『アクトレス 女たちの舞台』 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

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人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

『アクトレス  女たちの舞台』☆☆☆

今朝は8時ちょっち前に起き、植物に水遣りした。

風呂に小一時間浸り、気温上昇のもたらすインパクトはごっつ大きいと考えとった。やはり人間の過剰な欲望を抑制させるしかないんやろなあ。

朝食に山形庄内産つや姫でご飯炊き、くめ納豆、海苔で二膳。デザートは山形産ラフランス。
「科捜研の女 season15」をギャオで見た。

駒野逸美のトロンボーン演奏をユーチューブで聴いた。

「浅草茶寮 Kuwasaru」へ昼食に出掛けたんやけど、酉の市の賑わいがあるのは承知しとったんで早めに出たものの千束3丁目界隈が思うたより数段混んどって雑踏掻き分け進んだんで到着にかなり時間要したでえ。急がば回れやったわ。店のある浅草5丁目の人通りは少なく静けさが嘘の様やった。本日頼んだのは日替わりセット。まずりんごの和え物の小鉢が出て、魚焼物、刺身、煮物、サラダ、ご飯、けんちん汁、香の物で1100円也。
満足して店出て、「ヒューマントラストシネマ有楽町」へ歩いて行き映画観て、秋葉原の電器屋でラジオを購入し、近所のスーパーで食料買うて帰宅。
夕食はブラジル産鶏肉、北海道産南瓜と玉ねぎ、神奈川産小松菜、長野産エリンギをタジン鍋で蒸して、ご飯と食うた。デザートは熊本産トマト。
シェリル・リンのアルバム「イン・ラブ」をレコードで聴いた。

筋トレを小一時間した。


先週「エール!」を「ヒューマントラストシネマ有楽町」へ観に行った際、また観に来なならん映画やっとるの見つけましたんや。ジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワート、クロエ・グレース・モレッツの競演ときては観逃せぬやろ。
なんとも邦題は凡庸やけどな。
日曜日で日に2回しか上映せんから、混むと予想し早めに行ったんやが、9割の入りやった。
監督脚本はオリヴィエ・アサイヤスちゅう人で、原題は「シルス・マリア」。
スイスの連なる山々と湖と流れる雲で幻惑的な景観誇るシルス・マリアが舞台になっとるんやけど、それって自問し葛藤する主人公の内面でもある。
見応えありましたでえ。
キャスティングがしっかり嵌まってええねん。
ジュリエット・ビノシュは、ハリウッドを哄笑する国際的大女優マリア・エンダーズやが、「X-MEN」に出たらしい。
クリステン・スチュワートは、マリアの有能な米国人マネージャーのヴァレンタインで、セリフ合わせの相手もするんや。マリアの助言者でもあるんやけど、輝く未来のあるジョアンの存在を意識させられた事もあり、次第にマリアに不満募らせる。
クロエ・グレース・モレッツは、ハリウッドのスキャンダラスな米国人女優ジョアンで、マリアを脅かす怖いもの知らずで小生意気な19歳の娘。マリアの拘る役に起用される。
作品の鍵となっとんのが、「マローヤの蛇」と呼ばれる渓谷に沿うてくねくね流れ行く雲ですわ。それが何を象徴しとるかや。
また、「マローヤの蛇」は、冒頭で亡くなった劇作家の戯曲のタイトルでもあるんやが、それがマリア18歳の時の出世作でもあるんや。
そして、マリアに新進演出家からその作品のリメイク版への出演オファーが来たものの、嘗て演じた思い入れのある若い女やなく、彼女に溺れついには追い詰められて自殺する中年女を演じてくれちゅうもんやねん。
他人から見れば、20年の時を経とるさかい現在のマリアに配されて当然の役柄なのに、それを受け入れるのは苦痛以外の何物でもないんや。マリアには若さの特権はもはや無いのに、出世作で演じたヒロインの若い女から離れられぬのですわ。そやさかい、受けてしもてからも役柄の中年女が理解出来ず、演技に気が入らんのですわ。それだけやなく、イライラをマネージャーのヴァルにぶつけてしまうんや。老いを受け入れられぬ為にこれ迄保ち続けて来た大女優としてのバランスが崩れるねん。
「ヘビなんかいない」とマリアはヴァルに云い放つんやけれど、マリアは「マローヤの蛇」の中年女役を渋々でも引き受けてしもたが為、否応なく時の流れに向かい合う事になっとんねん。だからイライラしよる。
ヴァルは、マリアが時の流れに向かい合えぬのを知っとりまんねん。そやから彼女に幾度となくアドバイスすんねんけども。
マリアはヴァルを伴いシルス・マリアの雲を見に出掛けるんやが、そこでイラつきムカついとったヴァルが突然マリアの元を去るんや。この作品、そこからがごっつええんですわ。
でもそれは、その前にふたりの長いセリフ合わせの遣り取りがきっちり描かれとるからに他ならぬ。若い女役のヴァルと中年女役のマリアふたり舞台を思わせスリリングやでえ。
ラスト、マリアにミュータント映画の主役のオファーを受けてもらうべく、その監督が「マローヤの蛇」の舞台本番直前に来て彼女を説得するんや。けれども、マリアは主役にはジョアンがええ云いますんや。そしたら、監督はジョアンの起用は無いと云い切り、あなたマリアに白羽の矢立てた理由は、時を超越しとるからや云いますねん。何たる皮肉!
成熟しとるのに無垢な存在・・・
満足し立ち上がり館外に出て思うた。誰でも老いと折り合いつけるのは難しいもんや、と。
そして、日本映画の巨匠の作品に数多く出演し42歳で引退してしもた原節子が今年ひっそり亡くなっていたニュースが報道された事を思い起こした。