[ 前提A: 幽霊とは文字通り、霊的存在である ]
霊的存在、すなわち物理的実体ではないため、物体に干渉することはない。
当然ながら、物理的実体でないならば、質量や運動量を持つこともない。
[ 前提B: 「存在する」とは、何らかの物理的手段で人間に知覚される、ということである ]
ここで定義された「物理的手段」とは、人間の直接的な認知(=五感)のみならず、
何らかの計測器を用いた間接的認知をも含む。
(※例えば、放射線は目に見えないが、計測器を使うことで間接的に認知することが出来る)
なお、100文字以上の文章を読むのが苦痛という方は、
記事の最後にある「まとめ」だけを読m…てか、そもそもこんなブログに来るな (゚⊿゚`)
まず、心霊現象と呼ばれるもの、例えば「心霊写真」を例に考えてみよう。
ちなみに、心霊写真
とは、幽霊が写し取られた(とされる)写真である。
ところで、写真を撮影するカメラとは、物体が反射した外光を
レンズを通して内部の感光部が受け取り、その光を一定の方式で色素に置き換える機材である。
(※デジタルカメラの場合、受容した可視光をデジタル信号に変換する装置である)
つまり、写真上に映し出されるものとは、可視光を反射する物体か、
可視光(=可視域の電磁波)そのものに他ならない。
もし、幽霊と目される映像が前者であれば、
それは電磁波と干渉(※ここでは反射か吸収)する物質であり、前提Aより、幽霊ではない。
また、後者であったとしても、カメラの感光部に影響を与える、
言い換えれば、物理的干渉を起こす実体であり、前者と同様に幽霊ではあり得ない。
以上、少なくとも写真の映像として撮影されている時点で、
カメラの感光部に何らかの物理的干渉を起こしているわけだから、
心霊写真の幽霊(と見なされている映像)は、必然的に物質か、物理現象の産物である。
すなわち、心霊写真の「幽霊」とされる「何か」は、すべて物理的実体の反射光像か、
光に対する物理的作用によって生じた実体のない像である。
(※例えば、レンズフレア
や スミア、レンズ特性による各種収差などが考えられる)
ところが、定義上、幽霊は霊的存在であるため、物理的干渉を起こすことは不可能であり、
写真上の映像となることはあり得ない。よって、心霊写真に幽霊は写っていない。
たとえ、その映像を未知の物質・物理現象の産物だと仮定しても、
物理的干渉が起きている以上、それは物理法則に従う物理的な「何か」であり、
前提Aより、幽霊ではあり得ない。
以上の考察を敷衍して考えてみよう。
写真の例に挙げられるように、間接的とはいえ、
何らかの物理的手段によって存在が確認されている時点で
その「何か」は必然的に物理的実体であり、霊的存在、幽霊ではあり得ない。
また、幽霊を「霊感が強い」とされる人々だけが知覚できる存在、と仮定してみても、
特殊な感受性を持った人物の「感覚」を通して認識されるわけだから、
何らかの物理的干渉を引き起こしてることには変わらず、やはり幽霊ではあり得ない。
ここで前提Bを再確認しておくと、存在=知覚されるもの、であった。
ちなみに、「知覚される」ためには、何らかの物理的手段に頼るほかない。
実際、視覚や聴覚、嗅覚、触覚、味覚、観測機器による確認など、
いずれの手段をも介さずに「何か」を知覚することは原理的に不可能だ。
つまり、「何か」が直接的にも間接的にも知覚され得ないのであれば、
その実在を確認する手段は全く存在しない、ということになる。
ところで、幽霊は霊的存在であるため、物理領域に干渉することが出来ない。
これを言い換えれば、幽霊には「物理的手段によって知覚されることがない」
という普遍的な性質が備わっているということだ。
そして、この幽霊の持つ「知覚されることがない」という性質は、
前提Bより、「存在しない」ということを表している。
よって、幽霊は存在しない。
[ 補講 ]
この記事における幽霊の非存在証明は、世界の 物理的閉鎖性
を大前提としている。
別の言い方をすれば、「現実世界から到達可能な諸可能世界群」の範囲内でのみで成立する。
もし、現実に物理法則の対称性が破れることがあるとすれば、
幽霊の非存在は必然的なものではない(※依然として存在しない可能性はあるが)。
とはいえ、因果的開放系においては、霊的存在に神秘性を認めることは出来ないだろう。
世の中に人間やネコ、椅子といった事物があるように、ただ「あるがまま」の存在である。
(※人間が幽霊を恐れるのは、それが物理的閉鎖を超越する存在だから、である)
また、もう一つの大前提として、普遍論争
における 唯名論
の立場を採っている。
つまり、「幽霊」と名指しされる諸物を「幽霊」として扱っているのであり、
事物に先立って存在する抽象的実在としての「幽霊」を認めていない。
事実、そのように名指しされる諸物に共通した性質を考察することで、
それらがことごとく「幽霊」の定義と矛盾をしていることを示し、
定義と合致する個物があり得ない以上、その非存在が証明される、という流れだ。
[ まとめ ]
前提Aより、幽霊は霊的存在であるため、物理的干渉を起こすことが出来ない
物理的干渉を起こせないならば、どんな手段を用いても知覚することが出来ない。
つまり、幽霊は知覚することができないのだから、前提Bより、存在が否定される。