正真正銘、本物の山下和仁でした。
感動とか感激を通り越して言葉に表せません。
高々508席で音響も良いとは言えないホールに、世界の山下和仁がやって来たなんて、未だに信じられませんが、本物の山下和仁でした。
音楽性はコンテンポラリーに傾倒し、山下和仁の代名詞ともなっている『展覧会の絵』は、かなり以前に封印してしまったと聞いていましたし、最近は超絶技巧を駆使する事は少なくなったと聞いていたので、往年の山下和仁を目当てに来られた聴衆には不満が残ったかもしれませんが、キャプテン・アメリカからすれば、充分に、この世のモノとは思えない山下和仁のギターワールドに驚嘆しっ放しの2時間半でした。
音色が完全に一本のギターで出せる限界を超えていました。
以前、山下和仁とジョイントしていたJ.ゴールウェイ(Fluto)が山下和仁の「新世界より」ギター独奏を聴いて、ベルリンフィルよりも素晴らしいと絶賛した逸話は有名ですが、音の厚みやきらびやかさ。膨らみ。色気。表情。どれを取ってもギターという楽器の限界を完全に超えています。最初はギターシンセを使っているのか?と疑ったのですがステージには山下和仁と多分1990年製のホセ・ラミレスのみ。このホセ・ラミレスのサステインが凄まじく、サステイナー付けたかフィードバックさせてるのかと疑う程。高音から低音まで鳴るなんてものではなく、全てが世界一級品。
ネット上では山下和仁を『弾ききれていないヘタクソ』等と言う人が結構いますが、実際に生で聴いた事が有るんでしょうか?
確かにミスは有りました。しかし、それを言えばイエペスだってセゴビアだってミスはしますよ。そういう表面的なテクではなくて、その人の指から生み出される音を聴けば、山下和仁は世界最高のギタリストであると間違いなく言えます。
もちろん6弦ギターはどれだけ頑張っても6声しか出せませんが、魔術的フィンガーピッキングによって、音の膨らみと艶やかさに魔法が掛かっていました。
自慢になりますが、フィンガーピッキングに関してはキャプテン・アメリカは非常に自信が有ります。キャプテン・アメリカのフィンガーピッキングを見るとギターを弾く殆どの人が焦ります。
しかし、山下和仁のフィンガーピッキングはそんなキャプテン・アメリカが見ても悶絶モノでした。
て言うか変態的です。
一見するとライトハンドしているかのように、サウンドホールを越えて右手のポジがダイナミックに動くのですが、タッピングは一切していません。もちろん右手のポジが音色に大きな影響を及ぼすのはギター奏法の常識ですが、大胆過ぎる動き以上に音の変色が目まぐるしく、材からギターを理解し尽くして表現しているのでしょう。
そして上声部はimaで弾くのが当たり前ですが、運指によっては1弦をaでアポヤンドし、aはそのまま2弦に置いたままで1弦をmでアルアイレして2・3弦をaiで弾く。物凄く速く弾いているのに、ハンマリングもプリングも殆どせずに殆ど全てピッキング。
勿論その間もpは休む事なくベース音を紡ぎ出しています。しかし時々pが上声部まで出張してきて、そんな時には1弦をハーモニクスして、根音から離して音に広がりをもたせていたのです。
最初は倍音がどこから来ているのか判らなかったのですが超高速フィンガリングの間にハーモニクスを入れていたので本気でちびりそうになりました。
メタル系のギタリストのようにフィンガリングが指盤の上をダイナミクスに移動する事は多くはないのですが、それでも音の拡がりがオケ並なのは、この変態的技巧と理解し尽したホセ・ラミレスとの間に共鳴のような効果が生まれ音成分が膨らむのでしょう。異常な迄にチューニングに神経質な所(演奏中にチューニングをする)も、その辺りに影響しているのかもしれません。
とにかく生音の拡がりは生ギター一本なのにギターオーケストレーションに匹敵していました。こんな表現が出来るのは世界でも山下和仁ただ一人。確かに木村大の方が弾ききってる感はありますけど、音が陳腐に聞こえてしまうのですから、そのクラシックフィーリングの表現力は間違いなく世界最高でした。
こんな田舎に山下和仁が来る事は二度と無いでしょうから、本当に貴重な経験をさせてもらいました。
2,500円で。www
