大変有難いことです。

ドイツインフレ100年という節目の年、ドイツ・エッセンで久しぶりに開催された世界切手展 IBRA 2023 に、ドイツインフレを出品し、金賞という高評価を戴き、ドイツインフレの師匠と会えたのは、インフレ収集の中でも、忘れられない事でしょう。 IBRA 2023 では、ユーゴスラビアインフレの師匠とも会い、その師匠の作品、ユーゴスラビアインフレがモダン部門(現代郵趣部門)の郵便史で初の金賞となったのも大きな出来事です。

今後も、インフレカバー収集を進め、切手展出品を続けることが出来ればと思います。

 

良いお年をお迎えください。

ちょうど100年前の1923年12月31日まで、インフレ切手は有効でした。翌1924年1月1日、インフレ切手は無効となります。

 

画像は、1923年12月31日、Endingen am Kaiserstuhl (エンディンゲン・アム・カイザーシュトゥール) から Pforzheim(プフォルツハイム)への国内葉書です。貼られているのは、100億旧マルク切手5枚です。

差出局が、Endingen am Kaiserstuhlとなっているのは、出来過ぎです。しかも、現人口1万人程の小さな町のようです。フィラテリックの可能性も考えたのですが、ドイツ人の知り合いに見てもらったところ、文面は、ごく自然なものだそうです。時系列作品の場合、映画の最後の"Fin" (フランス語ですね)のようで、最終リーフを飾るのに相応しい逸品でしょう。

ちょうど100年前の1923年12月1日、インフレ切手は販売停止となり、レンテンマルク切手が発行されました。4倍料金は、このレンテンマルク切手を作成するための措置でした。4倍料金は廃止されました。国内書状800億マルク(4倍料金)は、11月26日から30日までの5日間でした。

 

インフレ切手は、1923年12月31日まで有効で、100億旧マルク(Mark) = 1新ペニヒ(1Pfennig=0.01 レンテンマルク) で換算されました。

1923年12月、インフレ切手のカバーは、12月カバーと呼ばれています。レンテンマルク切手との混貼は人気があります。

 

 

画像は、1923年12月1日、ベルリン (Berlin) から、ライプツィヒ (Leipzig) への国内書状です。レンテンマルク切手が貼られています。額面は10新ペニヒです。切手のデザインは、ロゼッタ図案で変わっていませんが、中央の数字の字体が変わっており、特に、数字の下に、'Milliarden' や 'Millionen' の文字がなく、更に、切手下部に、ゼロが並んでいません。ロゼッタ図案を流用したことから、急ぎで発行されたため、新デザインを作る余裕がなかったことが伺えます。

 

 

画像は、1923年11月26日、ドレスデン (Dresden) から、デッサウ (Dessau) への国内書状です。貼られているのは、500億旧マルク切手です。500億マルクは、ドイツインフレの最高額面です。100億旧マルク=1新ペニヒで換算なので、1,000億旧マルクは、10新ペニヒで、最初のカバーと同一料金です。

 

インフレ切手販売停止と共に、4倍料金は廃止されました。4倍料金ほどではないのですが、4倍料金とは逆の混乱が生じました。4倍料金が廃止されたことを知らずに、切手額面の4倍に換算して、切手を4分の1の額面で貼ってしまった例があります。

 

 

画像は、1923年12月1日、ラグーン (Raguhn) から、ライプツィヒ (Leipzig) への国内書留です。切手の額面は、20が3枚、5が3枚で、計75 Milliarden = 750億旧マルク = 7.5新ペニヒです。書留なのに、書状10新ペニヒより安くなっています。これは、4倍にすると、30新ペニヒで、書留の料金に合致します。書留を引受けた郵便局員が間違えたのは、割と珍しいではないかと思います。

ちょうど100年前の1923年11月26日、郵便料金は、4倍値上げしました。国内書状は、200億マルクから800億マルクになります。国内書状200億マルクは、11月20日から25日までの6日間でした。この値上げで特筆すべきなのは、値上げと同時に、郵便局では、額面の4倍で切手を販売した(4倍料金)ことです。つまり、国内書状800億マルクに、額面200億マルク分の切手を貼れば、OKなのです。

 

 

画像は、1923年11月26日、ライプツィヒ (Leipzig) から、メレンバッハ (Mellenbach) への国内書状です。1923年11月20日のカバーと見た目が同じ100億マルク切手2枚貼りですが、800億マルク料金で、正しい使用例です。1923年11月25日に、切手を200億マルクで買っていれば、インフレ(4倍料金)に影響されずに、200億マルクの負担で済み、ラッキーです。この切手の額面の4倍というやり方は、前代未聞の措置で、混乱を産みました。

 

 

画像は、1923年11月26日、ブランデンブルク (Brandenburg) から、マクデブルク (Magdeburg) への国内書状です。額面5が10枚、額面10と20が1枚ずつ、合わせて額面80*ゼロ9個(10億)=800億マルクです。4倍料金値上げだけ知って、切手の額面も4倍になるのを知らずに、手持ちの切手を額面通り貼ったのでしょう。

 

 

 

 

画像は、1923年11月26日、フランクフルト (Frankfurt) から、ドルトムント (Dortmund) への国内書留です。注目すべきは、額面10の切手4枚(=40)に対して、カバーの右上に、"160" が書き込まれていることです。これが、4倍料金であることの状況証拠です。

 

何故、4倍値上げと同時に、切手を額面の4倍で販売という、前代未聞の措置を行ったかというと、インフレ切手の追加製造を避けるためでした。12月に新通貨の切手を販売する予定で、新通貨切手の製造を優先する必要があったのです。4倍値上げだけでは、郵便局で切手が不足する怖れがあったので、切手が不足しないように、切手を額面の4倍で販売することにしたのです。

 

 

 

 

ちょうど100年前の1923年11月20日、郵便料金は、2倍値上げとなりました。国内書状は、100億マルクから200億マルクになります。10倍値上げが3回続いた後なので、かなり緩い値上げに感じられます。国内書状100億マルクは、11月12日から19日までの8日間でした。

 

 

画像は、1923年11月20日、ベルリン (Berlin) から、アーケン (Aken) への国内書状です。1923年11月12日のカバーに貼られた切手の500より、10と小さな数字になっています。数字が小さくなった代わりに、数字の下の文字が 'Millionen' から 'Milliarden' に変わっています。ゼロ6個から、ゼロ9個(10億)になっています。実際に、切手下部の数字は、 "10 000 000 000" とゼロが10個並んでいます。100億マルク切手2枚で200億マルクです。

ちょうど100年前の1923年11月12日、郵便料金は、再三の10倍値上げとなりました。国内書状は、10億マルクから100億マルクになります。国内書状10億マルクは、11月5日から11日までの7日間でした。3回連続の10倍値上げで、2週間足らずのうちに、1,000倍となります。

 

 

画像は、1923年11月12日、フュルステンヴァル (Fürstenwalde) から、ベルリン (Berlin) への国内書状です。一気に切手が増えて、表に15枚、裏に35枚、合わせて50枚貼られています。500ミリオン切手20枚で、10,000ミリオンで、100億マルクです。億とかで考えると混乱します。1ミリオン(1,000,000)はゼロが6個なので、500ミリオン切手20枚は、5*ゼロ8が20枚=100*ゼロ8(億)=100億といった感じで脳内変換しています。

ちょうど100年前の1923年11月5日、郵便料金は、10倍値上げされました。国内書状は、1億マルクから10億マルクになります。国内書状1億マルク料金は、11月1日から4日までの僅か4日間でした。この4日間が、ドイツインフレで最短料金期間です。

 

 

画像は、1923年11月5日、アルテンブルク (Altenburg) から、ベルリン (Berlin) への国内書状です。一気に切手が増えて、表に15枚、裏に35枚、合わせて50枚貼られています。20ミリオン切手50枚で、1,000ミリオンで、10億マルクです。慣れない人は、このあたりで、桁が分からなくなって混乱するでしょう。10億というと、非常にお金持ちになった気分ですが、国内書状1通の料金で、今の日本円で、100円もしません。

ちょうど100年前の1923年11月1日、郵便料金は、10倍値上げされました。国内書状は、1,000万マルクから1億マルクになります。国内書状1,000万マルク料金は、10月20日から31日までの12日間でした。

 

 

画像は、1923年11月1日、メラーネ (Meerane) から、タイフィンゲン (Tailfingen) への国内書状です。貼られているのは逆向きですが、100ミリオン (= 1億)マルク切手です。

ロゼッタ図案の数字が100になって、1923年10月20日と並べると、10倍になったのが一目瞭然です。

ちょうど100年前の1923年10月20日、郵便料金は、一律2倍値上げされました。国内書状は、500万マルクから1,000万マルクになります。国内書状500万マルク料金は、10月10日から19日までの10日間でした。

 

 

画像は、1923年10月20日、ハンブルク (Hamburg)から、ドナウエッシンゲ (Donaueschingen) への国内書状です。500万マルク切手が2枚になって、1923年10月10日と並べると、2倍になったのが一目瞭然です。このようにロゼッタ図案切手は、倍々になっているのが枚数で分かりやすいです。

ちょうど100年前の1923年10月10日、郵便料金は、一律2.5倍値上げされました。国内書状は、200万マルクから500万マルクになります。国内書状200万マルクは、10月1日から9日までの9日間でした。

 

 

画像は、1923年10月10日、ドレスデン (Dresden) から、オーバーノイキルヒェン (Oberneukirchen) への国内書状です。加刷がなく、正刷です。中央の5の下の "Millionen" は、100万 を意味するドイツ語です。更に、注目すべきは、切手の下部に、 "5 000 000 M" とゼロが並んでいることです。 この図案は、ロゼッタ図案として、この後、インフレの主役として、躍り出ます。数字と色を変えるだけで、色々なロゼッタ図案の切手が出現します。なお、この500万マルク切手は、1923年10月9日の使用例が知られています。フライングです。