北温泉「北温泉旅館」17年秋 後編 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

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人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

23時からの「ジャズトゥナイト」を最後迄聴いとったんで、今朝目覚めたの8時半で、朝食は北海道産ななつぼし米でご飯炊き、くめ納豆、紀州産梅干しで二膳。デザートはニュージーランド産キウイ2個。

カーリン・クローグ&アーチー・シェップのアルバム「ハイ・フライを」レコードで繰り返し聴いた。

風呂に小一時間浸り、アメリカンフットボール好きなワテは考えとった。雲隠れしとった日本大学の常務理事で部の責任者内田正人がやっと姿現し監督の辞意だけ語ったが、余りにも謝罪が遅いし、しかも説明曖昧で、腑に落ちん。あの悪質タックルは、受けた者のその後の人生左右する程の結果さえもたらすもんやのに。

牛乳飲みながら「風中の縁」第12話をギャオで見た。

昼食は千束「ソージュ」に行き、肉ランチの若鶏腿肉のソテー きのこソース注文した。スープ、サラダ、ライス、コーヒーが付き1000円也。きのこソースが、今は無き「ビストロ アッシュ」の椎茸スープを思い起こさせた。無くなってみると、もっと行けばよかったと思うもんやな。

満足して店を出て、神輿を見て廻り、八百屋で野菜買うてから帰宅。

下町は祭に沸く時節になったがな。今日見たのは三社祭に小野篁祀った小野照﨑神社の大祭やがな。来週は南千住の石濱神社の大祭がある。

筋トレ30分した。

友人達にメール送付した。

ラジオで大相撲中継聞いた。

夕食はカナダ産豚肉、茨城産ピーマン、徳島産人参、新潟産ぶなしめじを炒め、ご飯食うた。デザートは徳島あんどーなつ。

明日の食料確保の為に近くのスーパーへ行って来て、ルネ・ラルーちゅう人が脚本監督の「ファンタスティック・プラネット」をギャオで見た。

 

 

食事処を一瞥すると、大きな露天風呂で遊んどった外人グループや家族連れやカップル達が談笑しつつ箸動かし、思うたより多くの客が居った。黙々と食うとる一人客も幾人か居った。他に自炊客はどの位居るんやろか?

「辛抱たまらん。もう飲んでいい?」と手にビール瓶持ってクネクネしよるM夫ちゃんが、首左右に動かしてワテ等の顔を窺うた。

幹事長が云うた。「待ち切れない人が居るから、乾杯としよう」

ワテは提案した。「発声の言葉は、九千歳にしまひょ」

「何それ?」とITちゃん。

「明の時代末の賄賂大好きな宦官で明の滅亡を加速させた魏忠賢が民衆に唱和させた言葉ですわ。万歳から千を遠慮して九千歳」

「今、S吉の宦官の講釈を聞いとる暇はない。言葉なんて何でもいいから、早く乾杯にしてくれ~」と焦れるM夫ちゃん。

「まるでお預けをくらって待ち切れぬ躾悪い犬だな」とNっぺ。

「何を失敬な、鼻垂らしめ」と応ずるM夫ちゃん。

幹事長「ハイ、ハイ。それじゃシンプルに乾杯で。準備はいいかな」云うてちょっち間を取った。

「整っとる」とM夫ちゃん。

「あたしも」とITちゃん。

幹事長「皆の健康と幸せを祈念して乾杯!」

乾杯と唱和して咽喉湿らせてすぐ、H世っちが料理を頬張り始めた。ワテも「ご飯頼んます」と給仕の人に呼び掛け、負けじと食い出したわ。

「風邪治すのに熱燗飲まなくちゃ」とNっぺは給仕の人を呼び止め注文した。

M夫ちゃんは手酌でビール飲んどって、あっという間に一瓶空にしたがな。

料理の味は期待せぬ方がええ。品数はそこそこあるが、ご飯以外は熱くてはならぬもんがどれも冷めとった。白飯は旨かった。

H世っちは無言で箸を活発に動かし口に運び食いまくっとった。

第一次&第二次酒盛りで乾き物や菓子類仰山食うたせいか、ワテは競っとったH世っち程ご飯食えんかった。

「漬物以外は残さず食うでえ。茶で流し込んでも食うでえ」

「無理して食うと牛になるぞ。なったらステーキにして食ってやるぞ」とM夫ちゃん。

「冗談よし子ちゃん」

「腹も身の内だよ、Sちゃん」とブッチョA。「そろそろ部屋に戻って食休みするからね」

結局、ワテは珍しくチキンカツ残してしもた。盛岡でのわんこそば食い以来、大食漢H世っちには惨敗続きのワテ、満腹で腹さすりながら部屋に戻ったわ。

再び全員幹事部屋に集まり第三次酒盛り始めたんやが、文芸部員だった者達らしく格調高い話になったがな、珍しく。

そないなったんは、ブッチョAが大学時代の国文学専攻の友人達とゆいの森あらかわに行った話からなんですわ。彼等の目当ては、そこに入っとる吉村昭記念文学館の方やったんやて。ブッチョA、吉村昭の事を熱く語っとったわ。

「日暮里生まれの吉村昭か。青年期迄を日暮里で過ごしとったんですわ」と、ゆいの森あらかわで仕入れた知識を披露したら、ブッチョA以外には感心されたんで、今迄著作一冊も読んどらんのに調子に乗って、「代表作が「戦艦大和」の作者や」云うたら、M夫ちゃんに「S吉、吉村昭の小説は大和ではなくて、「戦艦武蔵」なの」と間違い指摘されてしもた。それ読んで彼は涙チョチョ切れたそうな。

好きな我が国の作家の話になると、H世っちは山本周五郎がええと云う。他の皆も周五郎はええと云う。

ワテは藤沢周平の方がええなあ。山本周五郎は「樅ノ木は残った」と短編幾つか読んどるが何か物足りんのや。云うてみれば正方形な小説な感じするんですわ。と、その後は藤沢周平の素晴らしさ熱を込めて語って、M夫ちゃんに「吉村昭の他やと、M夫ちゃんは誰が好みなん?」と問うたんやが、静かや思うたら、表情和ませ黙々とビール飲んどった。

「何か云ったか?」と彼は口に運ぼうとするコップを止めた。

そうこうする内に時間は流れて行き、文芸談議が一段落したら21時を回り、もうNっぺはユラユラ舟を漕ぎ閉じかかった眼をしとった。

「眠そうやな。年寄りは早寝早起きと相場が決まっとるからな」と宵っ張りの彼に皮肉云うた。

「違う、このところ寝不足なだけだ。仕事に追われてるんだ」とNっぺ。

「ちょっと早いけど片付けようか」と幹事長。

「眠りを渇望しとるようだから、解放してやってもいいぞ」と、酔いが見てとれるM夫ちゃん。

「酒が底ついたからやろ」

「見抜かれておったか」と、笑うM夫ちゃん。

「じゃ、お開きにして寝ようか」あくび交じりでNっぺが云うたところで、H世っちとITちゃんのペアが自分達の部屋へ行った。

「寝る前にもう一風呂浴びに行って来る。他に行く人いるかな?」とブッチョAが問うのに、M夫ちゃん、Nっぺも「一人じゃ心細かろうから付いて行ってやる」「どこ迄もお供します」と、共に行くと云いますねん。

ワテは遠慮し、「館内は暗いし迷路のようやさかい迷い子にならんよう気付けてえな」と手を振って見送ると、M夫ちゃん「階段や廊下を間違って行くとガダルカナル島へ着いてしまうかもしらん。その時は万難を排し救援に来てくれ」と言い残し去った。

一人部屋に残り点けっぱなしのテレビに向こうて見とったら、三人が30分程で揃って戻った。

「どこの風呂に入ったんや?」と彼等に尋ねたら、「天狗の湯に行ったら、外人の女の人が入ってた」とブッチョA。

「お前様達、天狗に間違われなかったか?」

「あんな立派な赤い鼻は持っとらん」と、酔い醒めた様子のM夫ちゃん。

寝入った後寒くないようにと皆で炬燵に脚入れて寝たんやけれど、裏目に出た。アルコールと炬燵の熱さで眠りは浅く目が覚めてしもた。夜は深々と更けとったさかい、膀胱にたまったもんトイレですっきりさせてから炬燵に脚入れず寝たわ。そうしたんはワテだけやなかったがな。Nっぺは目を覚まし、M夫ちゃんがうなされ寝返り繰り返しとった。

明くる朝、髪に寝癖ついたM夫ちゃんと河原の湯ちゅう露天風呂へ連れ立って行った。そこは以前来た時には無かった。

入り口前には禁煙所がありましたわ。ちゅう事は、館内禁煙になったんかも。

名前の通り川に面しとって、傍にちょっとした砂防ダムが見える露天風呂や。

小父さん二人が入りに来たさかいそこはそそくさと出て、古色蒼然な外湯へ入りに行ったが、やはり湯は熱めやったんでうめてから浸った。

暫く誰も来んかったんでゆっくり浸ったわ。

「Sちゃん、温泉の力で腰はよくなったか?」

「全然変わらん。ここの単純泉では効かぬらしい。でも腹が空くわな」

「確かにお腹空いた。胃腸の働き活発にする温泉なのかもしれない。上がって、朝飯に行こうや」

食事処へ寄ってみたものの、まだ用意の途中やったんで仕方なく部屋へと。

そこには、ワテ等が出る時には眠っとったブッチョAとNっぺが居らんかった。

タオル手にしたふたりが風呂から戻って来たの、タイミングよく朝食の用意整った旨の電話が来た時や。

「貴様等の腹時計は大したもんじゃ」と、感心するM夫ちゃん。

朝食の内容は記憶に残らんもんやった。

幹事長から幹事部屋への招集が掛かって二日目の詳細な行動予定の説明があり、会計幹事が宿代等の支払い済ませ、宿を撤退となった。

「腰痛はしっかり治しとくんだぞ」出発時、M夫ちゃんがそう云うて湿布薬を手渡してくれた。

「おおきに、会計隊長殿。不惜身命の覚悟を持って腰治しまっせ」

「Sちゃん、治ったら山に一緒に行こうな。楽しみにしとるぞ」

「会計隊長殿、足手まといになってはあかんので遠慮させて頂きます」

「貴様、やはり精神力が足りん」

帰宅後暫く、ワテの腰は良くもならず悪くもならずやった。

ところが、Nっぺにうつされたんやろ、翌日から二日と半日風邪の症状で寝込んでもうた。それM夫ちゃんに知られたら、精神力が足りないと一蹴されたやろ。