税務調査の件数
一般的に令和〇〇年度は4月から翌年3月のことだが、税務署は7月から翌年6月を事務年度としている。
令和8事務年度は令和8年(2026年)7月から令和9年(2027年)6月末。
先月末で令和7事務年度が終わり、新しい令和8事務年度に突入したところだ。
サラリーマンや個人事業主の所得税は1月~12月が対象期間で、翌年2~3月に確定申告を行う。
法人の決算日は任意となるが、3月末決算の企業は5月末までに法人税を申告する。このあたりのスケジュールを考慮して事務年度が設定されたと思われる。
国税庁は毎年11~12月に「所得税及び消費税調査等の状況」というレポートを公開している。
レポートには税務調査を行った件数、申告漏れの件数、積極的に調査している業種、申告漏れ所得金額が上位の業種などが記載されている。2025年12月に公開された最新版の「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」を見てみよう。
まずは税務調査の実地調査件数、申告漏れ件数、申告漏れ所得金額。グラフは平成28事務年度~令和6事務年度の実数で、左軸が実地調査(青線)と申告漏れ(オレンジ線)の件数、右軸が申告漏れ所得金額(棒グラフ)となっている。
コロナ禍で令和元事務年度・令和2事務年度(2019年7月~2021年6月)に減少した税務調査件数は、令和3事務年度・令和4事務年度は急増したが、令和5事務年度・令和6事務年度は横ばいの傾向となった。
公開された資料で「主な取組」として紹介されているのは以下の6項目で、これは前年とだいたい同じだ。
- 富裕層に対する調査状況
- 海外投資等を行っている個人に対する調査状況
- インターネット取引を行っている個人に対する調査状況
- 無申告者に対する調査状況
- 消費税の還付申告者に対する調査状況
- 所得税の還付申告への対応
税務調査の対象となりやすい個人事業主の傾向は?
税務調査を受ける人は1%以下。
ランダムに対象者を選ぶなら100人に1人以下、100年に1回以下となるが、実際はランダムではなく、“怪しい人”を選んで税務調査は行われている。
以下の6項目に該当する人は、税務調査の対象となりやすいと言われている。
①確定申告をしていない無申告の人
②申告漏れが多い業種を営む人
③経費が多すぎる人、不審な点がある人
④現金商売を行っている人
⑤新分野のビジネスを行っている人
⑥売上がギリギリ1000万円弱の人
順番に説明を加えよう。
①確定申告をしていない無申告の人
収入があるのに確定申告をしない人には、意図的に申告をしない人と、意図せず(気付かず)申告をしない人がいる。副業などで20万円以下の所得は所得税の申告の必要がない。
お小遣い程度だった副業が気付かぬうちに20万円を超えると、突然、税務署から振込用紙が入った封書が届くことになる。
昨今問題となっている人気景品の転売も、所得額が大きくなると納税の対象となる。悪意を持って「バレないだろう」と意図的に申告をしない人も、取引先の法人が税務調査を受けると簡単にバレてしまうので注意しよう。
今年の資料には、「無申告・インターネット取引事案」として、いわゆる“転売ヤー”の事例が紹介されている。
要約すると、サラリーマンが副業でスマホやゲーム機を転売。本人のPCやスマホから取引先(買取業者)を特定、売上(転売した金額)に係る書類を破棄していたため、取引先を反面調査し収入を把握し、重加算税を課したとのことだ。
過去7年の所得税の追徴課税は約2700万円。
②申告漏れが多い業種を営む人
「所得税及び消費税調査等の状況」には、「1件当たりの申告漏れ金額が高額な上位10業種」と「過去10年の上位5位業種」が掲載されている。
平成27事務年度~平成30事務年度の4年間は「風俗業」と「キャバクラ(キャバレー)」がトップ2を分け合っている(実際にはこれ以前、平成23事務年度から8年間)。
令和になり(新型コロナウイルス感染症の影響?)、長年続いた不動のワンツー体制は崩れ、令和3事務年度以降は上位10業種から姿を消したが、令和5事務年度に「ホステス、ホスト」がランクイン、令和6事務年度は「キャバクラ」が1位に返り咲いた。
その間、令和3事務年度~令和5事務年度に3年連続1位の座を獲得したのは「経営コンサルタント」。
過去7年で6回ランクインしているので狙われやすい業種だ。経営コンサルタント業を営む人は、より正確に、より慎重に申告を行いたい。
INTERNET Watchの読者に関係しそうな業種では「プログラマー」「システムエンジニア」「コンテンツ配信」がランクインしている。
③経費が多すぎる人、不審な点がある人
経費を増やすことで課税所得が減り、納税額を減らすことができる。
仕事に必要な支払いは、漏れなく経費に計上したいが、内容によって経費なのかプライベートな支出なのか曖昧なものがある。
こうした経費はグレーゾーンで“解釈の違い”がある。
行っていない出張の交通費を計上するなど、悪意を持って経費を水増しする人もいる。
旅費交通費、接待交際費などが、同業他社と比べ明らかに経費の多い人は税務調査の対象となりやすい。
④現金商売を行っている人
売上を少なく見せることで課税所得が減り、納税額を減らすことができる。
法人取引は、入出金の銀行口座の履歴が残るし、取引先の法人が税務調査を受けると売上の額は明白となるため「少なく見せる」ことはできない。
一方、個人相手の現金商売は、売上を少なく見せることが容易だ。
キッチンカーなどで100個売れたお弁当の数を80個と記録すれば、売上は2割減ることとなる。
イベント会場で“行列のできる人気店”が、客数が多い割に売上が少ないと税務調査のターゲットとなるかもしれない。
⑤新分野のビジネスを行っている人
暗号資産(仮想通貨)などで“億り人”と呼ばれる億単位の資産を築く投資家は、新分野として調査の対象となりやすい。
暗号資産(仮想通貨)等取引の状況を見ると、対前年比で調査件数114.6%、申告漏れ所得金額123.8%、追徴税額131.4%となっている。
⑥売上がギリギリ1000万円弱の人
売上が1000万円を超えると、2年後に消費税の課税事業者となる。
従来は売上1000万円以下をキープすれば消費税の免税事業者のまま、フリーランスであれば50万円ほどの消費税の納税を回避できた。確定申告の際に、うっかり売上が1000万円を超えたとしよう。
例えば売上が1008万円となった年に、12月分の売上から10万円を1月分の売上にずらすと、その年の売上は998万円となり、2年後は消費税の免税事業者にとどまることができる。
こうした不正を思いつくのは個人事業主も税務署員も同じ。
取引先とのやり取りやお金の動きを確認すればすぐにバレる。
よって売上がギリギリ1000万円弱の免税事業者の人は税務調査の対象となりやすい。
太陽会計税理士法人
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