「不動産」を愛するわが子に遺したい…その親心が仇になることも! | 太陽会計税理士法人

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得意分野としては、建設業と会社設立を得意としています。
中小企業に不足がちな税務、法務、許認可部門を支えます。

 不動産は大きな財産ですが、それだけにトラブルになる危険をはらんでいます。

 トラブルを避けるにはあらかじめ「遺言書」を作成しておくことが大切ですが、その際、最低限、これからお伝えする3つのポイントを押さえておいていただきたいと思います。

 

ポイント1|不動産の所有権を確認する

 遺言書のベースとなるのが「登記」です。

 登記がきちんとおこなわれていれば遺言書の作成はスムーズでしょう。

 注意が必要なのが、所有権の移転登記を済ませていないケースです。

 

 たとえば、祖父母の代から父母、そしてあなたと3代にわたって住んでいる住居で、祖父母・父母ともに故人であるにも関わらず、所有権が「祖父のまま」ということもあります。

 この場合は特に厄介です。

 祖父からあなたへ所有権をすぐに移転することができないからです。

 

 まず、祖父の法定相続人の遺産分割協議を取りまとめなくてはなりません。

 もしも法定相続人が故人になっているなら、その相続の権利をさらに引き継ぐ人を探さなければなりません。

 祖父の死から遺産分割協議に至るまでの期間が長ければ長いほど、引き継ぐ人は増えていくことになります。

ポイント2|家族が不動産の相続を希望しているのか確認する

 山林や地方の土地など、先祖から引き継いだものの使い道がない不動産がある場合、どうするかも考えておきましょう。

 「先祖代々の土地だから」とはいっても、遺された家族が維持管理の費用を引き受けるつもりがあるのか確認が必要です。

 

 もし、家族にとって負担感が大きいようなら、2023年4月にスタートした「相続土地国庫帰属制度」の利用を検討してもよいでしょう。

 この制度では相続や遺贈された土地の所有権を国にすることができます。

 相続土地国庫帰属制度を利用するための要件は以下の通りです。

 

相続土地国庫帰属制度を利用するための要件】

・建物等が立っていない「更地」であること

・土壌汚染や埋設物がないこと

・崖がないこと

・権利関係について争いがないこと

担保権等(抵当権、不動産質権等)が設定されていなこと

・通路等として使用されていないこと

 

 なお、制度を利用するには10年分の管理費用を納める必要があります。

 

ポイント3|「共有名義」での相続は避ける

 相続財産が不動産だけで他に預貯金等がない場合、唯一の財産である不動産を、複数の相続人でどのように分けるかが問題になります。

 

 本来、不動産を売却して現金化し、現金として相続する「換価分割」が一番シンプルな相続の方法です。 

 しかし、「近辺の開発が進むらしい」「大型ショッピングモールができると聞いた」「とにかく不動産は売らないほうがよい」など、将来的な価値の上昇を期待して売却に積極的になれないことはよくあります。

 

 そこで、相続人同士が話し合った結果、「一番平等だから」という理由で不動産を売却せずに「共有名義」(共有分割)にすることを選ぶケースがあります。

 しかし、これはあまりおすすめできません。

 

 なぜなら、不動産を複数で所有すると、権利関係が複雑になってしまうからです。

 すなわち、不動産の売却やリフォームをする場合は他の共有者全員の同意が、賃貸に出す場合は3分の1の同意が必要とされています。

 

 さらに、共有者の1人が亡くなって、その子供達が共有部分を相続することになると、共有者がどんどん増え、権利関係はより複雑化します。

 

 たとえば、相続人が長男、次男、長女の3人で、残された不動産を3分の1ずつの共有名義で相続したとします。

 その後に長男が亡くなって長男の妻と2人の子が相続したら、長男の妻が6分の1、2人の子が12分の1ずつ共有することになり、権利関係が複雑化してしまいます([図表]参照)。

 こうなれば、不動産の売却やリフォームはもちろん、賃貸するだけでも大変です。

 

 したがって、たとえ将来の値上がりの可能性があったとしても、共有名義で相続させることは避け、遺言で換価分割を指定することをおすすめします。

 

 以上、不動産が遺産に含まれる場合に想定されるトラブルを未然に防ぐため、最低限押さえておいていただきたい3つのポイントを解説しました。

 不動産という大きな財産が厄介ごとの種にならないよう、その後の不動産の扱いについて家族と話し合い、意向を聞いておきましょう。

 

 

 

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