ヘヴィメタルへの道(10) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日4月30日は、BABYMETAL関連で過去大きなイベントはありませんでしたが、平成最後の日DEATH。

●1980年~1983年
1979年の『科学冒険隊タンサー5』は、ブラスが入らない初めてのヒーローアニメ主題歌だったのだが、その音像はハードロック/メタルではなく、フュージョン系だった。その大きなポイントは、ダンサブルな前ノリのリズムにある。
2013年12月のLegend-S-SU-METAL聖誕祭は、「ヘドバンギャー!!」が2通りの編曲で演奏された。オープニングはシンセサイザーを主体としたインダストリアル/ユーロビートの形式で、小節の1拍目にアクセントが置かれる「♪ドッドッドッドッ…」というリズム。
ライブ終盤に演奏されたのは、小節の2拍目、4拍目にアクセントが置かれる「♪(へド)バン(へド)バン…」という通常のメタル仕様。
フュージョン/ダンスミュージックか、HR/HMなのかの決定的な違いは、このリズム感にある。

BPMが遅くても、ロックンロール/ロック/メタルは、

必ず裏拍(8ビートの2拍目、4拍目、6拍目、8拍目)にアクセントが入る。でないとヘドバンできない。

BPMが速くても、表拍(16ビートの1拍目、3拍目、5拍目、7拍目、9拍目、11拍目、13拍目、15拍目)にアクセントが置かれるなら、フュージョン/ダンスミュージックである。

ブラス、ストリングスの代わりにシンセサイザーが多用され、16ビートの表拍で奏でられるのが1980年代の音なのである。それは主題歌の世界にも浸透してくるが、一方では、串田アキラ、影山ヒロノブというロック的な声質、歌唱法を持ったアニソン歌手も登場してくるし、ディストーションのかかったギターソロもガンガン入るようになる。ロックが勝つかフュージョンが勝つか。そのせめぎあいが行われていたのが1980年代の特撮ドラマ・アニメ主題歌の世界だった。
<1980年>
『無敵ロボ トライダーG7』シンセ・パーカッション、ブラスから入るイントロ。リズムは「Smoke on the Water」。
『タイムボカンシリーズ タイムパトロール隊オタスケマン』パロディだけに、ブラスから入る典型的な70年代アニメ仕様で、リズムはロックを保っている。
『宇宙大帝ゴッドシグマ』シンセ・パーカッション、ブラスから入るイントロ。歌はささきいさおだが、リズムは後半表拍のダンスミュージックになっている。
『伝説巨神イデオン』ギターのアルペジオから入り、ブラスから勇壮な主題歌になるが、このリズムは「ドンツードンツー」でフュージョン風。過渡期という感じがする。
『宇宙戦士バルディオス』ブラスから入る壮大なイントロ。フルオケだが、リズムはロック。
『とんでも戦士ムテキング』電子音からブラスのイントロだが、ギターのカッティングが前面に出たロックである。コミカルなものの方が、むしろ70年代アニメの雰囲気を継承している。
『鉄腕アトム(第2作)』主題歌はオリジナルと同じだが、典型的な表拍&シンセのフュージョン・アレンジになっている。「♪こころ(休符)やっさしー」とシンコペーションを入れるのが、当時はカッコいいと思っていたのだ。
『鉄人28号(第2作)』行進曲+少年少女合唱団。
『宇宙戦艦ヤマトIII』基本的には第1作から変わらない。行進曲+ささきいさお。
『あしたのジョー2』フュージョンになった80年代歌謡曲風あしたのジョー。荒木一郎。
『電子戦隊デンジマン』ブラスのイントロからギターのリフに入るが、「ジン、ジン、ジンギスカン」のリズムである。歌は成田賢。
『ウルトラマン80』電子音、ブラスに続き、勇壮なフルオケが始まるが、やっぱりリズムは表拍で、フュージョン風になっている。歌はTALIZMAN。
『仮面ライダー・スーパー1』ブラスのイントロ、メロディは悲壮だが、「ウンチャカウンチャカ…」リズムはやっぱり表拍で、フュージョンクサい。
<1981年>
『最強ロボ ダイオージャ』水戸黄門をロボットアニメにしてしまうという荒業にどうしても笑いがこみ上げる。音楽的には70年代アニメのブラス、ストリングス、悲壮なメロディという定番が、フュージョン風のリズムに乗って展開する。
『タイムボカンシリーズ ヤットデタマン』フルート風のイントロから展開する主題歌は完全なフュージョン。
『ゴールドライタン』シンセ、ギターのカッティングが前面に出る。リズムは表拍。
『百獣王ゴライオン』勇壮なブラスのイントロから電子音。だが始まったリズムは表拍のフュージョン。歌は水木一郎。
『タイガーマスク二世』ブラス、ギターのリフがカッコいい。リズムは8ビートだが、ギターのブリッジの入り方がちょっぴりフュージョン風。歌は水木一郎。
『戦国魔神ゴーショーグン』電子音から始まる勇壮なメロディ。リズムはYMOの「ライディーン」に似ているが、後半ブラスが入って長調になると定番の裏拍ロック風になる。
『六神合体ゴッドマーズ』ギターのリフから入る。ブラスに聞こえるのはシンセである。リズムは「ヘドバンギャー!!」と同じ。サビの歌をユニゾンするギターがカッコいい。ロックといってよい。
『銀河旋風ブライガー』ナレーションから、ギターのリフがイントロ。ブラスは入っているが、ちゃんと裏拍。間奏のギターソロもカッコイイ。歌はたいらいさお。
『太陽の牙ダグラム』オープニングには珍しい壮大なフルオケから入るバラード。歌は麻田マモル。
『太陽戦隊サンバルカン』ブラスのイントロからギターのカッティングが入る。リズムは8ビートだが今聴くとムード演歌に近い。いたるところにギターのブリッジが聴けるし、串田アキラの歌が迫力ある。
<1982年>
『戦闘メカ ザブングル』ブラス+ギターのイントロ+ストリングス。歌は串田アキラ。「ザブングル!ザブングル!」からのギターのユニゾンチョーキング(「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の最後)がカッコいい。
『タイムボカンシリーズ 逆転イッパツマン』ブラス+ティンパニーのイントロ、マイナーのメロディだが、リズムは表拍のフュージョン風になっている。
『機甲艦隊ダイラガーXV』ブラスのイントロから、歌に入るとホルンをブリッジにしたフルオケにワウギターのカッティングという70年代アニメの定番である。
『科学救助隊テクノボイジャー』ブラスのイントロから、マイナーな曲調だが、編曲はフュージョンが強い。リズムは前半前ノリ、後半はストリングスが入ってからは裏拍になる。
『魔境伝説アクロバンチ』ハーモニカのイントロ、歌に入ると、フェイザーをかけたギターのカッティング。ブラス、ストリングスが入る後半はちゃんと8ビートになる。山形ユキオの歌は迫力がある。
『太陽の子エステバン』イントロはギターのメロディだが、リズムはフュージョン。だが歌に入ると「♪パン・パパン・フー」のリズムになり「おや?」と思っているとサビはやっぱりフュージョン。1980年代アイドルソングに限りなく近い。歌は「夜明けのマイウェイ」のパル。だからか。
『銀河烈風バクシンガー』ギターのリフから始まるご機嫌な8ビートのロックンロール。最後までブラス、ストリングスは入らない。「♪強く強く抱いてほしいHold me tight, Hold me tight」ってロボットアニメ主題歌か?という軽い疑問は残るが…。
『超時空要塞マクロス』ギター、ストリングス、ティンパニー+ピアノのバラードイントロ。ギターのブリッジの速弾きに反応してしまう。勇壮なフルオケ+ドラムス編成だが、ギターがふんだんに使われている。歌は藤原誠。
『サイボットロボッチ』コミカルなギャグアニメ。主題歌は砂東由香里によるお色気たっぷりなロックンロール。ここまでくると、ロックンロールが「一昔前」を表現してしまう。
『スペースコブラ』『ルパン三世』と同じヤングアダルト向けフュージョン。作編曲:大野雄二、歌:前野曜子である。
『レインボーマン』前作とほぼ同じだが、編曲はややフュージョン風になっている。
『宇宙刑事ギャバン』ギターのイントロからのリズムは、ブラスを使った黒っぽいディスコサウンド。ロッド・スチュアート「アイムセクシー」風といえないこともない。歌は串田アキラで、ブリッジ、間奏にはカッコいいギター。
<1983年>
『未来警察ウラシマン』オーケストラにギターのリフでイントロが始まる。リズムは完全に表拍の80年代風フュージョンロックである。歌はHarry。
『亜空大作戦スラングル』ブラスに電子音、フルオケのイントロからのリズムはやはりフュージョン系のリズム。近藤真彦「スニーカーぶるーす」を思わせる。スラップベースがブリッジになっている。
『聖戦士ダンバイン』スラップベースからイントロが始まるが、シンセとブラスが80年代風表拍のリズムで響く。ハスキーに歌うはMIQ。
『光速電神アルベガス』シンセ・パーカッションからのブラスのイントロだが、もう完全に表拍のダンスミュージック。
『装甲騎兵ボトムズ』ブラスのイントロから始まるが、歌に入ると完全な80年代ポップ。織田哲郎だからね。
『ななこSOS』吾妻ひでお原作の初アニメ。「世界征服」をもくろむ天才高校生科学者四谷の実験台として、超能力を身に着けた美少女ななこ。ギャグアニメだが、この設定はBABYMETALに継承されているのではないか。主題歌はもう80年代アイドルソングです。


『キン肉マン』ブラスのイントロに続き「ハッ!Go! Go! Muscle!」で始まる串田アキラの歌声は、ある世代なら誰でも脳内再生できると思う。リズムは「♪ドッツドッツドッツドッツ」という表拍になっているのがわかるだろう。
『パーマン(第2作)』電子音に続き、「♪パーマンパーマンパーマン」という歌が始まるが、リズムはジャズの4ビート。平和な感じがする。
『銀河疾風サスライガー』電子音に続いて、ギターのリフがイントロとなるが、歌に入ると表拍の80年代風。途中「♪パン・パパン・フー」が入る。間奏部はブルーノートのギターソロ。
『イーグルサム』ロサンゼルスオリンピック公式マスコットのアニメ。作曲筒美京平、編曲佐久間正英で、歌うはジャニーズのアイドルグループ「イーグルス」である。
『タイムボカンシリーズ イタダキマン』スパニッシュギターのイントロ。歌に入ってもマンボのリズムで、アイドル歌手の名前が織り込まれた歌詞。
『魔法の天使クリィミーマミ』魔法少女にアイドル出世要素を加えた大ヒット作。太田貴子が歌う主題歌もアイドルソングそのものである。「♪スキしてスキしてスキして」
『超時空世紀オーガス』ドラムスとギターのコード弾きのイントロに続き、ロック・バラードが始まるが、盛り上がったサビはちゃんと8ビート裏拍のメタルになっております!
歌うはSHOGUNに在籍していたケーシー・ランキン。このアニメのサウンドトラックはLP→CDとして発売された。音楽に力を入れていたのだ。


『サイコアーマー ゴーバリアン』ブラスのイントロ。ストリングスのブリッジから歌に入ると、80年代風表拍でマーチとなるが、ちょっとバイキングメタルっぽくもある。
『機甲創世記モスピーダ』アンディ小山の歌は迫力があるが、タケカワユキデ作曲だからどうしても80年代フュージョン風。
『特装機兵ドルバック』ギターのリフから始まるイントロだが、歌に入ると表拍のシンセサウンドで80年代風のバラードポップになってしまう。
『キャプテン翼』ギターのリフとブラスで、「♪ダッシュ、ダッシュ、ダッシュ!」と始まるオープニングは、かなりロックっぽいがリズムだけが表拍。
YouTubeで見られるスペイン語版の主題歌「Super Campeones」は、正真正銘のメタルである。これがメッシ、クリスティアーノ・ロナウドを生んだと思うと感慨深い。
『銀河漂流バイファム』「HELLOW, VIFAM」。6/8拍子のバラードだが、最後までブラスやストリングスは入らない。クイーンかエイジアみたい。放送終了翌月に発売されたサウンドトラック『銀河漂流バイファム総集編』はオリコンLPチャートで最高10位を記録した。


『科学戦隊ダイナマン』スーパー戦隊シリーズの定番、爆発音、ブラス、ストリングスのイントロからマイナーメロディに入る特撮ドラマも、リズムは表拍になっている。
『宇宙刑事シャリバン』ブラスのイントロから、リズムは表拍というよりサンバ。串田アキラの歌は迫力があるのだが、どうしても80年代風の軽さが残る。
とりあえず1983年まで、アニメ、特撮ヒーロー物の主題歌を聴いた。
80年代に入るととにかく、リズムが表拍になってしまう。ギターの音はよりロックっぽくなり、中にはリフが曲を組み立てるものや、間奏部にけっこうな速弾きのソロが入っていたりする。
しかし、どうしても「♪ドッツードッツードッツードッツー」というリズムがメタルとは違う。いくらギターがかっこよくても、「YMCA」とか「ジンギスカン」とか「スニーカーぶるーす」とか「アイムセクシー」になってしまうのだ。
そんな中、『銀河烈風バクシンガー』は、不良っぽいロックンロールのカッコよさがあった。
そした、『超時空世紀オーガス』は、ほぼ完ぺきなプログレハード/メタルになっている。
https://www.youtube.com/watch?v=Kxdh6FCN_f8
また、『銀河漂流バイファム』も、クイーンもしくはエイジアを思わせるバンドサウンドだった。
https://www.youtube.com/watch?v=sGAieDXxGKY
なぜかこの3曲はバラード風のイントロから始まるのだが、ブラスやストリングスで迫力を出すのではなく、ディストーションのかかった大音量ギターのコード・ストロークの持つ壮大さや迫力、カッコよさが、ようやく子ども向けアニメの主題歌に導入されたといってよい。
もちろん、アニメ史的にも、『機動戦士ガンダム』『超空要塞マクロス』『超時空世紀オーガス』『銀河漂流バイファム』へと続く流れは、複雑かつSF的ストーリー展開、映像よる情景・心理描写の深みなど、ジャパニメーションの急速な進化を表している。
同時に、音楽的にも、60年代ロックンロールの導入→70年代ロックギターとブラス、ストリングス+アニソン歌手の登場→80年代表拍フュージョンサウンド→メタルの導入という流れになっていることがはっきりとわかる。
だが、80年代前半、メタルの導入はこの2作だけで、まだまだ圧倒的に80年代フュージョンサウンドが多に支配されていた。
(つづく)