【Ⅲ.高知研修ツアー2日目】平成30年度「文化財保存修復を目指す人のための実践コース」 | NPO JCPのブログ

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人類共通の遺産を護り、育み、次世代に伝えていくために組織されたNPO法人 文化財保存支援機構の活動をお伝えするブログです。

高知研修ツアー2日目です。

 

午前は、三和製紙株式会社に訪問です。社員の皆様がお出迎えくださいました。日本一の清流である仁淀川に面しており、清流の水を使用して紙を生産しています。

 

 

映像で「紙のできるまで」をご説明いただいた後、埃や髪の毛が入らないよう身支度を整え、いざ工場の内部へ。レーヨン、パルプ、バインダーなどの原料を配合槽で分散します。8トンの水を用いるそうです!ネリを加えた原料のなかにはすでに、装飾の金箔や長繊維の原料を混ぜ込んであり、出来上がった風合いのある紙製品は、数々の製品パッケージに使用されています。

 

製品のサンプルがずらっと並んでおり、社長の森澤正博様に質問し、説明を受けている様子

 

機能紙「サンモア」は、三和製紙さんの“三(サン)”に発展の意味を込めて“more(モア=もっと)”を組み合わせた製品名です。文化財修復でも活用されるようになったことを社員の皆様も喜んでいるとお話を伺いました。

 

最後に楮畑も拝見しました。広く圧巻です!突然の楮畑訪問にもご対応いただき感謝申し上げます。

たくさんのお話とお土産まで頂戴しました。ありがとうございました!

 

 

 

午後は、高知県立紙産業技術センターにて、前所長の関正純先生による「機能紙について」の講義です。

 

今では文化財修復分野でよく使用されるようになった“機能紙”ですが、なぜ機能紙と呼ばれ、どのように利用されているのか。一日目の施設見学では文化財修理の現場で使用される機能紙の原料となるレーヨン繊維やポリエステル繊維を拝見しました。日本における文化財修復では、欠損部を補う補紙は本紙と同等品や類似品を用い、裏打紙などの本紙強化用の紙は補修紙、不織布で本紙に一時的に添わせるなど多目的に補助紙として用いられるものが機能紙です(機能≒性能The performance → 機能紙High performance paper)。

関先生の今までの研究を資料集として、国外の修復研究所について画像とともにたくさん紹介していただきました。また、機能紙の性質もメーカーによって様々だそうです。用途にあったものを選び、活用して行きたいです。

 

関正純先生(向左)

お隣の江渕栄貫先生(向右、選定保存技術「表具用手漉和紙(補修紙)製作」保持者、高知県立紙産業技術センター非常勤職員)は先日、文化財保護の功労者として旭日双光章を受賞されています。

 

関先生は、6月に高知市文化プラザかるぽーとで行われた文化財保存修復学会において特別講演をされており、スタッフも拝聴しました。今年は高知へ2度のお伺い。熱いです!

 

 

 

バスで移動し、鹿敷製紙株式会社へ。初日の懇親会にもおいでくださいました社長の濵田博正様にお話を伺いながら工場内を見学させていただきました。

 

手漉きと機械抄きの工場があり、最初に手漉き工場を拝見。今年度は当セミナーにて機能紙や工業紙の抄紙機はいくつか見学してきましたが、“和紙”として漉いている抄紙機は初めてです。内部では原料のちりとりを手作業で行っていました。多くの作業は手作業です。とってもゆっくり動いている抄紙機を見て、必ずしも「機械抄き=速い大量生産」ではなく、ニーズに応じた形態の和紙を製作されていることがよくわかりました。

 

見学の様子(向右は濵田博正様)

 

二階のショールームにて、ひと休憩しつつ、参加者さんは和紙や作品に興味津々です。

 

 

盛りだくさんの2日目でした。

ご協力いただきました関係の皆様、ありがとうございました。