165. Contemporary | BACKUP 2024

BACKUP 2024

備忘録

 

 

 

ジャイアントと呼ばれ知らぬ者とてない、そして今では伝説となったジャズメン達がいた。
トランペットのマイルス、ピアノのエバンス、ドラムのブレーキー、テナーのコルトレーン、アルトのパーカー等々きりがない。エバンスよりパウエルでしょうとか、コルトレーンじゃなくてそこはロリンズなどの話になっても困る。
彼らと同時代を生きジャズをベースで支えたレイ・ブラウンも同様に、ジャイアントの殿堂入りは間違いないとしても、チャーリー・ミンガス、ポール・チェンバース、レッド・ミッチェル、ロン・カーター等々思いつくままにベースのビッグネームを挙げた時、彼が何故か少し筆頭感に欠ける事に気付く。それは恐らくレイ・ブラウンが史上屈指の名手でありながら、この楽器の役割を比較的早期に自ら限定してしまい、最後までその枠を出ることがなかったからだ。しかしレイ・ブラウン無かりせば、後年のクリスチャン・マクブライドやブライアン・ブロンバーグ出現も無かった可能性がある。彼はイノベーターでこそなかったが、モダンジャズベーシストの偉大な始祖であったと私は思っている。

本作はレイ・ブラウンが1977年コンテンポラリーに残したリーダー盤、「Something for Lester」である。
ジャズでレスターへのトリビュートと言われると、レスター・ヤングを連想するのがむしろ普通だが、ここでのレスターは本作収録後急死したコンテンポラリーのオーナープロデューサー「レスター・ケーニッヒ」のことだ。映画「ローマの休日」のプロデュースに関わった後、「赤狩り」でハリウッドを追放されたレスター・ケーニッヒが西海岸に設立したのがコンテンポラリーレコードである。

東海岸のブルーノートと何もかもが好対照だ。
現在ジャズの三大レーベルと言われるのが東海岸由来の「ブルーノート」「リバーサイド」「プレステッジ」であり、コンテンポラリーは入れてもらえない。
ウエストコーストジャズと呼ばれ、半ば別ジャンル扱いされがちであり、三大レーベルが横綱・二大関だとすれば、コンテンポラリーには小結クラスの軽量感が漂う。これは不当である。重要盤をカタログに多数持つコンテンポラリーは、とにかく音が良い。
ブルーノートを録ったルディ・ヴァン・ゲルダー(RVG)の音が悪いとは無論言わないが、コンテンポラリーの録音技師ロイ・デュナンの音はオーディオ的にRVGサウンドを凌駕するものだ。
RVGはピアノの録り方が下手だとよく言われた。私はRVGが下手だとは思わないけれど、誇張されたピアノであるのは事実だと思う。本作のシダー・ウォルトンを聴けばわかる通り、ロイ・デュナンが録ったピアノの方が遥かに自然に、そして美しく聴こえる。
ベースもそうだ。RVGのベースは良く言えば太く、しかし上手く再生出来なければ少しコモッたベースになる。一方本作のレイ・ブラウンはもっと近代的なベース音であり、且つ普通の装置であっても比較的手軽にいい音で鳴る。
これは学生時代の夏休みに土方、さらに冬休みには沖仲仕の短期集中バイトで必死に金を貯め買った、しかしながら非常にプアなオーディオで聴いていた頃の記憶だ。
アンプがデンオンのPMA500Z、スピーカーはダイヤトーンDS251MKⅡであった。自分の音と店の音を半日違いで比較できた。確かだと思う。確かにコンテンポラリーは音がいい。そして鳴らしやすく録られている。