『鬼平犯科帳 明神の次郎吉』 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

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人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

腰痛22目の今朝は7時半に起きた。

風呂に小一時間浸り、認可され税金投入が決まった加計学園獣医学校。韓国人留学生が卒業したら我が国で疫学医として務めるの、与党でも野党でもええから国会でしっかり確認して欲しいわ、と考えとった。政治屋は税金の使い道をごっつ安易に考えとるんやから、ワテ等有権者がそうさせぬよう声強めなならん。

朝食に北海道産ゆめぴりか米でご飯炊き、くめ納豆、紀州産梅干で二膳。デザートは長崎産早生みかん3個。

H世っちに葉書認めた。

カーメン・マクレエのアルバム「ザ・サウンド・オブ・サイレンス」をCDで聴いた。

散歩に上野御徒町出掛けた。昼食は「山家」で、並び待つ事15分でロースかつツ定食を食えた。満足の750円也。

スーパーに寄り食料買うて帰宅。

「おとなの週末」10月号見た後、ラジオで大相撲中継聞いた。今日もまた負けた稀勢の里は休場やろか?

筋トレ30分し、牛乳飲んだ。

夕食は岩手産鶏肉、北海道産人参と玉ねぎ、長野産ぶなしめじを炒め、ご飯と食うた。デザートはグレープフルーツジュース入れたヨーグルト。

佐藤允彦→鶴野美香→西山瞳→後藤浩二→福井ともみ→熊谷泰昌とピアニストをユーチューブで聴いた。

 

 

好きな「鬼平犯科帳」の中でもワテの好み上位5本に入る作品の『鬼平犯科帳 明神の次郎吉』は、己の稼業に引け目のある男の話なんですわ。

明神の次郎吉ちゅう盗人やが、父子二代に亘って盗みの掟三ヵ条守り抜く盗賊櫛山の武兵衛に随って盗み稼業しとった。

裏稼業の次郎吉ではあるが、悪事をして食うとるんやさかい、盗みしとらん時にはせめて善い行いしたいと、罪滅ぼしをしながら罪を重ねて生きとったんですわ。差引勘定で善行重ねれば畳の上で死ねると信じとる次郎吉や。

人間ちゅうのは面白いもんやね。猿共とは異なる動物や。

旅支度した小太りで狸のような面した30男の次郎吉は、櫛山の武兵衛にいよいよ盗みがあると呼び出されて、骨休めしとった故郷下諏訪から江戸へ向かう途中やった。

闇の中で苦し気なうめき声聞いた次郎吉は、近付いて行った。他人の難儀は見過ごせぬ男やからな。

次郎吉は、行き倒れた老いさらばえた坊主宗円を助け起こしたが、心臓発作らしい。

そして、僧の死に際、友に手渡してくれちゅう頼まれ事聞き入れますんや。それが高く売れそな短刀であってもや。亡くなった僧の埋葬済ませた後、わざわざ押上村の春慶寺の離れに住む岸井左馬之助を訪ねてその遺品届けますんや。

次郎吉、貧乏な剣術使いの左馬之助が火付け盗賊改長官の親友とは知る由もない。

左馬之助は、旧知の宗円の死を看取り遺体の始末し、名工藤四郎吉光の短刀届けてくれたのをえろう感激し、亀五郎と偽名使う次郎吉を疲れているだろうと己の単衣を着せてござ敷いた荷車に乗せて我が手で曳いて、七百石継ぐはずの武士やった道楽坊主宗円と毎晩のように出掛けて酒酌み交わしとった本所二ツ目「五鉄」へ連れて行きおもてなししますんや。そうせんと亡くなった宗円にもすまないと思う左馬之助やった。

今夜の内に櫛山一味の盗人宿へ行くつもりやったさかい最初は嫌がっとった次郎吉も、そんな左馬之助のひたむきな真心に心打たれますんや。

「五鉄」の主人三次郎も、よく知る宗円やから驚きもし、次郎吉の親切を深く喜び、鯉料理で一番旨い塩焼きを振る舞い、取って置きの酒を出した。

ええ心持ちになって次郎吉は、軍鶏の臓物鍋の熱いのふうふう云いながら垂れる汗拭いつつ食うて、また左馬之助の曳く荷車に乗せられて春慶寺に帰るんや。

ところが、明神の次郎吉は「五鉄」に寄宿しとる密偵おまさに顔見られとった。

次郎吉と一緒に盗みした事あるんで知っとるおまさは、見逃したい気持ちもあって本所四ツ目の裏長屋に独り住まいする老密偵彦十に相談しに行くんや。

櫛山の武兵衛一味の腕っこきの次郎吉が江戸に来て居るちゅう事は、武兵衛一味が盗みをしよるに違いない。

翌日、おまさと彦十は、まずは次郎吉の行方を突き止めておかなならんと、翌日の夜明け前に春慶寺へ出掛け、次郎吉を尾行しましたんや。

その午後、上機嫌の左馬之助は次郎吉の善行を平蔵に話したくて話したくて役宅へ現れたんや。

左馬之助が昨日の経緯を熱心に語るのを、平蔵は身を入れて聞いていたんやけど、実は前以って彦十から明神の次郎吉の一件の報告を受けとったんや。

夕暮れになって、次郎吉の見張りしとったおまさが平蔵に報告へ来たが、次郎吉を温かい処分に止めといて欲しい様子がはっきり見てとれた。

左馬之助の気持ち、おまさや彦十の気持ちを察した平蔵は、与力同心は一人も動員せぬ事として、おまさや彦十は勿論伊三次達密偵を総動員して事に当たったんや。

おまさ達密偵の働きで盗賊櫛山の武兵衛一味の動きを明らかにした。押し込む四谷の薬種問屋に奉公人として入り込んどった引き込み役が内から引き込んだその時、平蔵が駈け寄って桜のこん棒ふるって忽ち三名叩き倒した。組み付いて来た次郎吉もな。

「盗賊改方、長谷川平蔵の出役である。一同、神妙に御縄をうけよ」と云うと、武兵衛は崩れるようにうずくまり「恐れ入りましてございます」と平伏してしもた。諦めよく配下一同も逃げようとせぬ。

この時、粂八等の案内で町奉行所の捕方十三名が近寄って来て、盗賊共に縄を掛けた。平蔵が二日前に南町奉行の池田筑後守に頼んであったんや。

そして、平蔵は南町奉行所の与力大山に櫛山一味を引き取らせ、大山の手柄にしといてくれと云いますねん。

それから10日を経た朝早く、平蔵の役宅へ寄った岸井左馬之助は、友人の墓を建てるべく信州へと向かうと云う。次郎吉が現われぬのを平蔵にこぼすんや。春慶寺に訪ねて来たら、居場所を確かめとくよう寺に頼んどいた云うんや。

平蔵は、その亀五郎に会うてみたいと応じまんねん。己が気絶させお縄にしとるのにな。

平蔵が呼ぶと、久栄は餞別の金を包んで傍へ来とった。やる事にそつがない。

物語はこう締め括られる。

[岸井左馬之助が、いかにも剣客らしい足どりで、庭づたいに去って行くのを見送った平蔵の両眼が、われ知らず、うるみかかって、

「左馬之助というやつは・・・・」

いいさして、つぎのことばが出なかった。

「あの・・・・」

「うむ?」

「その、次郎吉とやら申す男は、死罪になるのでございましょうか?」

「いや、櫛山一味の者は、みな死罪をまぬがれるであろうよ」

「まあ、それは・・・・」

「あれほどにいさぎよい盗賊どもも、めずらしい。おれからも池田筑後守様へ、よくよく申しあげておいた。島送りですむにちがいない。その中でも明神の次郎吉は、もっとも罪が軽くなるとおもう」

久栄の顔が、うれしげに笑みこぼれてゆくのを見て、

「人間とは、妙な生きものよ」

「はあ・・・・?」

「悪いことをしながら善いことをし、善いことをしながら悪事をはたらく。 こころをゆるし合う友をだまして、そのこころを傷つけまいとする。ふ、ふふ・・・・これ久栄。これでおれも蔭へまわっては、何をしているか知れたものではないぞ」

「お粥が、さめてしまいまする」

「うむ、うむ。今日も暑くなるらしい。一日、昼寝でもしてすごそうか・・・・」

朝の陽が庭へ射しこみ、蝉が鳴きはじめていた。]

広い世の中には明神の次郎吉の如き者も居る。

かと云えば、心を許し合う友を騙す友も居る。そう、この物語には騙される事が常に悪いとは限らぬちゅうのも描かれとんねん。

岸井左馬之助は、得難い友平蔵が居ってほんま良かったわ。

しかしながら、長谷川平蔵も左馬之助ちゅう友が居ってほんま良かったと思うとるに違いないでえ。