袋田温泉「思い出浪漫館」 その弐 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

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人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

暴漢と格闘する夢見た今朝は7時半に起き、くしゃみ3連発。だけど鼻水は出んかったので花粉症の薬は飲まず。
朝食は山形庄内産つや姫でご飯炊き、くめ納豆、紀州産梅干で三膳。デザートは青森産りんご。
H世ちゃんに葉書を認め、筋トレ小一時間して、鶯谷の元三島神社が御祭礼なんで、散歩を兼ね御輿見に行ってみた。御祭礼見たの数年振りの事や。
昼食に浅草「フレスカ」へ向かったが、出遅れてしまい着いた時には食べたかった魚貝のスープ入りご飯ランチは既に売れきれとったので、パスタ・ランチにしブロッコリーとベーコンのスパゲッティを選んで注文。950円也。
満足して出、書店に立ち寄ったら春樹さんの新刊「女のいない男たち」の初版があったんで購入した。もう20年位前から本買うても読まず積んどく事が多くなっとるんで、実用書以外は初版しか買わん事にして無駄遣い予防しとるんや。そう云えば、「1Q84  BOOK3」は半ばで止まっとったなあ。
その後スーパーを二軒回り食料調達して帰宅。
中本マリのアルバム「シャイニイ・ストッキングス」とマイケル・フランクスのアルバム「アート・オブ・ティー」をレコードで聴きた。
夕食は北海道で獲れた鰈を焼き、千葉産キャベツと大根、徳島産人参、新潟産椎茸をタジン鍋で蒸して、ご飯二膳食うた。デザートはグレープフルーツジュース入れたヨーグルト。
ほな、袋田温泉「思い出浪漫館」での思い出をメモ書き見ながらまた記しますわ。


人生には詩歌音曲が必要や。無いと、潤いに欠け何と味気ない事か。
ワテ等がカラオケ始めると長い。ましてやそれあるのが宿内やから、M夫ちゃん流に云えば匍匐前進しても寝床へ行ける安心感もある。そやさかい、カラオケ店で歌うよりさらに長く続きそうやが、そこは旅館側の都合もあって途中での延長は出来ず、結局カラオケ店に出掛けるより短く仕舞いになったんやけど・・・
カラオケ機器がある宴会部屋に全員が座ったら、誰にも頼まれとらんのにM夫ちゃんが立ち上がり挨拶し出した。「また全員欠ける事なく揃う事が出来、この上もない喜びに満ちとる。今回のツアーで幹事の労とるH世っちは、」と云うたところで、ワテ合いの手入れた。「H世っちはロートルかあ」
M夫ちゃんは怒って、「こら、S吉!黙って聞け」云うて話続けた。「H世っちは、日中友好の為二国を度々往来し、彼の地に居る時間も長い。中国料理に舌鼓打っとるだけではないはずである。日中の懸け橋として彼が日々懸命に努めとるにもかかわらず、真けしからぬ事に中国共産党胡錦濤政権は江沢民の為した愛国主義教育と云う名の反日教育を薄めはしたものの未だ無くそうとはしとらん。中華思想の真髄とは、外国人が一方的に悪く自分達は何も悪くないと云うものである。これを黙って見過ごしておっては我が日本に未来は無い。そこでだな、直美ビヨンセ渡辺を彼の地へ親善大使として送り込んで、腰のキレと流し目で中国共産党幹部を籠絡し、云々然々。と云う訳で、今夜はこの地茨城袋田温泉の夜を楽しもうではないか」と、4、5分喋っとったが、云々然々のところは全く憶えとらんのや。

「はよカラオケタイムにしよ」
「では、IT姐、まずは一曲お願い致しやす」と、正座したM夫ちゃんは声色変えて云い、ITちゃんに気を使うた。
「口火を切るの、あたしでいいの?」
「勿論でやす、野郎共に道を示してやってくだせえ」と、M夫ちゃんが極道気取りで云うた。
「じゃ歌うね。何にしょうか」
「何でも云い付けてください。アッシが打ち込みますから、姐御」
「藤純子の「緋牡丹博徒」、なんかどう?」
「嬉しいっす。姐御の「緋牡丹博徒」が聴けるなんて」
「M夫、分かったから早く入れろよ」と、Nっぺが開始を急かせた。
「Nっぺ、耳の穴かっぽじってよぉく聞け。急いては事を仕損ずる。この言葉、心に留めておけよ」云うたM夫ちゃんやったが、曲の出だしで一同ズッコケた。間違って入力しとったんや。
「ほよよ」M夫ちゃん、アラレちゃんになっとった。
機械から流れとるのは、氷川きよしの「きよしのズンドコ節」やったからな。
「冷静沈着に仕事出来たんか?」と、ビール飲みながら云うて、M夫ちゃんを見たんや。
「S吉、恩賜のビールだぞ、よぉく味わって飲め」と、照れ隠しで云うたM夫ちゃんは立ち上がり、腰を動かし肉付きええ尻振り振りし、「ズン、ズン、ズン、ズンドコ」と、念仏唱えるように云うた。
「M夫、もう酔っ払ってるな。ちゃんと入れろよ」と、云うたNっぺの顔もちょっち赤らんどった。
ITちゃんも呆れた目を向け云うた。「M夫ちゃん、この曲誰が歌うのよ?」
「軍歌界の貴公子のわたくしが、責任持って歌わせていただきます」と、敬礼しつつM夫ちゃんは進み出て、尻を左手で押さえ右手にマイク持ち小指立てて歌い出した。
ところが、歌い始めてはみたものの、どことなく音程が外れとって、聴衆は次第に両耳を塞いでいった。
Nっぺは「飲まなきゃ聴いてられない」と、ビールを開栓しコップからこぼれそうになる迄注いで、一気に飲み干した。
「ああ、きよしこの夜」と、ワテは溜息漏らした。
「M夫ちゃん、責任感強いのは分かったから、もういいよ」と、ITちゃんが浪曲の如き歌を止めさせた。
「IT姐~、許してもらえて僕ちゃん凄くホッとしました」と、M夫ちゃんはリモコン操作してズンドコ曲を止め、姐御の曲を正しく入力した。
「お口直しに「緋牡丹博徒」、歌います。聴いてください」と、ITちゃんが気持ち込めて歌うと、「いよっ、お竜さん!」と掛け声が。「仁義も切りやす、ドスも抜く」と、極道気取りも声掛けた。「そうドス」とワテ。姐御が歌い終えると拍手喝采、いよいよ場が盛り上がって来た。
「来た~、流石IT姐御、涙こぼれそうになりました」M夫ちゃんはそう云い、続けて「ほな、次の方の歌にしまっせ」と、関西弁で云うたが、スピーカーから流れて来たのは「麦と兵隊」や。♪♪徐州徐州と 人馬は進む 徐州 居よいか 住みよいか 洒落た文句に 振り返り♪
その歌の歌い手は一人しか居らぬ。ちゃっかり次の曲に自分の持ち歌を入力しとったんや。
「いつの間に入れたんや?次歌うの、さっき讃えとったH世っちだと思うた」
「いい根性してるよな」と、ブッチョA。
「おお、寒い。凍える」と、Nっぺは震える仕草した。
M夫ちゃんが「PKOで頑張る兵隊さんの為に歌います。君達、正座し背筋伸ばして聴くように」云うた時、H世っちが「M夫ちゃん、慰問に来て!」と黄色い声で云うたが、何ら臆する事無く、直立不動で朗々と歌い続けた。
その間にワテ等はカラオケのリモコン回して、自分が歌う曲をそれぞれ入れ込んどった。
M夫ちゃんが歌い終えると、H世っちが山下達郎「さよなら夏の日」、Nっぺは植木等「スーダラ節」、ブッチョAが大瀧詠一「カナリア諸島にて」を、ワテのミーシャ「逢いたくていま」と順々に歌うて行った。
二順目になってITちゃんが中島みゆき「時代」歌うたら、何やしんみりしたんや。一頻り十代の頃の話となって、皆の心に懐かしさが灯り、穏やかな気持ちになった。
ところが、M夫ちゃんが立ちマイクスタンドの方へ行きかけると、「M夫はさっき粗相したから、一回飛ばして反省の時間だな」と止めるブッチョA。
「そんな殺生な。僕ちゃん辛い」
「摂政関白太政大臣やないやろ。その位の罰は受けなはれ」云うと、M夫ちゃんはワテを睨んだ。
ITちゃんも「そうだよM夫ちゃん、自分の曲はしっかり入力するのに他人の間違えては駄目でしょ。一順の間反省しなさい」
「反省、反省」と、手叩きながらNっぺが囃した。
「M夫ちゃん、半生、つまり一生の半分を振り返り、その行いの悪い点を認めて改めよう、とNっぺは云うとるんやでえ」そうワテが云うと、M夫ちゃんは「S吉が「東京音頭」歌い出したらすぐ止めてやる」と鼻息荒く云うた。
結局、民主主義的に多数決5対1で、次にはH世っちが井上陽水を熱唱した。それから、Nっぺはまた植木等を、ブッチョAがはっぴいえんどを、そしてワテは久保田利伸の歌を歌いましたんや。
ITちゃんが三曲目に越路吹雪の持ち歌を歌い終えると、反省どころかビールを休み無く飲んどっただけのM夫ちゃんの番がやって来て、待ってましたとばかりにマイクを鷲掴みしたんや。
でもな、スピーカーから流れ出したのそこに居る誰も聞いた事ない昭和な曲やった。M夫ちゃんもな。「アレ?僕ちゃん・・」
「演歌調?M夫ちゃん、それでええんか?」
「Sちゃん、止めてえ~」と困惑顔で哀願し、「可笑しい、「月月火水木金金」入れたはずだけど・・・」と、頭を掻いた。
「自分が歌いたい曲も間違ってる。終わってるな」と、Nっぺは云うて、また手酌でビールを飲んだ。
「粗忽者だよなあ」と、ブッチョA。
M夫ちゃんは「お代官様、ご勘弁を」云うたが、H世っちに入力し直してもらうと、何事もなかったように「月月火水木金金」を気持ち良さそうに声張り上げて歌うとった。
その後誰がどんな歌歌ったのかワテも酔いが回って忘れてしもたわ。
障子開けて入って来た仲居に約束の時間が来た事を告げられ、宴会場からそれぞれの部屋へ戻ったのは記憶しとる。
ガッツリ飲んだし、しっかりカラオケ運動したんで、ワテ等はその夜大鼾かいて眠った。鼾の合唱しとった。
翌朝目が覚めたら、Nっぺは寝とるがM夫ちゃんとブッチョAが居らんかった。{風呂に行ったんや}、思うてワテもタオル手にしてドア静かに閉め大浴場へ向かった。
だけど、二人とも居らん。内湯には十人前後居ったけど他の客ばかりやったので、滝川沿いの露天風呂へも行ってみたが、朝の光が辺りを満たしとった。{やはり居らん。どこに雲隠れしたんやろ。「四度の滝」に魅せられまた見に行ったんやろか?}思いながら、湯に入り周囲の緑の木立眺めると、先に浸っとった色白の爺さんが話掛けてきたんや。「胸いっぱい空気吸い込んでみると、更に気分よくなるよ」ワテは声掛けてきよった爺さんの云う通りした。「確かに朝の清々しさが倍加しまんなあ」と云うと、爺さん嬉しそうでしたわ。その爺さんと暫く温泉談議に花咲かせたがな。
温泉から上がり浴衣で部屋に戻ると、M夫ちゃんもブッチョAも戻っとって普段着姿でテレビ見とった。Nっぺも起きて丁度着替え済ませたところで、ワテの顔見るなり「朝飯食いに行くか」と云うた。
朝食はバイキングやった。意外にもクロワッサンが旨かったんで、幾度も御代わりした。
「Sちゃんも朝からよく食べられるねえ」ITちゃんに感心された。も、ちゅぅのは彼女のパートナーも相変わらず今もって大食やからや。その朝も皿に富士山盛りした食い物残さず平らげとった。
「こいつ等、欠食児童の儘老いさらばえるんだ」と、M夫ちゃんが二人を交互に指差しながら云うと、「M夫ちゃんは昨夜ビールをあれだけ飲んだのに、また朝からビール飲んでカロリー補給たっぷり出来て羨ましい」と、それから運転手務めるH世っちが食い物でプックリした腹をさすりながら返した。
宿を後にする時はええ風が吹いて、日差しは優しかった。
ブッチョAが運転する車に乗り込んだNっぺが云うた。「食った食った。飲んだ飲んだ。英気養えた」