南千住 その弐 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

今朝は7時半に起き、植物に水遣りし、山形庄内産つや姫でご飯炊き、くめ納豆、紀州産梅干で二膳の朝食。デザートは栃木産とちおとめ。
熊谷泰昌君と川村竜のCD「OL'SCHOOL JAZZ」を聴いた。
筋トレ一時間し汗ばんだんで、牛乳飲んでから風呂に小一時間浸り、いかがわしいカッコ戦略特区ちゅう焼き直し喧伝しとる輩の狙いを考えとったんやけど、我が国民は体制に甘いわな。
11時に先般予約で満席やった入谷「大塚」へ昼食に出掛けた。頼んだのはてんぷら定食で、今日のネタでは鱚が旨かったわ。増税前と変わらず蜆の味噌汁に口直しのシャーベットとワテ食わぬ漬物が付いとったが、金額は1000円になっとった。
食後、電器屋、郵便局などに寄ってから、神楽坂迄歩き、出張帰りのEI君と居酒屋で飲んだんや。彼と話したのは、内戦になりそうなウクライナ、地政学的脅威の中国、米国の対中戦略、独善的な輩が銃作った3Dプリンターから小保方騒動まで。
それにしても、小保方騒動ちゅうのは何だか新興宗教の日常のように思われるなあ。
EI君、今晩はお疲れの様子で酔いが早かったので、割と早めに切り上げて帰って来た。
ほな、Eみさんと南千住へ行った時のメモの続きを写します。先般このメモ書き読んでごっつう懐かしい思いやった。


松尾芭蕉が詠んだ句や。奥の細道へ旅立つ時、見送りの門弟たちとの別れの地なのであった。
鳥居をくぐり、静かな境内に入ると、参拝客は他に三人しか居らんかった。
「御祭神は素盞雄大神と飛鳥大神やて。飛鳥大神は事代主命とも云うようや」
「ここ、天王さまとも呼ばれるんだってさ」
何本か碑が立っとるの見たが、何て書いてあるんかチンプンカンプンやった。
「何が書いてあるの?」
「ワテ学無いねん。葉っぱ、雌しべも無い。そやから分からん」
「花もね」と、きっつい事云われた。
それで、「花はこれから咲かすんや!」と大きな声出た。
「あれ、立派な銀杏だねぇ」と、ワテに背向けたEみさんは指差し、太くびっしりと絵馬が掛けられた銀杏へ近付いて脇の案内読んだ。「子育ての銀杏って呼ばれてるんだぁ。樹齢五・六百年だって、凄いね」
「何々、この樹の皮を煎じて飲むと、母乳がよう出るんやて。乳の出がようない婦人が絵馬を奉納し祈願したんや」
「子育て祈願なのさ。あそこには狛犬何匹も居るょ」と、次は狛犬へ近付いて行くんや。
「狛犬がブッチョA、H世っち、Nっぺ、M夫ちゃんに似とるわ」と、つい感じた儘を云うたら、Eみさん「M夫ちゃんに会いたいなぁ」と、薮蛇になってもうた。
「ソ連はあかん云うとるやろ。M夫ちゃんと接するとEみの清らかな心が曇るでえ。何度云わすねん」
「大丈夫だょ。S吉みたいに他人に影響されないから」
「だから、M夫ちゃんの影響力は生半可なもんやないの。ワテはEみの将来を案じて会わせんのやでえ」
「S吉みたいになってもいけないしねぇ」
「その云い方、引っ掛かるわな」
「ねぇ、どの狛犬がM夫ちゃん?」
「あっちとそっちとこっちが、ひょうきんそうな面やからM夫ちゃん、Nっぺ、H世っちやな」
「じゃぁ、あれはブッチョAだね」
「そやな、ブッチョAのような面しとるから狛犬高校の教諭かもな」
「さぁ、お参りだね。小銭持ってるでしょ」
「小銭?由緒ある神社に来たからにはやな、祈願するならお賽銭たんまり用意せな。その分きっちり願い事叶えてもらわな。ワテは出さんけど」
「出さないと思った。Eみが出すお賽銭でちゃっかりご利益にあやかろうとしてるんでしょ。俗っぽいなぁ」
「そうや。世俗に塗れ生きとる。聖に逃げたりはせん。ワテは極楽トンボな考えは出来ひん人格なんや」と、興に乗って話を続けようとしとるのに、「へぇ~、S吉みたいなの、極楽トンボと呼ぶのかと思ったょ」と、ええところで遮った。
「今日は蜻蛉かいな。ワテが安楽で苦労無いように見えるか?そもそもEみはいつもはワテを猫みたいと云うくせに」
「S吉は猫舌、猫手だからねぇ」
「だからって、それだけで猫扱いはひどいでえ」
「猫撫で声も出すでしょ」
「お前様かて出すやないか」
「それだけじゃないね」
「どこがや」と迫ったら、暫く考えて笑いながら云うた。「S吉、猫まんま好きでしょ」
「ま、確かにな」と、納得してしもたワテやった。
「あっちにも行ってみよう」と、Eみさんが向かったのは奇岩ちゅう瑞光石。周りは樹木に囲まれ、その上では鳥がさえずっとった。
「あれが奇岩?」
「奇岩に祈願するんや」
あっさり駄洒落は無視し、Eみさんは後ろへと行った。
「こっちにも狛犬居るょ。庚申塔群三基だって。何て書いてあるの?」
「意地悪しとらん?」
「高尚な趣味は持ってても、教養は持ってないんだあ」
「天王さまぐるり巡って満足したやろ?そろそろええやろ」
「S吉飽きたんだね」
「秋田も青森も、一通り見たやろ。さあ、帰るか」と、彼女の顔を覗いて反応見た。
案に相違して、Eみさんは従順に頷いて云うた。「付き合ってくれて有難う。駅の方へ行こう」
{ワテの努力分かってくれてよかったわ}と安堵し、云うた。「こちらこそ面白いもん見せてもろた」
しかし、Eみさんには魂胆があったんや。
Eみさんは地図見ながらスタスタ歩き出した。
「行きと違う道を行くんか。分かっとるの?」
「任せて。大船に乗った気分でいいから」彼女は住宅街の細い道をあっち曲がりこっち曲がりして歩いて行くんや。
まだ、その時もトラップに気が付いてなかったワテやった。
「もうすぐだからね」
JRの常磐線沿いに出たら、香ばしい匂いが漂って来よる。「この辺りに鰻屋があるんやなあ。そうや、ここって・・」ワテはハッと気が付いた。ちゅうか思い出した。{5年程前、当時付き合うとったガールフレンドWみさんに連れて行かれたごっつう旨い鰻屋や!}それで、慌てて云うてん。「すぐそこが回向院なんや。ちゅう事はEみ、ここ小塚原やでえ!」そう大仰に驚いた仕草して云うたんや。
けど、Eみさんは全然感心示さぬのや。「Eみちゃん、ここが罪人の首と胴がお別れした小塚原刑場やでえ~」と、彼女を怖がらせて去らせようと試みたが、Eみさん、稲荷神社のある旅館風の建物の前に来て、立ち止まって動かぬのや。
門構えからして入るの躊躇させる鰻屋の前で、彼女はワテの前で仁王立ちしとる。敷地の奥の玄関見ると、下がった暖簾には「尾花」と書いてある。
「こないな半端な時間なのに列が出来とるな。他ならぬ鰻やからあの人達食う迄に大分待たされるわ。辛いやろな。ほな、回向院見に行こか。吉田松陰や橋本左内が葬られとる」と、云い終わった途端、急にEみさんがワテの手を引いた。列の最後尾に並ぼうとするんや。
「知らなかった、老舗の「尾花」?よかったょ、並んでる人まだ少なくて。夕食に美味しい天然鰻食べようね」
ワテ、「やられた!」と呟いて、財布の中確認した。
「どうしたのぉ、神社にお参りするといい事あるね。待ってる時間期待膨らむねぇ」と、Eみさんはクールな顔で云うた。