10年のキセキ(125) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日9月21日は、2015年、World Tour 2015 in Japan@Zepp Sapporoが行われ、FM802「REDNIQS」に出演し、2019年には、米ミネソタ州セントポール公演@Myth Live Event Centerが行われた日DEATH。

まずはニュースをいくつか。
NHK-World制作の音楽番組「Songs of Tokyo」で、10月10-11日に放送されるであろう「Songs of Tokyo Festival 2020」の出演者リストに、YOSHIKIやHYDEと並んでBABYMETALの名前があるという「噂」が、一部海外ファンの間で広まっている。
「Songs of Tokyo Festival 2019」は2019年9月12-13日にNHKホールで収録され、NHK-Worldで2019年10月~11月に、NHK総合とBS4Kで2020年1月に放送されたが、「Songs of Tokyo Festival 2020」が行われるという情報は、「Songs of Tokyo」公式サイトには掲載されていない。したがってこれはあくまで海外ファンのベビメタロスから来る願望と考えた方がいいだろう。

昨夜9月20日、東京・渋谷のスクランブル交差点の街頭ビジョンで、欅坂46の改名後のグループ名が「櫻坂(さくらざか)46」となることがサプライズ発表され、深夜の冠番組『欅って書けない』中のCMでもその瞬間の映像が流れ、本日9月21日午前6時に公式サイトで正式発表となった。
欅坂46の公式ツイッターには、「欅坂46は10月12日(月)、13日(火)のラストライブを持ちまして活動休止し、10月14日(水)より「櫻坂46」として活動していきます。」とあったが、肝心のメンバーがどうなるのか、欅坂46のコンセプトとどう変えていくのかといった情報は伝わっていない。
ベビメタファンとしては、さくらと言えばさくら学院でしょという余計なツッコミを入れたくなるけどね。

9月21日付オリコンDVD&BDランキングが発表され、『Legend-METAL GALAXY』は、DVD2位、BD3位で総合2位だった。
同じ週のDVD&BD総合ランキングは以下のとおり。
1位乃木坂46『ALL MV COLLECTION2~あの時の彼女たち』(DVD1位、BD1位)
2位BABYMETAL『Legend-METAL GALAXY』(DVD2位、BD2位)
3位ラブライブ『LoveLive! Series 9th Anniversary ラブライブ!フェスBlu-ray memorial BOX』(BD2位)
4位Perfume『8th Tour 2020 “P Cubed in Dome”』(DVD3位、BD4位)
5位BTS『BTS World Tour ‘Love Yourself:Speak yourself’ Japan Edition』(DVD5位、BD10位)
6位欅坂46『欅坂46 Live at 東京ドーム~Arena Tour Final』(DVD9位、BD6位)
7位King & Prince『King & Prince Concert Tour 2019』(DVD6位)
8位乃木坂46『ALL MV COLLECTION~あの時の彼女たち』(DVD14位、BD6位)
9位欅坂46『欅坂共和国2019』(DVD10位、BD9位)
10位ヒプノシスマイク『Division Rap Battle 5th Live@Abema TV Six Shots until the Dome』(DVD15位、BD8位)
このほか、BDだけのリリースで、BiSの『HEART-SHAPED BiS IT’S TOO LATE EDiTiON NO AUDiENCE LiVE』が5位になっている。
BABYMETALはBD部門で2014年の『Live at Budokan』から『Legend-S-BAPTISM XX』まで連続1位だったが、前作の『Live at the Forum』は3位だった。なおオリコンのランキングは一般発売分の集計なので、THE ONE限定版は含まれていない。

「10年のキセキ」のつづき。
2020年2月22日、BABYMETALはイギリス・マンチェスター公演を行った。
マンチェスターは産業革命の中心地である。18世紀末、蒸気機関を利用した力織機が発明され、石炭を使った製鉄技術も進歩して機械化が進んだ。石炭の産地とマンチェスターを結ぶ運河を走る蒸気船、港町リヴァプールまで運ぶ蒸気鉄道といった交通機関の発達によって、原料を全世界の植民地から輸入し、加工して輸出することでイギリスは世界帝国に発展した。現在でも、周辺都市を含めたグレーター・マンチェスターは、ロンドン圏に次ぐ人口を有し、第二の経済圏を形成している。
2016年、レッチリUKツアーの前座のときは、マンチェスターArena(21,000人収容)で、2日間公演だったが、今回はCreeperを前座に起用したヘッドライナー公演で、会場は3,500人収容のO2 Apolloである。

カーディフの倍以上の大きさだが、チケットはSOLD OUTしており、ピットエリアはもちろん、2階席も満員だった。
セットリストは以下のとおり。

1.FUTURE METAL
2.DA DA DANCE
3.ギミチョコ!!
4.Shanti Shanti Shanti
5.BxMxC
6.神バンドソロ~Kagerou
7.Oh! MAJINAI
8.メギツネ
9.PA PA YA!!
10.Distortion
11.KARATE
12.ヘドバンギャー!!
13.Road of Resistance
アベンジャー:岡崎百々子
神バンド:Chris Kelly(G)、Clinton Tustin(B)、Anthony Barone(D)、C.J. Masciantonio(G)

「FUTURE METAL」が流れると、「近未来メタルアイドルユニット登場!」という感じがする。
2017年までの「BABYMETAL DEATH」は、オカルト的というか、邪教的な「日出づる国のメタル魔法少女」だったが、考えてみれば2つともジャパニメーションに対して欧米人が抱くイメージを借用しているともいえる。同じ主人公に新しい仲間が加わって、アニメ新シリーズが始まったような感じか。「This ain’t Heavy Metal」というオートチューンのアナウンスも、アニメの一シーンと考えれば違和感はない。
続いて「DA DA DANCE」のイントロが繰り返され、スクリーンの前の三人のシルエットが浮かび上がると、会場に大歓声が湧きあがった。この日マンチェスターの外気温は6℃~11℃、しかも雨が降っていた。待ち続けた観客の熱い気持ちが伝わってくる。
スクリーンが真っ赤に燃え上がり、曲が始まると、「ドンツクドンツク…」の4つ打ちのリズムに、中音域を強調したゴリゴリのメタルギターのリフが醸し出すリズム手拍子で応えながら「♪フォー!」に合わせてScreamする観客が多い。ファンカム映像にはWembley Arenaのライブの後に、YouTubeで涙ながらに感動を語っていたイギリス人メイトさんのジェス&エマさんの顔も見える。


そもそもBABYMETALがメタルの本場で受け入れられたのは、日本の少女たちが頑張ってオールドスクールなメタルをやっているからではなく、メタルの歴史に敬意を払っていることが伝わるくらい卓越したパフォーマンスを披露しつつ、メタルの概念を拡張したからである。

そもそもオープニング曲のタイトル「FUTURE METAL」は、マンチェスターにほど近いバーミンガム出身のロブ・ハルフォード(Judas Priest)が、2016年のAPMA's共演後のインタビューで、BABYMETALを指して「ここにメタルの未来がある」と言ったことに由来する。
そこに気づけばBABYMETALらしさを進化させた『METAL GALAXY』も楽しめるのだ。
3曲目はお馴染みの「ギミチョコ!!」で、ピットではすさまじいモッシュが発生した。
間奏部、MOAと岡崎百々子が満面の笑みで手拍子を促す中、SU-が「ヘイ!まんちぇすたー!」と叫ぶと、満席の観客は「Yeah!!!」と絶叫した。やはり第二の故郷である。
北欧とドイツ語圏、ベルギー、ウェールズでは好評だったが、オランダとスコットランド・グラスゴーで観客の反応がイマイチだった4曲目の「Shanti Shanti Shanti」も、イングランドのマンチェスターでは、観客が手拍子を打ちながら「♪ライララ、ライララ…」とシンガロングし、三拍子になるシークエンスでも大歓声とともにピットではモッシュが継続するなど、旧植民地インドの音楽&舞踏をメタルに融合したこの曲を楽しんでいた。
この差異をぼくなりに分析すれば、次のような仮説が考えられる。
イングランド人にとっては、イギリスがインドを植民地化したことは遠い歴史上の出来事であり、遠い東洋の島国である日本人の少女たちが「新しいメタル」としてインド音楽を取り入れることは、単純に「面白い」。
だが、イングランドに征服され、イングランド人が主導するイギリスが世界帝国化することを複雑な心境で眺めていたスコットランド人や、イギリスに対抗して、同じ名前の国策企業「東インド会社」を設立してインドネシアを植民地化し、太平洋戦争で日本軍に駆逐されたオランダ人にとっては、「日本人がインド音楽を取り入れた曲をやること」に対して、なんらかの心理的抵抗感のようなものがあったのではないか。
いや、BABYMETALのライブに足を運ぶ世代・階層の人々はそこまで世界史的な知識があるわけではなく、単に曲を知らなかっただけではないかという可能性も当然ありうる。
ぼくが考えすぎなのかもしれないが、世界で唯一の被爆国日本のヒロシマ出身のSU-METALをリードボーカルとするBABYMETALという存在は、そういう世界史上の「過去」のいきさつを超えて、音楽を通じて東西を「ひとつ」にする戦いを進めているのだと思いたい。
5曲目、ダークな曲調の「BxMxC」は、グラスゴー以来、イギリスの観客には大好評で、マンチェスターでも盛んに声援が飛び、SU-のアカペララップパートはライブの見せ場になっていた。イギリス人にとっては意味不明の日本語の羅列は、ジョイス的な意味で「面白い」のだろう。
6曲目。銀河神バンドのアドリブソロでは、上手のC.J.がスケールアウトした速弾きから、ややエモーショナルなフレーズにつなげ、少しだけソロ構成に変化をつけた。大事件というわけではないが、ライブツアーを追っている身としては「おッ?」と思わせた。三人が肩をゆすって入ってきて、歌パートに入ると、観客が「♪ユラユラユーラ…」のサビで楽しそうに笑いながらモッシュしていた。スクリーンには魂を込めて歌うSU-や表現として歌詞の意味を伝えようとしてしなやかに踊るMOAの姿がアップになっていたが、イングランドの観客は「鑑賞」の態度ではなく、ライブに「参加」する意識が強いように思う。
7曲目は「Oh!MAJINAI」。「♪ナイナナ、ナイナイ、ナイナイナイ…」のイントロが始まり、スクリーンにヨアキム・ブローデンが大写しになると、大歓声が沸き、観客はニコニコ顔で手拍子を打ち、ヘドバンしながら踊り狂うシーンとなった。三人はステージで手をつないでクルクル踊る。楽しい。ポルカ+メタルは、ヨーロッパで大勝利を収めたといっていい。


しかし「♪大変だ、大変だ、見つからない、出てきてよ!お願い!」という歌詞は「突然いなくなった人」、つまり藤岡幹大氏やYUIMETALのことを言っているのではないか。2番では英語になり、「Oh my gosh, oh my gosh, We’ve hit a dead end, No where to go…」(神様、神様、私たちは袋小路に突き当たってしまいました。もうどこへも行けません)という絶望的な状況を表現している。
だが、それをヨアキム・ブローデンが「♪何でもナイ、気にしナイ、もったいナイ」と言って勇気づけ、キーキー声のMOA扮する「魔法使い」は、「♪Let’s make a wish, please, please ,please」と言って、ナイナイ尽くしを「オマジナイ」に切り替えて乗り切ろうとした。それがこの曲の意味だ。

必要なものが「ナイ」からこそ頑張れる。ヨアキムがツルハシを持って働くのは、辛い状況を乗り越えるには、日々の労働で新しい地平を切り拓くしかないというメッセージである。
つまり、これは2018年に起こったSU-とMOAの心象風景なのだ。幕張での初披露の際、「紙芝居」で光GENJIの「パラダイス銀河」=シャカリキモッシュッシュがモチーフになったのは、「銀河」つながりしか思い浮かばないが、この曲の歌詞を考えれば、けっこう重い意味を持っていることがわかる。
セトリ“Bセット”では「Starlight」が入るが、セトリ“Aセット”では、「Shanti Shanti Shanti」が入るので、「Starlight」は入らない。その代わり、この「Oh!MAJINAI」が必ずセトリに入った。もちろん、欧米の観客には歌詞の意味はわかるまい。それでいい。鎮魂こそ祭り=祀りのエネルギーである。だから三人はニコニコ顔で踊るのだ。
8曲目は「メギツネ」。お祭りパワーで、「いなくなった人」を鎮魂する。その意図がこの曲順に現れている。
もちろん、ピットでは、観客がMOAの澄み渡る「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」に合わせて踊り出した。ものすごい密集度である。
間奏部、銀色のキツネ面で顔を隠すSU-をはさんでMOAが首をぴょこんと右に曲げると、岡崎百々子も同じように首を曲げ、笑い転げながら煽りに入っていった。
この場面でのMOAは、SU-に向かって変顔をしたり、現地語の確認をしたり、夕食のおかずを言っていたりする。ある都市では「唐揚げ!唐揚げ!」と言っていたという遠征組の証言もある。要するにこのシーンは、ライブにおける三人の「エンジョイ度」のバロメーターとなっている。マンチェスターの盛り上がりは最高である。


SU-の煽りは定番。「Hey!まんちぇすたー!(大歓声)How are you feeling tonight?We are so happy to be here!Are you ready to jump? Are you ready---?」「1!2!123!Jump!」
そこからは男女入り乱れてのジャンプ&モッシュのお祭り状態になった。
9曲目もお祭りが続く。イントロの「パッパパパヤー!」と同時に、SU-が「まんちぇすたー!」と叫び、「んJumpんJumpんJump…」と煽ってから歌に入った。「PAPAYA!!」である。MOA、百々子も上手、下手で激しく踊る。北欧・ドイツ語圏と同じように、ピットの観客がジャンプしながら踊っている。
オランダやスコットランドでは、この曲でも地蔵が出現した。だが、マンチェスターは大丈夫だった。
11曲目「KARATE」の間奏部の小芝居では、三人が倒れて起き上がるまでの間、ピットの観客は何も言わないのにフロアに座り込んだ。三人が肩を組んでよろよろと前進し、SU-が「Everybody, Jump!」と叫ぶと、観客は立ち上がり、一斉にジャンプした。BABYMETALと心を合わせているのだ。


2017年12月から2019年6月までの1年半、BABYMETALは、「KARATE」の歌詞と同じく「♪涙こぼれても」「♪心折られても」「♪苦しくなって立ち上がれなくなっても…」の状態だった。それを日本人メイトと同様によくわかっていたのが、BABYMETALの“第二の故郷”、イギリスの観客だったのである。
フィニッシュは、ここイギリスで生まれた「Road of Resistance」。三人がBABYMETAL旗を担いで登場すると観客は敬意と歓呼をもって迎えた。SU-がピットを分ける仕草をすると、フロア中央に大きなWODが形成され、MOAの「1234!」の掛け声で曲が始まると、すさまじいモッシュが起こった。


シンガロングパートの「♪ウォーウォーウォーウォー」の大合唱は会場の天井を揺るがし、曲終了後の「We are?」「BABYMETAL!」のC&Rで、すべての観客がキツネサインを掲げた。
終演後、ライブに参加したファンが「Waited years to see this live. Unreal energy. Genuinely got emotional」(このライブを見るため何年待ったことか。信じがたいエネルギー。マジ泣いた。)が印象的だった。
次回はいよいよロンドンだ。