木賊温泉「井筒屋旅館」 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

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人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

昨日目覚めたら風邪の症状ぶり返しとって不調で外出せず一日炬燵男。大事とって早めに寝たさかい今朝目覚めたの6時半やったけど起きたのは7時ちょっち過ぎ。

朝食は秋田産あきたこまちでご飯炊き、くめ納豆、紀州産梅干で二膳。デザートは由布院温泉「蒸し舎」のシフォンケーキ。

カーリン・クローグ&アーチー・シェップのレコードアルバム「ハイ・フライ」を聴いてから、昨日せんかった掃除洗濯をTBSラジオ聞きながらして、筋トレ30分した。

昼食は裏浅草「うんすけ」へ行き、健康志向で一汁三菜ランチを頼んだが、風邪のせいやろ、味がよう分からんかった。そやから嫌いな漬物も難なく食えた。

女将から一昨夜何を食うたか問われ、答えられず風邪のせいにしてみた。けど、「とらまづ」に「てづくり七福神」に「菊の司 美雪」に「堀米」と飲んだもんは憶えとるのはなぜ・・・

スーパーに寄り洗剤買うて帰り着いたら疲れが出た。やはり風邪が治り切っとらんと思い、炬燵に潜り込んだら眠ってしもた。

夕食はブラジル産鶏肉、北海道産南瓜、茨城産小松菜、埼玉産里芋、新潟産舞茸をタジン鍋で蒸し、ご飯と食うた。デザートは「蒸し舎」のシフォンケーキ。

久し振りに阿川泰子をユーチューブで聴いたが、日曜日の夜よう見とった番組「おしゃれサーティーズ・サーティー」思い出したがな。ピアノは今は亡きコルゲンさんやったなあ。泰子姐さんは元気なんやろか?

スーパーへ明日食う為に半額になったローストチキンレッグとクリスマス・オードブル買うて来て、また阿川泰子をユーチューブで聴いた。

 

 

ある年の夏にT之君と南会津の豪雪地帯にある木賊温泉「井筒屋旅館」へ行った。

つげ義春が泊まった宿に夏休み泊まろうと思うて電話入れとったんやけど、彼のファンがこぞって予約入れとるのかワテ等の都合ええ日かには取れへんで、やっと三年目になり予約出来たんや。

ところが、宿泊日近くに宿から不幸があったとかで電話が掛かって来て、また訪れられへんかった。

そやから、四年目にして待望の訪問となったんで待ち切れぬ思いから彼の車で朝早く出発したんや。風の無い蒸し暑い日やった。

湯ノ花温泉から尾根一つ隔てた山間の鄙びた地に木賊集落はあった。

温泉は平安時代に発見されとるもんで、宿は清流沿いの崖にあった。日本秘湯を守る会の宿やが正しく秘湯ですわ。つげ義春がまだ泊まって居そうやった。

早速、荷物置いた後で散歩がてら有名な共同浴場へ出掛けた。勿論タオル持ってな。

坂下って粗末な湯小屋の風呂覗いてみると、湯船は二つに分かれとって、夏休み時期のせいもあり若人♂の先客6名居ったわ。{混浴やけど、こう♂が居っては女性は入り辛いやろ}と思いながら服脱ごうとしたら脱衣所はどこ?躊躇しとると、脱衣場と思しき所にスパッと脱ぎ捨てたT之君はもう半露天の岩風呂に入ってタオル頭にのっけとるやないか。

「いつもながら脱ぐの素早いなあ」

「Sちぃも早く来い、いい塩梅だぞ」

ところが、すっぽんぽんになった途端、一匹の虻が向かって来よったんや。咄嗟にタオルをプルンプルン振り回したら、当たった虻はT之君の顔かすめて落ちて湯に浮かんだ。

「何するんだよ~、人に迷惑掛からぬように叩き落せよ」と云うて、T之君は虻を摘まみ遠くに投げ捨てた。

「アブノーマルな事はせんようにしとるんやが、緊急事態やったんや」

「Sちぃは虻一匹に慌て過ぎ。男なら堂々としてろ」

「断っておくが、今日は油照りやから敵はまた来襲しまっせ」とまた駄洒落で応酬した。

「分かったから早く入れ、まだ混みそうだぞ」

ワテが浸ったすぐ後、軽装の若人が二人連れ立って来て、入ってからお喋りに夢中やった。

{これ以上来るときっついでえ}と思うとると、T之君の背後に虻が飛んで来て獲物狙っとる様子やった。暫く目で追うてから語り掛けた。「さっきから一匹の虻がお前様の後ろ飛んどってもうすぐ頭に下りそうやが、流石男らしく堂々たる態度しとるな、感心感心」

「バカもん、早く教えろよ」と云うや、ワテ同様にタオル振り回しとったものの、虻には当たらず追い払ったのみに終わった。

「殺すのは不憫と思うたんか?また来よるでえ」

「優しい性格なんだよ」云うて口尖らせとった。

湯は適温やけど、湯船に人が多く、時折虻の襲撃もあって落ち着かんかった。

そこではゆっくり出来んかったんで、宿に戻りタオル持った儘、川沿いにある岩風呂へ下りて行った。

目の前の澄んだ川では子連れの家族が水遊びしとった。近くに西瓜冷やしとるのが裏山椎茸でしたわ。

小ぢんまりした湯船には誰も入っとらんかった。湯口はあるが川床の石の間からも湧いとる湯はぬるめで長く浸れた。

ただ、T之君は頻りに虻に襲われやしないか気にしとったわ。

泉質は単純硫黄泉。

食事は部屋でのんびりと。素朴な田舎料理やが、どれも手抜きはしとらんのが分かるもんやった。しかも品数が多いんや。

静かな夜にワテがつくって来たテキーラとラムとコアントロー混ぜたカクテルのおかげもあり、ふたり共ぐっすり眠れ、目覚めると眩しい朝やった。