『髪結い伊三次捕物余話 あの子、捜して』 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

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人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

昨夜はM君と羊食いつつ飲んだ後二時間弱歩いて帰り、今朝は6時半に右肩の痛みで起きた。

朝食は新潟産こしひかり炊き、くめ納豆と紀州産梅干で二膳食うた。デザートはクリームチーズヨーグルト。

「趙氏孤児」第22話をギャオで見た。

森永理美→野口茜→二村希一とこれ迄ライブで聴いとるピア二ストをユーチューブで聴いた。

昼食に上野「デリー」へ行き、注文したのはデリーカレー。1080円に値上がりしとった。

満足して店を出て、スーパーに寄って食料買うて帰宅。

風呂に小一時間浸り考えとった。岸田文雄政府が毎年全国民に歯科検診を義務付けさせようとしとる。余計なお世話やでえ。七月の参院議員選挙で歯科医の票ゴッソリ固める為に他ならぬ。

雷雨となった。気圧の乱れのせいか片頭痛がし、暫く横になり休んだがな。

「聴雪楼」第17話をギャオで見た。

牛乳飲みながら吉田慶子→鶴丸はるか→小泉ニロと歌聴いた。

夕食はメキシコ産豚肉、茨城産韮、神奈川産キャベツを炒め、ご飯と食うた。デザートはグレープフルーツジュース入れたヨーグルト。

ラジオ「テイスト・オブ・ジャズ」を聴いた。

 

 

宇江佐真理の連作短編小説シリーズ髪結い伊三次捕物余話「名もなき日々を」からニ話目の『あの子、捜して』を読んだ。

サイさんとオーさんはワイン仲間や。ふたりはかなり性格異なるんやが、ふたり共小説読むなら宇江佐真理をと薦めるんですわ。揃って髪結い伊三次捕物余話シリーズを読んでみてと云うさかい読んでまんねん。

『あの子、捜して』は、伊三次の息子伊与太の人別(戸籍)が芝から日本橋田所町に移されたところから始まる。絵師になる修行しとる伊与太の芝の師匠が亡くなり、歌川国直の許に身を寄せたたからや。そこでの伊予太の仕事は国直の背景を描く事が主や。

[人別帳は三冊作られ、町年寄を通じて南北両奉行所に一冊ずつ提出し、残りの一冊は名主の手許に置かれる。人別帳には、本人、家族、同居人、奉公人まで細かく記載される。

名主はその後の人の移動も詳しく書きつけ、奉行所からの問い合わせにも、すぐに応えられるように準備していた。住人の移動には人別送りの証書が作られる。居所、名前、年齢を書き、元の人別帳から削除した後、転居先の名主へ送られる。詳細に人別改めをするのは、無宿者をなくす目的が大である。無宿者は犯罪に繋がる場合が多いせいだ。火付盗賊改め役の長谷川平蔵が人足寄せ場の設置を幕府へ強く勧めたのも、かつては江戸市中に無宿者が多かったからだ。]

人別改めの時期の卯月、十年以上も経ってから行方知れずになっとるのが分かったんが平吉ですわ。

廻り髪結いの伊三次が八丁堀の御用聞きの親分松助の詰める八丁堀の自身番に寄ったところ、人別改めの最中にある松助から平吉の足取りを探ってくれと頼まれますねん。平吉の行方を追う伊三次。けど、十年以上も経とるから簡単には行かへん。

そもそもは平吉の実父鉄次の浮気から夫婦別れした事に始まる。実母おさえが赤ん坊平吉を連れて実家にもどったものの、その後平吉の本所に居る祖父母が跡継ぎにすると引き取って行ったんや。ところが、そのおかつ婆は赤ん坊の世話が手に余り彼女の母おしかに預けたんや。預けられたひい婆もええ迷惑や。しかし、まるで物の遣り取りですわな。大人の都合で振り回された平吉が可哀想や。

平吉は子供の居らん夫婦の養子に出される。けど、その後平吉の養父母は火事で命を落としとったんや。平吉も運があらへんわ。またも天涯孤独の身の上に。

平吉、暫くは鳶職の頭の家で面倒みてもらっとった。そして彼が8歳程になった時、横山町の質屋「大黒屋」に奉公に出たんや。

伊三次が「大黒屋」訪れると、平吉は大人しく真面目に働いとった。

[「松さん、平吉が見つかりましたぜ」

そう言うと、松助は驚きで眼をみはった。平吉の頭のてっぺんから爪先まで、まじまじと眺め、しばらく言葉が出なかった。大家の善右衛門は「よく無事でいてくれたねえ」と眼を赤くして喜んでくれた。書役も名主の手代も、よかった、よかったと笑顔で言った。平吉は知らない人間が自分を心配していたことに居心地悪そうな表情だった。

「皆んな、お前ェの無事を祈っていたんだよ。何しろ、お前ェは行方知れずの扱いになつていたからよ」

伊三次は噛んで含めるように平吉に言った。

「それでお客様はわたしのことを捜していたのですか」

「ああ、そうだとも。まだ赤ん坊だったお前ェが生きているのか死んでいるのか、さっぱりわからなかったからな」

「色々、お世話になりました」

平吉は改まった顔で自身番にいた者に頭を下げた。

「そいじゃ、おっ母さんの所へ行くとするか。きっと、おさえさんは驚くぜ」

松助は機嫌のよい声で促した。

伊三次は、おさえと平吉が抱き合って涙にくれる図を想像していたが、実際にはそうならなかった。いや、おまさは感極まって平吉に縋りついたが、平吉はどうしてよいかわからず、傍にいた伊三次の顔色を窺うばかりだった。平吉は戸惑っている様子だった。無理もない。十年以上も平吉は実の母親のことなど知らずにいたのだから。]

このシリーズ、華のお江戸の地理を知っとるとより楽しめる。不案内の方は古地図を求め拡げながら読むとええ。ワテはたまに散策するところがほとんどやから歩いたつもりで読んどるが、ちょっち腑に落ちぬところも散見する。江戸の人々は現代のワテ等が驚く程の健脚やさかい、例えば八丁堀から木場、その位の距離を歩いただけで結構歩いたとは決して思わんやろと。ちなみにワテは昨日、昼間にM君との待ち合わせ時間を調節する為に地下鉄茅場町駅で降りて木場公園迄歩いたんやが、ちょっち蒸し暑かったものの疲れは感じなかった。

「名もなき日々を」から二篇読んだが、エグみの無い小説や。オーさんは、宇江佐真理の小説は和三盆糖でつくられた和菓子なんやと云うが、成る程そうかも。