少し前まで(英語に関して)日本人は会話が苦手、とか、読めるけど話せないといった指摘が多く、その原因は日本の学校教育が文法や読解が中心で会話を軽視してきたからである。という批判をよく目にした。確かに私の世代及びもう少し若い世代まではリスニングの練習をしている学校は例外的で、大学入試においてもリスニングの試験はなかった。入社するまでまともなリスニングの練習をしてなかったので、会社に入って初めてTOEICの試験を受けたときの成績は悲惨だった。自分のリスニング力が低いのは文法重視教育のせいではないかと思い、文法を好きになれなかった。

 40代になって、フランス語の勉強を始めた。仕事上の必要からではない。単にやってみたいと思っただけである。旅行でちょっと役立つという程度が目標だった。簡単な会話ができれば良いのだから、文法など勉強せず、とにかく会話文(フレーズ)を覚えよう。そう思って入門者向け会話集など購入してCDを聞いた。やってみると、簡単な文章でも覚えられない。そして、やたらと文法事項が気になる。この動詞はどうしてこの形をしているのか?とか、この動詞の主語や目的語は?といった文の構造が気になってしまう。フランス語は時制が複雑だし、動詞が人称と時制によって変化するので、変化のパターンが多い。単語を辞書で調べようと思っても、動詞の原形(不定詞)がわからないと調べられない。結局、フレーズを丸ごと覚えるという方法を断念し、フランス語の文法書を購入して読む事にした。幼児は文法を習わなくても言葉をたくさん聞いているうちに覚えてしまう。それと同じように何度もフレーズを聞いて覚えようとしたが、私は幼児のような驚異的な記憶力を持っていなかった。そして、「何も考えずに丸ごと覚える」ことはできなかった。大人だから色々と考えてしまう。理由が気になるのだ。

 フランス語は結局身につかなかった。中途半端でやめてしまった。だが、この時の経験から、外国語の学習において文法は重要だと思った。少なくとも私には必要だ。文法を学習することでその言語の特徴がわかるし、文章の構造を理解できる。それが理解できて初めて文章を暗記することができる。不思議な事に、(単語を覚えて)文の構造がわかっていれば、結構暗記できるのだ。昨年スペイン語を勉強すると決めた時、迷わず最初に文法書を購入した。