染井霊園 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

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人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

今朝は8時ちょっち前に起き、植物に水遣りしとったら、くしゃみ連発。

朝食は昨夜スーパーで半額になったんで買うとったさばの照り焼き弁当。デザートは青森産りんご。花粉症の薬飲んだ。
台所の掃除をしてピカピカにした。
ラジオ「セッション2016」で八木隆幸(ピアノ)、伊藤勇司(ベース)、二本松義史(ドラムス)を聴いた。
銀行ATMで金下ろして、昼食は松が谷「ル グルニエ」に入り、平日限定のビジネスランチを静かに流れるボサノバ聴きながら食うた。今日のメインは牛ハチノスのトマト煮。サラダ、パン、コーヒーが付き1290円也。
満足して店を出、スーパーに寄って食品買うて帰宅。

メモ捜ししてから、筋トレ小一時間して、牛乳飲む。

風呂に小一時間浸り考えとった。ワテ等日本人にはまだ中流幻想の中に居る人が多いんやなかろうか?嘗てはほとんど中流やったが、今は格差社会になっとって地滑りの如く貧乏人が増えとる。しかしながら、周りを見たくないんか見えないんかそれを認めぬ人が少なくないのに驚くわ。自分の周りは等しく貧乏化しとるから気づき難いんか?海外へ旅行に行って来た友人知人に感想聞くと、おしなべて物価が高いちゅうの云うんや。それこそデフレ日本の経済力が落ちとる事に他ならぬのにな。日本が経済成長しとらんからや。円の購買力が落ちとんねん。つまりは経済成長せなあかんねん。
グレープフルーツジュース飲みながら才能豊かな挟間美穂をユーチューブで聴いとった。ランチ時、彼女の曲を流す店はないもんやろか?
「ル グルニエ」で、今朝の墓地で迷子になる夢はなぜ見たんかと口動かしつつ考えに耽っとった時、Eみさんの事思い出したんや。見つけたメモを起こしますわ。


Eみさんは墓場を嫌いではない。ちゅうか好きなのかも。
昨日、散歩や云うて結構歩かされて巣鴨越えて駒込の染井霊園へ連れて行かれた。水戸徳川家の墓所ですわ。
知らんかったが、ここも都立霊園であった。
霊園内にあまり人は居らんかったんで、ひっそりしとった。時折吹く風で寒かったがな。
でも、日本美術の発展に大きな功績を残した岡倉天心がここに眠っとったの知って、来た甲斐があったと思うた。「浮雲」を言文一致体で書いて、我が国近代小説の開祖と呼ばれる二葉亭四迷や彫刻家の高村光雲・光太郎に智恵子の墓もあったでえ。それに気骨あるジャーナリスト陸羯南のもありましたわ。
一巡りした後、これからどないするかEみさんに相談しとる時やった。
「可愛い~」と、水色シガレットパンツ穿いたEみさんは目に入ったトイプードルに寄って行って屈んだ。
トイプードルの方もごっつ嬉しそうに尻尾振り彼女の腕の中へ飛び込んだ。女好きな奴ちゃ。
その犬連れた瘦せぎすな爺さんがEみさんにしわがれ声で話し掛けて来た。こっちも尻尾は振らんがごっつ嬉しそうやった。やはり女好きか?
爺さんは彼女を舐め回すように見て、空いた手で上の方を指差しながら「この葉桜もええやろ?」と聞いてきよったんや。
Eみさん、トイプードルと戯れとって別の世界に入ったから返事無し。
すると爺さん、声大きゅうして「花見には二週間程遅かった。ここは夜桜巡りするとええんやで」と云うた。どうやら関西人らしい。
確かに幾本も桜の古木があるんやが、名所やったんやね。
「夜桜、素敵でしょうねぇ」こちらの世界に戻ったEみさんが応えとったが、まあ、ワテは桜の花好きちゅう程でもないから、別にちゅう思いなんで黙っとった。
爺さん「ここがソメイヨシノ発祥の地なんや」云うんやが、ほんまやろか?
それから、「こちらの人は?」と、しげしげワテを見てEみさんに問うた。好奇心旺盛で何でも尋ねる爺さんや。ワテ、吃驚したわ。
Eみさんが躊躇なく云うた。「脚本家目指されてます」

多分、爺さんはワテ等の関係問うたんやと思うたものの黙っとった。
「脚本家と云うと、テレビや映画のアレ?」
「ソレです」とEみさんキッパリ云うた。
分かったようで分からん会話やった。
「君、これ迄書いたもんは売れとるの?」と、ワテに問いよる。
聞きづらいと思われる事を直ちに聞く爺さんやった。
ワテが気の利いた返事しようとすると、その前にEみさんが悲しげな顔してみせ云うやないか。「努力はしてるんですけど、認められてはいないんです」
「世の中そう巧く行くもんやない」と、爺さんちょっち笑うた。
「だから、わたくしが食べさせてます」
{あかんな、何がわたくしや、Eみ、また小芝居モードに入っとるがな}と心配し出したところで、爺さんはちらりとワテの顔見てからEみさんに「ほう、あんたも大変やな」と憐れんだ声出した。
Eみさん頷きながら「この人の稼ぎが悪い分は、わたくしが働いて家計を支えております」と、今度は気取った声で云うねん。
「二人分稼ぐんか」
「そうなんです。わたくしはこの人が世に出る迄頑張るつもりなんです」
Eみさんに「気張り過ぎんようにしとき」云うてから、爺さんはワテ睨み云いますねん。「君な、夢追うのはええ。けど、人生長いようで短いで。そやから見切り時がある。真剣に将来の事考えとかなあかんで」
爺さんが質問する限り、Eみさんが小芝居止めそうもないのと、旗色悪うなって来たんで、爺さんに背向けてEみさんに云うた。「お犬様の運動の時間潰してはあかんさかい、そろそろワテ等も行こ」
すんなり彼女は従い、「またね」と、尻尾振り続けるトイプードルにひらひら手を振ったんで、ワテの口から安堵の溜息が漏れましたがな。
別れ際、爺さんは親切にもワテに向かい云い放った。「ええか、将来を大事にするんやで」
爺さんと犬の姿が見えなくなってから、Eみさんの肩に手を置き云うたった。「さっき爺さんとしとった話やが、ワテ、お前様に養ってもろてる訳やないやろ」
すぐさまEみさん「それじゃぁ、今日の朝はどこで何食べたぁ?」
ここで云い淀んではあかんと、明るくハキハキ云うた。「Eみちゃんの所で手づくり料理。旨かったあ」
「でしょ~。間違ってないね」と胸張りますんや。
「違うやろ」
「同じだね」と決めつけるんや。
「ちゃうわ。Eみちゃんに馳走になるのは週1やろ。一週間は7日あるんやでえ。ソ連に、外食代は全てワテが出しとるしな」と云うてみた。
「その一日で一週間分食べてるしぃ、外では食べたい物があるS吉に独りで食べる寂しい思いしないように付き合ってあげてるのさ」

斯様に口ではEみさんに敵うもんやなかった。
芥川龍之介の墓が染井霊園近くの慈眼寺にはあるのを知ったのは、彼女とお別れした後の事ですわ。