ノルウェイで起こった無差別テロの背景に寛容な移民政策がある、
といった言説をよく耳にする。
また、この事件は「日本にとって良い教訓だ」と
外国人労働者の受け入れを牽制するような意見もある。
ところが、外国人労働者の受け入れに関して言えば、
日本は欧州より半世紀以上も前に似たような問題を抱えていた。
いわゆる、在日朝鮮人問題だ。
ここで問題にしているのは、強制連行
の一件ではない。
事実、在日朝鮮人たちの祖先は、大半が自主的に日本に渡ってきた。
これは、ちょうど欧州へ働きにやって来たイスラム系移民の立場に似ている。
故郷では喰えないので、裕福な国(あるいは内地)へ出稼ぎに来たというわけだ。
確かに建前上、前者は自国民であり、後者は外国人という違いがあるが、
異民族(あるいは異教徒)という点では大差ない。
戦後、日本国籍を剥奪(あるいは解放)された在日朝鮮人たちは、
「安い労働力として使われ続けたあげく、突如として賊徒として扱われる」
という非常に不条理な立場に置かれた。
これも欧州におけるイスラム系移民の現状と驚くほど良く似ている。
また、移民抑制策が上手く機能しなかった、という経緯も含めて瓜二つだ。
かの有名な白洲次郎
(と吉田茂
)は、国内に残留する数十万人の朝鮮人を
ことごとく国外追放処分にしようとしたらしいが、
その果断(あるいは過激)な意見は GHQ
に退けられたという。
ところで、ノルウェイのテロ実行犯は、自国に対して
「日本や韓国のような民族主義の国を見習うべきだ」
と語っていたらしい。
まあ、日本人には意外に思うかもしれないが、
欧州の基準からすれば、日本は「極右国家」といっても過言ではない。
(※なお、この「極右」という言葉遣いに価値判断は含んでいない)
意識しているかどうかに関わらず、
日本は異文化・異民族に徹底して不寛容(というより無関心)であり、
「多文化共生」などと口に出すと白眼視される徹底した民族主義国家なのだ。
(※しつこいようだが、この「民族主義」という言葉に非難の意味合いはない)
実際、日本が「単一民族国家」を標榜するようになったのは、
小熊英二
教授が看破したように戦後以降
だが、
それは前述した移民問題が少なからず影響しているのだろう。
(※ちなみに、戦後最初に民族主義を説いた
のは、日本共産党だ)
結論として、日本は民族主義を掲げることで
厄介な移民問題を帳消ししようと努めた(※そして失敗した)が、
果たして欧州各国はどのような形で問題解決を図るのだろうか。