汎ヨーロッパツアー10都市目ティルブルフ公演 | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
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★今日のベビメタ
本日2月18日は、2016年、NHK放送センターにて「BABYMETAL革命 世界と戦う少女たち」の収録が行われた日DEATH。

2月17日19:00~(日本時間2月18日3:00~)、METAL GALAXY WORLD TOUR 2020十都市目、オランダ・ティルブルフ公演が行われた。
ティルブルフ(Tilburg)はオランダ南部に位置する美しい町で、ベルギーのブリュッセルから北へ、バスで2時間20分の距離にある。19世紀には毛織物業で栄えたが、現在は、祝祭の町と呼ばれるほど音楽祭が盛んだという。
会場のPoppodium 013は1998年に3つの施設を統合してオープンした新しい施設で、2つのホールを持ち、メインホールの収容人員は3,000人となっているが、場内の様子を見ると、5,000人くらい入っているのではないかという気がする。
BABYMETALにとって、オランダは2016年6月にナイメーヘンのFortarockに出演したのが最初で、Darksideの2018年には6月5日・6日の2日間、ユトレヒトで単独公演を行っているので、三度目のお目見えとなる。今年も6月に再度ユトレヒトでの単独ライブがある。大人気バンドになっているわけだ。
セットリストは以下のとおり。

1.FUTURE METAL
2.DA DA DANCE
3.Distortion
4.PA PA YA!!
5.BxMxC
6.神バンドソロ~Kagerou
7.Starlight
8.Oh! MAJINAI
9.メギツネ
10.ギミチョコ!!
11.KARATE
12.ヘドバンギャー!!
13.Road of Resistance

メンバー:SU-METAL、MOAMETAL、アベンジャー:岡崎百々子
神バンド:下手ギターChris Kelly、ベースClint Tustin、ドラムスAnthony Barone、上手ギターCJ Masciantonio

「FUTURE METAL」が流れると、美しいヨーロッパの町に、「近未来からやってきたハイパーメタルユニットが当地に飛来した」という感じになる。
2018年までは、BABYMETALのオーバーチュアは「BABYMETAL DEATH」であり、「日出づる国からやってきたメタル魔法少女戦士」というギミックを前面に押し出していた。
だが「FUTURE METAL」は、魔法/召喚という宗教っぽさが消え、テクノ/転送といったSFっぽさが強調されている。
もちろんそれもギミックなのだが、さまざまなジャンルの音楽をメタル化する『METAL GALAXY』のコンセプトには適合している。だからこそ、その「メタル」とは、オールドスクールなヘヴィメタルを意味しない。
スクリーンに燃える炎とともに「DA DA DANCE」が始まった。この曲は、メタルの対極にあるユーロビートを、ディストーションのかかったギターのリフやテクニカルなギターソロが支える新しいスタイルを提示している。
合いの手やモッシュ、シンガロングなど、観客参加はメタルの特徴のひとつである。
4つ打ちのダンサブルなリズムと「BABY、BABY、ベイビーめろっ!」「フォー!」という合いの手やツインテールを振り乱して踊るMOAのラップもまた、BABYETALがやれば、ヘドバンと相性のいいメタルになる。
会場が広いだけに、BABYMETALにオールドスクールなメタルを期待しているのか、話題のKawaiiメタルを期待しているのか、はたまた女性ボーカルの幻想的シンフォニックメタルを期待しているのか、会場の雰囲気はこれまでの小箱とはやや異なり、熱狂するピット前列付近と静観する後方の客との温度差がある感じ。
3曲目は「Distortion」。セトリは、MOMOKO登場3回目にして「Bセット」に変わった。2018年のDarksideでは、ユトレヒト2Daysを行っているから、オランダ人ファンには当時のメインチューンだったこの曲は思い出深いだろう。グロウルがアリッサに代わっているのがわかるだろうか。
間奏部になると大歓声があがる。MOAとMOMOKOが手拍子を促す。SU-は厳しい表情のままだ。フェスで8万人のオーディエンスを熱狂させているのだから、小箱から広い会場に変わったとて関係ない。大観衆を圧倒的なオーラで屈服させるのがクイーンの真骨頂なのだから。
4曲目は「PA PA YA!!」。これは初見の客でも“予習”してきているだろう。SU-が「Are you Ready?」と叫び、「んJump!んJump!んJump!…」と煽ると、タオルを振ってジャンプするステージ近くのファンだけでなく、後方の客間でも「パッパパパパヤー!」の合いの手に合わせて頭を上下に動かす人が広がる。
5曲目は「BxMxC」。ラップメタルは珍しくないが、そこにテクノ、メタルクイーン、ダンス、日本語という要素を加えたこの曲は、やはり新しい。スクリーンには、日本語だけでなくローマ字の単語も出るので「B!M!C」とか「(What some what some what some)Be!」とか合いの手を叫ぶ観客も増えてきた。だが後方の観客は、またもや静観の構え。楽しむまでには至っていない。
銀河神バンドソロが始まる。6曲目「Kagerou」へのブリッジである。わかりやすい曲調・スタイルのためか、客席から、プレイヤーのアドリブが終わるたびに盛大な拍手が起こる。2018年には神バンドソロはなく、SU-のソロ曲だった。BABYMETALの楽曲は、ブルースロックの影響が薄かったが、2018年のスタイルは、ユラユラ身体を動かすSU-の歌唱スタイルも含めて、アーシィな雰囲気が漂っていた。だが今は、編曲がよりヘヴィになり、MOAとMOMOKOによる激しく妖艶なダンスが加わってBABYMETALらしい表現になった。言い換えれば様々なメタルのスタイルを提起する『METAL GALAXY』のバリエーションのひとつになったということだ。
会場が青い照明につつまれ、遠くから「♪ララララーラーラーラー…」というコーラスが聴こえる。7曲目「Starlight」である。この曲は2018年にはまだなかった。『METAL GALAXY』収録曲では、一番シンフォニックメタルに近い。2016年のFortarockでは小神様がギターを担当していた。あのテント会場でBABYMETALに出会ったオランダ人ファンにとっては、この曲はひときわ重要な意味を持っているだろう。
祈りのようなコーラスで曲が終わると、一転してコケティッシュなメタルポルカの8曲目「Oh!MAJINAI」が始まる。広い会場なので、スクリーン1面ではちょっと弱いが、巨大なヨアキム・ブローデンが画面の中で「♪なんでもなーい、きにしなーい、もったいなーい」と叫び、その前でニコニコ顔の三人がクルクルと踊るこの曲は、やはり楽しい。
観客席は「ナイナナナイナイナイナイナイ」の大合唱で、クラウドサーフも出現した。
9曲目は「メギツネ」。これはもうBABYMETALのライブに来る人ならだれでも知っているはずで、会場はさくらさくらのイントロに合わせて、「イェイ!イェイ!」と叫び声をあげる。和楽器のカラリンコンという音色とMOA、MOMOKOの狛キツネポーズから曲が始まると、「ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」の合いの手に合わせて客席はジャンプ大会となる。
間奏部、SU-は「Hey!てぃるぶるーふ!」のあと、オランダ語で客席を煽る。これに客席から大きな歓声が上がる。いよいよ盛り上がってきました。
10曲目は、BABYMETALの代名詞「ギミチョコ!!」。スクリーンに「Give me…Give me…」の文字が映し出される間から、もう客席のエネルギーは高まり始め、「Give me Chocolate!」で曲が始まると、モッシュ、クラウドサーフが発生。後方でもキャッ組席がうねっている。なんのことはない。ライブの初めの頃静観しているように見えた観客は、曲を知らなかっただけなのだ。
11曲目。これも代表曲の「KARATE」。観客は日本ほどではないが「イェア!イェア」と合いの手を入れる。スクリーンの中の三人がCGリアルタイム合成で燃えあがる演出は、ぼくらにはおなじみだが、オランダ人には面白かったらしい。後半、SU-の「Everybody, Jump!」の煽りで、観客席が揺れた。
フィニッシュは、「Road of Resistance」。三人がBABYMETAL旗を担いで登場すると大歓声が上がる。SU-が客席を分けるしぐさをすると、ピット中央に大きなWODができる。MOAの「1234!」の掛け声で、ピットの左右から観客が走り込んで激突する。ベビメタ流のサークルモッシュではなく、「正調モッシュ」である。
「We are?」「BABYMETAL!」のC&Rは、どんな会場でも最後にはキツネサインを掲げさせてみせるという気概にあふれていた。
終演後、公式ツイッターにはオランダ語で「Bedankt!」(ありがとう)のメッセージがアップされた。
最初に書いたが、BABYMETALは2014年の欧米デビュー時、「BABYMETAL DEATH」をオープニング曲とし、「日出づる国からやってきたメタル魔法少女」というギミックを使っていた。だが、BABYMETAL の場合、そのギミックがギミックにとどまらず、どう見ても幼くKawaii容姿をしたSU-の歌唱力やYUI、MOAの激しいダンスパフォーマンス、白塗りの神バンドの演奏力が、「本物のメタル」であることを証明するという二重構造が魅力の源泉になっていた。
それは「アイドルを捨ててロックに挑戦」するとかいう他のアイドルユニットとは正反対のアプローチだった。アイドルが生バンドを導入し、「ロックだ」と強調すればするほどその未熟さは顕わになってしまう。だが、あどけない顔をして「ライブ中は神が降臨してるんです」とギミックを強調しながら、卓越したパフォーマンスを見せつけることで、その「本物」性が浮き彫りになっていく―。それがBABYMETALだった。
今回のツアーでは「FUTURE METAL」がオープニングとなり、「近未来のハイパーメタルユニット」というギミックに変わったが、それは様々なジャンルの音楽をメタル化したユニークな「BABYMETALの音楽」を訴求するものである。
その演奏、歌唱、ダンスパフォーマンスは「本物」であり、観客は驚嘆を持って受け入れるしかない。だが、「本場」のメタル王国であるイギリスで、かつてと同じような評価を受けられるか。正念場である。
中1日を置いて、2月19日(日本時間2月20日)いよいよUKラウンドに突入。皮切りはスコットランドの古都グラスゴーである。