柳川 ドンコ舟と鰻のせいろ蒸し その後編 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

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人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

今朝は7時ちょっち過ぎに起きたら、鼻詰まりではあるが垂れる鼻水の量は減りくしゃみも出ん。
朝食は切り餅を4つ焼き、七味振り掛け海苔巻いて食うた。デザートは熊本産みかん4個。
大西順子のアルバム「ピアノ・クインテット・スイート」をCDで聴き、筋トレ30分した。
牛乳飲んでから四日振りの風呂に小一時間浸り、「最終かつ不可逆的解決」とか云いつつ、実は文書化もしとらん脆弱な合意で事態悪化させる安倍晋三と朴槿恵の稚拙さ考えとった。果たして、責任認めて出す税金10億円はどない使われるんやろ?呆れる歴史認識変えぬ限り駄目やのに。
2016年の初外食は入谷「大塚」に入って、揚げたてが一品ずつ供されるランチてんぷら定食を頼んだ。赤出汁の蜆が入った味噌汁、漬物、アイスクリームが付いて1080円也に大満足。
銀行ATMに寄り、スーパーで食糧調達後に帰宅。
大西順子のアルバム「プレイ・ピアノ・プレイ」をCDで繰り返し聴き、「画皮 千年の恋」第26話をギャオで見た。
ちょっち早目の夕食は土鍋で広島産牡蠣、神奈川産大根、長野産ぶなしめじも入れ湯豆腐。デザートは熊本産みかん3個。


ワテはいつもの元気が消えぎみなM夫ちゃんに尋ねた。「深夜寝ぼけてキー持たず部屋出て、お前様は締め出されてしもたんやて?」
「人の世は無常だ。酷い目に遭った」
「世の中にはマスターキーちゅう物があんねんでえ」
「ホテル従業員を起こしては可哀相だろうよ」
「夜中起こされる友達も哀れやないか。それに、体寄せあって寝なならんかったH世っちは寝不足みたいやでえ」
「戦地での兵隊さんの事を思えば、幸せな寝方だぞ。何の文句がある」
「ここは戦争中のシリアやあらしまへん。H世っちが可哀相と思わんかったの」
「そういう時の為の友達だろうよ」M夫ちゃんは小声で云うた。
「安眠妨害な不届き者が何を云う」Nっぺが口出しした。「M夫は夜を静かに出来ないのか」
「人倫にもとるがな。ええかげん是非曲直を弁えるべきやでえ、M夫ちゃん」ワテもNっぺの尻馬に乗って囃した。
「だからって無暗に非難するのは、軽率に過ぎないか。それでは気持ち縮込ませるだけだから、そうした乱暴な言葉使うのは止め、今後は気を付けるように、と諭すべきだろうよ」そう云うて、咽喉の渇きを覚えるのかM夫ちゃんは手にしたペットボトルのミネラルウォーターをゴクゴク音させ飲んだ。
それ見てNっぺ「昨日から水分多量にとってるが、糖尿病なのか?」
そう云われたM夫ちゃん、思い当たるところあるのかうち萎れた風情を見せたんで、場を明るくせなならんとワテは云うた。「幸か福岡、ワテは甘木で寝ていて難を逃れられた訳や」
「もしかして今の駄洒落か?」ブッチョAが聞いた。
「そうみたい」とITちゃん。
「公務員長く務めとると洒落に鈍感になるなあ。ブッチョ、感性みがいとかな」
秀吉に「東の本多忠勝、西の立花宗茂、東西無双」と云わしめた初代藩主立花宗茂の城の外堀中堀をドンコ舟で一時間程巡る定番のコースに、幹事ブッチョAが予約しとったんで、西鉄柳川駅前からマイクロバスに乗せられ掘割下りの乗船場に移動したが、歩いてもさして時間掛からぬ場所やった。
他の観光客と一緒に乗り出発待つと、20名程乗せたところで、編み笠阿弥陀被り法被着た船頭も乗り込み棹を差して舟は動き出した。
進みは船頭の棹によるもんなんで、城下に網の目のように張り巡らされた掘割を緩やかに流れ行く感じや。
堀割は思うたよりも浅く水深1メートルあるかないかちゅうところで、万が一突風が吹き投げ出されても立ち上がれば大丈夫なんやけど、あっちこっちに巡らされとるものの、この浅い掘で城を守る役に立ったんやろか?
船頭によれば、戦乱無くなった時代にも掘割の水は畑用や米砥ぎに洗濯など生活用水に使われとった云う。
船頭が駄洒落交えて水郷柳川の紹介をし自慢をした。まずは水の豊かさをな。
それから、詩集「邪宗門」や歌集「桐の花」の北原白秋や。
出身者には檀一雄、妻夫木聡、徳永英明、大関琴奨菊も居るんやて。
どぜう柳川鍋、鰻せいろ蒸しだけやなく、有明海で海苔の養殖も盛んやし、蒲鉾や竹輪も名物やと自慢した。食い物の他にも、い草製品の畳表、花ござも自慢したが、自慢するもんが多くあるのは幸せな事ですな。
それにしても日差しに照り付けられる日やった。
手をかざして日差しを避けながら、「帽子を持って来るべきだったな」そうNっぺが嘆いたように、棹差す船頭の観光案内を耳にしつつも皆暑さに閉口しとった。いつもはしゃぐM夫ちゃんでさえ静かやったんですわ。「M夫から日本酒の臭いがする」と、昨夜彼の十倍日本酒飲んどったNっぺから云われてもダンマリ水面ジッと見入っとったM夫ちゃんやった。
そやからワテ、「昨晩食うた河豚に中ったか?」と心配して云うたのに、「貴様の歌に中った。それに、暑いんじゃ」と、声絞り出したM夫ちゃんやった。
その会話が聞こえたからなのか、船頭は冬には炬燵舟になるちゅう案内した。
それから、船頭が北原白秋の詩歌云うた後で、「拍手」と大きな声で拍手を促した。駄洒落ですわ。
「暑苦しい。勘弁してほしい」Nっぺが呻くように呟いた。
「Sちゃんが気を利かせて、拍手って、大きな声出し云ってあげなくちゃ。船頭さんに云わせちゃ駄目でしょ」と、ITちゃんが責めるねん。
「暑さでボーッとしてましてん」
でも、ボーッとしとったのはワテだけやありまへんでえ。柳川商業高校出身の元下半身タイガース真弓、若菜の話が出た時だけ、H世っちとM夫ちゃんが一瞬元気になったがな。
船頭の巧みな棹遣いで狭く低い橋下をくぐり舟は進んで行った。
「痺れる!」突然云うたのブッチョAや。見事な棹遣いにかと思うたら、そやなくて尻が痺れたんやて。舟に直座りのお尻が痛い云いますんや。
「面は厚いが尻の肉は薄いんやろか?」
「面の皮厚くないぞ」
「老いると皮膚薄くなるもんな」
掘割下りもちょっち厭きつつあったんで、ドンコ舟が行き交うの暫く眺めとったが、興味ひく所に来た。
魚を獲る為の網の形が珍しく見入っとると、蜘蛛手棚ちゅうもんやと船頭が教えてくれた。
そして、行く手に武家屋敷が見えて来た。
と思うたら、船頭歌い出した。「♪♪待ちぼうけ、待ちぼうけ  ある日せっせと、野良稼ぎ  そこに兔がとんで出て  ころりころげた 木のねっこ♪」
「まちぼうけ」の文学碑があったんや。
ブッチョAがより詳しく説明した。「株を守る」を下敷きにした童謡詩をな。

そう云われ、ガールフレンドやったEみさんとの遣り取りを思い出したがな。
「韓非子がした宋の国の話で、切り株にぶつかって死んだ兎を手にいれた農夫が、それ以降働くことを止めてしまい、また兎を得ようと日がな一日切り株を見張って暮らし、農夫は宋国の笑い者になったという故事なんだよ」
「見通しが甘過ぎる経営者のようだな」税理士ぽくNっぺが発言。
「昨夜の僕ちゃんみたいに臨機応変に対応すべし」云うたのM夫ちゃんや。
「どこが臨機応変なの。不心得な」すかさずH世っちが反駁。
「融通無碍だろうよ」と、M夫ちゃんは譲らなかった。
その日の掘割下りの終点は「御花」のすぐ下で、舟を降り陸に上がってホッとしたワテが云うた。「そこの「御花」にワテ二度入っとりまんねん。見所あるええ所やでえ」
ところが、幹事ブッチョAの発した一言はこうやった。「じゃあ昼飯に行こう」
長年国語教えとったブッチョAやが、立花家史料館もある「御花」だけやなく白秋にも思い入れ無いようで、北原白秋記念館を見学したい素振りは露も見せず昼食予約しとる店へと気持ちは向かっとった。
しかしながら、西鉄柳川駅行き路線バスの停留所を見当付けたまさにその時にバスは我々の視界から走り去ってしもた。なので仕方なくタクシーに分乗して西鉄柳川駅前の予約しとった「古蓮」へ向かった。
ワテ等は店で和気藹藹ヱビスビールや烏龍茶飲みながら鰻せいろ蒸しを待っとった。
ワテは眠たげに目細め舟漕ぎ出したH世っちに云うた。「どぜう食いたそうな顔しとるな。どぜう食うなら金をくれ」
「それ云いたかっただけだろう」と、目ぱっちり開けたH世っち。
「安達祐実じゃないぞ」と、M夫ちゃん。
「ふたり共元気になってよかったがな」
「僕ちゃん、なまこ壁の倉見たら食欲出たの」
Nっぺが問うた。「M夫はどんな体質なんだ?」
「者共、耳の穴かっぽじってよ~く聞け」それから、席に鰻せいろ蒸しが運ばれて来る迄の間、口上を述べるように訳の分からぬ理論をまばたきもせず云うたM夫ちゃんやった。