10年のキセキ(126) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日9月23日は、2014年、日テレ系「ミヤネ屋」でBABYMETALが報道され、2019年、米ミズーリ州カンザスシティー公演@Uptown Theaterが行われた日DEATH。

2020年2月23日、BABYMETALはUK・ロンドン公演を行った。
その直前、ロンドンでは、マスクをしてバスに乗った日本人女性に対して、「あなたはどこの国の人?」と問いかける女性がいて、「日本人」と答えると、「中国人でしょ?コロナウイルス持ってるんでしょ?しゃべらないで!子どもにうつるから早くバスを降りなさい」と難詰される事件が起こっていた。
当時の欧米には、風邪やインフルエンザに罹っていなくても、流行期にはマスクをするのがエチケットという「常識」はなかった。マスクをしているのは病院から逃げ出してきたに違いないと思われたのだ。
ロンドン市内のホテルのフロントには、中国、シンガポール、日本、韓国、マレーシア、タイ、ベトナムなどアジア諸国の名前が並び、「これらの国から来た客はイングランド保健局に申告するように」との告示が貼りだされていた。確かに2月23日時点では、イギリス国内の「感染者」は9人に過ぎず、中国(77,042人)、韓国(602人)、日本(132人)、シンガポール(89人)、タイ(35人)、マレーシア(22人)、ベトナム(16人)は水際対策の対象だというのは理解できる。
2020年1月20日に横浜港を出港したイギリス船籍のクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号は、1月25日に香港で下船した乗客が武漢ウイルスに感染していたため、2月3日に横浜港に入港しても乗客乗員を上陸させず、2月5日早朝から、症状の見られない約3,700人を14日間、検疫することとなった。
当時BBCは、日本の岩田健太郎氏がYouTubeに英語でアップした「船内の防疫状況は酷い」という動画を引用して、「武漢ウイルスに関する日本政府の対応は杜撰である」と報道していた。これによってイギリスでは、日本も、中国と並んで新型ウイルスを広めた当事国のようにイメージされていた。
だが、ダイヤモンド・プリンセス号の検疫は順調に行われ、3月1日に全員が下船した。「感染者」は延べ706人、死者は4人だった。イギリスのボリス・ジョンソン首相は3月15日に安倍首相に対して直接電話で謝意を表明した。
逆に3月中旬になると、イギリス国内の「感染」は爆発的に拡がり、5月末には「感染者」274,766人、「死者」は38,489人に達した。
ボリス・ジョンソン首相自身、3月27日に武漢ウイルス陽性であることが判明したのち、高熱を発し、一時集中治療室に入った。だが、のちにPCR検査のコミュニティ・スクリーニング実施を推進したイングランド保健局では、PCR検査陽性者が回復後に交通事故で亡くなっても「武漢ウイルス死」に認定していたことが判明した。
一方、日本の「感染者」は5月末時点で16,884人、死者は892人にとどまった。
この差は、「コロナ最大の謎」とされ、日本人のマスク着用や手洗い・うがいの習慣が奏功したといわれた。
冒頭のイギリス人女性がマスクを着用していた日本人女性を難詰したのは、何重にも及ぶ「勘違い」だった。
2020年2月23日時点では、のちにこうした不可解な事態が自国で起こるとは思いもせず、中国で発生した「未知の殺人ウイルス」の蔓延を恐れて報道が過熱し、アジア人に対する差別感情さえも生まれていたのが当時のロンドンだった。

会場のEventim Apolloは、かつてハマースミス・オデオンと呼ばれていた。
あのクイーンの「オデオン座の夜」の舞台であり、1980年にはYMOがライブを行っている。
収容人数は5,000人。2019年6月にAcademy Brixton公演を行っているからか、なかなかSOLD OUTにならなかったが、いざ当時になると正面入り口にSOLD OUTの文字が輝いていた。


開演前の場内写真を見ると、二階席も、ピットフロアも密集状態である。武漢ウイルス禍を考えると奇跡のようだった。
セットリストは以下のとおり。

1.FUTURE METAL
2.DA DA DANCE
3.ギミチョコ!!
4.Shanti Shanti Shanti
5.BxMxC
6.神バンドソロ~Kagerou
7.Oh! MAJINAI
8.メギツネ
9.PA PA YA!!
10.Distortion
11.KARATE
12.ヘドバンギャー!!
13.Road of Resistance
アベンジャー:岡崎百々子
神バンド:Chris Kelly(G)、Clinton Tustin(B)、Anthony Barone(D)、C.J. Masciantonio(G)

「FUTURE METAL」が始まると、ピットの観客がリズムに合わせて「Hey!Hey!Hey!…」と合の手を入れる。これまでになかった現象だ。この曲にはドラムスもギターリフもないテクノそのものだ。
だが“第二の故郷”ロンドンのメイトさんたちは、「未来のメタル」を受け入れているのだ。
巨大スクリーン前に銀河神バンドのメンバーがスタンバイすると大歓声が上がる。
機械音を残して、曲が終わると、青いサーチライトが点滅し、三人が登場する。断続的なイントロに三人の姿がシルエットで映るたび、会場からは大歓声。口笛、拍手。
スクリーンが赤く燃え上がり、「DADADANCE」が始まる。


この曲はダンサブルなユーロビートのフォーマットだが、ちゃんと激しいドラムスと、中音域を強調したヘヴィなギターリフが入っている。やはりこれはメタルの未来形なのだ。「♪BABY BABYべいびーめろっ!」「フォー!」に合わせて、最前列はもちろん、ピット後方でも、二階席でも観客の頭がうねるように揺れている。オーソドックスなメタルではない。だが、これがBABYMETALなのだ。2014年にそれを受け入れてくれたのは、他ならぬロンドンThe ForumとAcademy Brixtonの2公演だったではないか。だからここは第二の故郷なのだ。
3曲目「ギミチョコ!!」。「Give me…」のグロウルが流れると会場はさらにヒートアップする。曲が始まった瞬間、ステージの左右で、これまでの会場ではなかったパイロの炎が上がった。その炎に照らされたピットでは、すさまじいモッシュが発生した。
間奏部SU-が「Hey!ろんどーん!」と叫ぶと、観客席から「ウォー!!!」というものすごい声援が起こる。
MOAと岡崎百々子が上手、下手に分かれ、拍手を促している。その笑顔がスクリーンにアップになると、またも客席から大歓声が起こる。凄いパワーである。
シタールの音色が響き、4曲目「Shanti Shanti Shanti」が始まる。今回の汎ヨーロッパツアーでは、この曲にノレない会場があったことも事実だが、ロンドンでは2019年6月に披露していることもあって、全く問題なかった。


客席は、SU-のインド風歌唱、MOA、百々子のインド舞踏風ダンスを楽しみながらも、「♪ドン、ドン、ドン、ドン…」というヘヴィな二拍子でヘドバンを続け、「♪ライララライララ…」とシンガロングする。三拍子パートになると、観客は「ウォー!」と大拍手をしたあと、三人の踊りに合わせて三拍目に「Hey!」と合いの手を入れ、手拍子を続ける。観客全員がBABYMETAL流ボリウッドメタルを楽しんでいた。
続いて5曲目「BxMxC」。機械音が響き、スクリーンに日本語の文字が浮かんでは消える。この曲も電子音に交じってちゃんとヘヴィなギターリフがついている。観客は「B!M!C!」と叫びながら、SU-の日本語ラップとMOA、百々子の激しいダンスを見つめるが、「♪Wanna wanna wanna」「Be!」「♪Want some want some want some」「Be!」には確実に合いの手を入れる。


日本語ラップ+テクノ+メタル+Kawaii+表現としてのダンス。もちろん歌詞やスクリーンの日本語の意味はわからない。だが、ロンドンの観客は、メタルの本質が、トータルな表現を通じて伝わってくるエクストリームな感情であることをちゃんと理解していた。“メタルの本場”の称号は伊達じゃないのだ。後半のSU-のアカペラパートでは大歓声が沸き、口笛、拍手が止まらなかった。
6曲目は「Kagerou」。この日のChris Kellyは、ソロの後半にスケールアウトしたフレーズを入れ、それを受けたCJもアウトなフレージングを続けた。なんとなく藤岡神を意識している感じ。
そこへ三人が肩をゆすって入ってくるとまたも歓声が沸く。
SU-のエモーショナルな歌唱と、スクリーンにアップになるMOAのしなやかなダンスと妖艶な表情に、会場から感嘆の声が上がり、じっとしていられない観客は、ピットでおしくらまんじゅうモッシュを続けた。
7曲目、スクリーンにヨアキム・ブローデンのいかつい姿が映り、「♪ナイナナナイナイナイナイナイナイ…」と曲が始まる。「Oh! MAJINAI」である。


二階席からのファンカム映像では、ピットでは観客がニコニコ笑いながらモッシュしており、二階席の観客も巨大アニメーションとクルクル踊る三人とピットの観客を同時に見ながら、やはり手拍子を打って楽しんでいるのがわかった。ヨーロッパでは「Oh!MAJINAI」は無条件で楽しめる曲であり、シングルカット、MVを公開すれば「ギミチョコ!!」級の大ヒットになったかもしれないな。もったいナイ!
8曲目は「メギツネ」。「♪きーつーねー、きーつーねーわーたーしーはーメーギツネー…」のSEが流れると、会場はまたも「イェー!」の大歓声に包まれる。スクリーンにはギャラクシーカラーのキツネ様。ピットは7弦ギターの7弦と6弦を使ったヘヴィなC#mのパワーコードに合わせて「Hey!Hey!Hey!」と合いの手を入れながら、エネルギーを充填していく。和楽器の「♪カラリンコン!」でMOAと百々子が狛キツネポーズをとり、客席にキツネサインを突き刺すと曲が始まり、キツネ火を思わせるピッキングハーモニクスが響くと、ピットはMOAの透き通る「ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」の掛け声に合わせてジャンプ、モッシュ、右手を突き上げるなどのアクションで狂熱状態となった。
間奏部、キツネ面を被ったSU-をはさんで、MOAと百々子がまた何か言い合って笑顔が弾ける。そしてSU-は「It’s good to be our second home…Hey! ろんどーん!」と叫ぶ。「やっぱり第二の故郷はいいわね…」と言っているのだ。
もちろん観客席は大騒ぎ。ファンカムや映像作品でよく見る古参メイトさんの顔に笑顔があふれる。「1!2!123!Jump!」から再び熱狂のお祭りタイム。すさまじいノリである。
このセトリでは、お祭りはまだ続く。9曲目「PAPAYA!!」のイントロが鳴った瞬間、客席は「パッパパパヤー!」と叫び、タオル振りが始まった。ステージ左右ではまたもパイロの炎。
二階席から見ると、SU-の「んJump!んJump!んJump!…」の煽りを受けて、ピットフロアは最後方まで観客がジャンプし、タオルを振っている。汎ヨーロッパツアー最高の盛り上がりである。さすがロンドン。
熱気の余韻が残る場内に、短いインターリュードから「♪ウォーウォーウォーウォー…」というコーラスが流れてくる。10曲目「Distortion」である。細かい襞のようなDjentのギターリフにマーチのようなドラムスが絡み、三人がパキパキしたリズムで踊る。
「♪Give up Give up」のグロウルは、2018年のDownloadや、2019年6月のロンドン公演とは違い、アーチエネミーのアリッサ・ホワイト・グラズによるものに変わっている。バックバンドも銀河神バンドに変わっているし、ダンサーはマッスル姉さんでも鞘師里保でもなく、岡崎百々子だ。
だが、そんな細かいことより、小神様を失い、YUIが長期欠場していた2018年、悲壮感に満ちていたこの曲が、今はどんなことがあっても前へ進むのだという力強い確信に満ちていることが嬉しかった。当時、最新シングルカット曲だったこの曲の「♪ウォーウォーウォーウォー…」のコーラスは、海外まで追っかけて行ったメイトが、心の中で「がんばれ、がんばれ」と叫びながら、唯一BABYMETALを励ますことのできたパートだった。
あの時期を乗り越えたからこそ、今のBABYMETALがある。だから、次の11曲目「KARATE」がセトリで連続しているのは偶然ではない。「Distortion」と「KARATE」は対になったのだ。
蒼い照明の中、三人がきれいに腕をそろえる。ヘヴィなリフが響き「KARATE」が始まる。ピットの観客はMOAの「♪セイヤ!セ、セ、セ、セイヤ!」「♪ソイヤ!ソ、ソ、ソ、ソイヤ!」「♪押忍!」まで正確に合いの手を入れた。


スクリーンでは、同時CG合成で、三人の身体が燃え上がっている。
「♪セイヤソイヤ戦うんだ拳をもっとココロをもっと…」の歌詞に、二階席で飛びはねている少年がいた。
間奏部、三人が倒れるシーンではマンチェスター同様、ピットの観客がフロアに座り込んだ。三人が肩を組んで立ち上がり、SU-が「Everybody Jump!」と叫ぶと、一斉にジャンプする。ロンドンのメイトは心折られるほどのダメージを受けても立ち上がり、前進するBABYMETALと心を合わせているのだ。
握りこぶしをキツネサインに変えて掲げ、それを胸にしまい込むラストシーンでは、ベビメタ愛に溢れた大声援が起こった。
場内に不穏はオルガンと雷鳴のSEが流れ、12曲目「ヘドバンギャー‼」になる。
この曲はBABYMETALの「成長」を象徴する曲である。METAL GALAXY WORLD TOURでこの曲がセトリに入ったのは、Darksideから立ち上がり、より強く、大きく成長するための宣言である。
MOAの「Head Bang!Head Bang!」という煽りに、オデオン座のすべての観客がヘドバンで応える。頭を上から下へ動かすのは、世界各国共通の「肯定」である。「そうだ。ガンバレ、BABYMETAL!」ヘドバンがここまでポジティブな意味を持つのはBABYMETALだけである。
フィニッシュ曲はもちろん「Road of Resistance」。
三人がBABYMETAL旗を担いで登場すると、客席から大歓声が沸く。SU-が客席を分けるしぐさをすると、ピット中央に巨大なWODが形成される。「1234!」とMOAがカウントし、曲が始まった瞬間、WODに観客がなだれ込み、すさまじいモッシュが繰り広げられた。


シンガロングパートでは「♪ウォーウォーウォー…」の大合唱。
そして「♪命が続く限り、決して背を向けたりはしない…」のパートになっても、客席から歓声が止まない。「♪そう、ぼくらの未来on the way」のあとのSU-の叫び「ろんどーん!」を聴いた瞬間、涙があふれた。
「♪ぼくらーのーレジスターンス!」でMOAと百々子が笑顔で拳を突き上げた。
最初から最後まで、ロンドンの観客はベビメタ愛に溢れ、熱狂していた。
ロンドン大勝利。
次回は、北欧最後のメタル大国フィンランド。
(つづく)