最後の夜 | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日3月26日は、2016年、WOWOWライブ「BABYMETAL Road to WEMBLEY ~ Live & Interview ~」放送決定が発表された日DEATH。



■武漢ウイルス関連データ
●累計
・感染国 200か国・地域 うち1000人以上28か国、うち100人以上89か国
・世界 感染確認者414,179人/死者18,440人
・日本 感染確認者1,307人(200か国中26位)/死者45人(200か国中15位)
●10万人当たり
・世界 感染確認者5.37人/死者0.239人
・日本 感染確認者1.03人(89か国中73位)/死者0.036人(89か国中52位)
●現在治療中(感染確認者-回復者-死者)
・世界286,251人 日本952人(200か国中28位)
出典: WHO「Situation Report」、厚労省「新型コロナウイルス感染症の現在の状況について」、NHK「NEWS WEB」

昨日アップしたチャートで、PCR検査で陽性になった方は、外出厳禁・即入院としたのは、こんなケースがあったからだ。
2月6日にハワイから帰国した名古屋市在住の60代男性が、2月14日に愛知県で3例目=日本人1例目の感染確認者となった。翌2月15日、妻の60代女性にも感染が確認され、4例目となった。
この60代女性は活動的な方で、ハワイから帰国後、発症前まで通っていたスポーツジムから2月16日以降、次々と感染確認者が出て、最終的に11人にのぼった。
その中の一人である70代女性が2月25日に感染確認された19例目になり、さらに彼女の濃厚接触者だった蒲郡市在住の70代女性が3月3日に33例目の感染確認者となった。
同日、この33例目の70代女性の夫である80代男性が34例目として感染確認され、翌日3月4日には同居していた息子である50代男性(以後A氏)が42例目、孫と思われる30代男性が43例目として感染確認された。
A氏は感染が確認されたあと、愛知県による自宅待機要請に従わずに外出。蒲郡駅北口近い大衆酒場を訪れ、10分ほどの飲食中に「コロナをばらまいてやる」と発言したため、驚いた店員が警察に通報したが、防護服を着た警察官が到着したときには、A氏はすでに近くのフィリピンパブに移動していた。警察官はフィリピンパブの店内でA氏を保護、ただちに隔離入院させた。
A氏はフィリピンパブに約40分間滞在しており、接客した従業員のうち、一人の30代フィリピン人女性が発症し、3月12日に感染確認された。A氏が立ち寄った2店舗は一時営業停止になり、消毒後に営業を再開しているが、愛知県警はA氏に対する業務妨害容疑での立件を検討していた。
ところが、A氏には基礎疾患があり、入院中に病状が悪化して、3月18日に亡くなった。
なお、A氏の母親である33例目の70代女性は、自覚症状が出る前の2月19日に蒲郡市体育センター、2月20日、26日に三谷公民館を訪れていた。ここからの感染確認者は出ていないが、両施設は消毒処理がなされた。
また、A氏の父親である34例目の80代男性はあん摩マッサージ指圧師の資格を持っていないにも関わらず、個人的に出張整体を行っており、2月中に施術を受けた人の中から60代女性と70代女性の感染が確認された。
さて、この経緯を紹介したのは、日本中に衝撃を与えたA氏やこの家族をあげつらうためではなく、また、この家族のほか多くの人に感染したウイルスをハワイから持ち込んだ4例目の70代女性の責任を問うためでもない。ウイルス感染は誰にでも起こり得ることで、感染が確認されるまでの行動には、基本的に責任がない。
A氏の基礎疾患は肝細胞癌だった。
基礎疾患のある人は致死率が高いといわれる「恐怖のウイルス」に、たまたま同居する両親が罹患し、即日入院となった。A氏にも陽性判定が出たが、無症状だったため、翌日の入院まで自宅待機を要請された。残された時間はあとわずか。今夜は酒でも飲んで、楽しい時間を過ごしたい。
家で飲むならいいが、外で飲めば、他の人にうつしてしまう。そんな身勝手は許されない。日本中が怒るのは当たり前だ。ぼくも最初にこのニュースを聞いたときには驚き、あきれた。
だが、A氏が亡くなったというので改めて情報を集めてみると、A氏だけの責任ではないと思うようになった。
感染確認されたとき、「他の人にうつしてしまう」という道徳観を保ち続けられる人ばかりとは限らない。
愛知県の大村知事は、3月19日の会見で「すぐに入院させなかったのは、NHKが報道したように隔離入院させる病院が見つからなかったためではなく、陽性確認が夜だったため、保健所の判断で翌朝入院の手はずを整え、自宅待機を要請した。NHKには抗議した。」と述べた。A氏の迷惑行為について、知事は一切触れず、記者も質問しなかった。
知事の説明が本当だとすれば、問題の本質は、A氏が肝細胞癌という致命的な基礎疾患を持っていたにもかかわらず、A氏を信用してすぐに入院させなかった保健所のミスジャッジということになる。
もちろん、まさか感染者が自ら外出して他人にうつすような真似はしないだろうというのは普通の日本人の感覚ではある。だが厳しく言えば、防疫に携わる方は、世の中には色々な人がいるということを考慮せねばならない。
同居している両親である70代女性および80代男性の感染確認がなされた翌日、A氏は息子と思われる30代男性とともに帰国者・接触者外来を受診している。
前述したとおり、この時点でA氏は無症状だった。
同居家族の感染が確認されたので、「積極的疫学調査」方針から県・保健所が要請したのだろう。A氏はそれに素直に従っている。
以下はぼくの勝手な推測である。
検査の結果陽性が出たが、翌朝入院するまでの自宅待機を要請されたところで、魔が差した。
今のところ自分はピンピンしている。「発症しても8割の人は回復する」「8割の感染者はほかに感染させない」と専門家は言っている。一方で、「基礎疾患のある人は重症化しやすい」とも言われている。
「自分は若いから大丈夫だ」という気持ちと「基礎疾患がある」という不安が交錯する中で、「最後の夜」という言葉が浮かび、それに突き動かされた。
「コロナをばらまいてやる」という妄言は、不安の裏返しであるとともに、自分の理不尽な運命に対する呪詛だったのだろう。
結果、本当に3月4日は、A氏にとって「最後の夜」になってしまった。死の床でどれだけ苦しんだことだろう。ご冥福を祈る。
陽性反応が出てすぐに強制入院させても、その後の経緯を見ればA氏が亡くなるのを防げたかどうかはわからない。だが少なくともA氏がたった50分間の「最後の夜」を楽しんだために、接客したフィリピン人女性が感染することはなかったし、立ち寄った店舗が営業停止に追い込まれることもなかった。
国民がむやみに恐れてPCR検査に殺到し、医療崩壊が起こることが最も危険だが、医療リソースを確保するのは、感染者に接触して陽性と診断された患者をすぐに隔離し、早期治療するとともに、感染がそれ以上広がらないようにするためである。
だが、日本は法治国家であり、基本的人権を尊重する国だから、防疫に関しても法律に準拠しなければならない。
武漢ウイルスは、1月28日に『感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律』(以下感染症法)に定める指定感染症になっている。
感染症法の条文で、医師や自治体の行為ではなく、直接ぼくら国民に関わる規定は、
・検体の採取(第十六条-3)
・健康診断(第十七条)
・就業制限(第十八条)
・入院(第十九条)
などであり、移動の自由などの基本的人権にかかわる「就業制限」や「入院」については、都道府県知事が「勧告」し、それに従わない場合には強制することができるとなっている。
ただし、感染していない人の外出制限や集会・イベントの自粛、A氏のケースのように感染確認者であっても「自宅待機」については規定がなく、「要請」しかできない。だから愛知県警も感染症法違反ではなく、業務妨害で立件するしかなかったのだ。

―引用―
第十九条 都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該感染症の患者に対し特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関に入院し、又はその保護者に対し当該患者を入院させるべきことを勧告することができる。ただし、緊急その他やむを得ない理由があるときは、特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関以外の病院若しくは診療所であって当該都道府県知事が適当と認めるものに入院し、又は当該患者を入院させるべきことを勧告することができる。
2 都道府県知事は、前項の規定による勧告をする場合には、当該勧告に係る患者又はその保護者に対し適切な説明を行い、その理解を得るよう努めなければならない。
3 都道府県知事は、第一項の規定による勧告を受けた者が当該勧告に従わないときは、当該勧告に係る患者を特定感染症指定医療機関又は第一種感染症指定医療機関(同項ただし書の規定による勧告に従わないときは、特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関以外の病院又は診療所であって当該都道府県知事が適当と認めるもの)に入院させることができる。
―引用終わり―

ぼくは、今回の事態を国家存亡の緊急事態とは見ていない。
中国産ウイルスが自分の身体にとりつくのはイヤだが、感染者数、死亡率などを「スペイン風邪」や季節性インフルエンザと比較すれば、「インフォデミック」に過ぎないと考えているので、安倍首相が感染症法に準拠することを第一に考え、コロナ特措法による緊急事態宣言を行わないのは、むしろ好ましいと思っている。これはいわゆる保守言論人の意見とは違うかもしれないが、ここでは触れない。
ちなみに、感染症法十六条は、指定感染症に関する積極的な情報公開を定めている。
―引用―
十六条 厚生労働大臣及び都道府県知事は、第十二条から前条までの規定により収集した感染症に関する情報について分析を行い、感染症の発生の状況、動向及び原因に関する情報並びに当該感染症の予防及び治療に必要な情報を新聞、放送、インターネットその他適切な方法により積極的に公表しなければならない。
―引用終わり―

そのため、政府・厚労省・各地方自治体は、この法律に則って、PCR検査数、陽性判定者数、無症状者数、有症状者数、入院数、死者数、退院者数など、毎日欠かさず定時に、かつ正確に情報公開している。
ぼくは、毎日WHOの資料で全感染国の感染者数、死者数をチェックしているが、毎日きちんと更新されていない国は多い。その意味でも、日本は世界一マジメなのである。
「日本は感染者数や死者数を隠蔽している」とか、「検査数をもっと増やせ」などというのは、「日本下げ」目的の言いがかりに過ぎない。
感染症法に規定のない「自宅待機」については「要請」しかできない。その網の目を潜って、「最後の夜」を楽しんだA氏のようなケースを防ぐには、陽性判定が出たらすぐに、法的強制力のある入院措置をとることを徹底するしかないだろう。
そのためには、絶対に医療崩壊を起こさず、各自治体は、すぐに陽性判定者を隔離入院させられるベッド数を確保しておくことだろう。
状況はシビアだが、日本ならできる。