ヘヴィメタルへの道(9) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日4月29日は、2017年、Red Hot Chili PeppersのUSAツアーSpecial Guestとして、最終日マイアミ(FL)American Airlines Arenaに出演し、チャド(D)、フリー(B)、RHCPスタッフ(Tr)が「ギミチョコ」に飛び入りしてくれた日DEATH。

●1973年~1979年
1972年以降、エレキギター、ベース、ドラムスにストリングス、ブラスを重ね、アニソン歌手に歌わせるという特撮ドラマ、アニメ主題歌のスタンダードが固まった。
ギターのサウンドも、クランチ、ファズ、ディストーション、ワウくらいではもう驚かないが、ここまで来たなら、本物のハードロック、ヘヴィメタルの主題歌があってもいいはずだ。
70年代特撮・アニメ主題歌の定番は、ブラスとストリングス、ときにティンパニーやマリンバで勇壮さを出すというものだが、いくらギターの音がそれっぽくなっても、どうしても「オーケストラ感」が残り、ロック「的」ではあっても、本物のハードロック、ヘヴィメタルとは音像が違うのだ。
世紀末以降の特撮ヒーロードラマ、例えば2000年にスタートした平成仮面ライダーシリーズ第1作の『仮面ライダークウガ』のOPは、ブラスやストリングスは影も形もなく、完全にヘヴィメタル/プログレメタルの曲調になっている。少なくとも、この番組を見て育った現在20代後半の男の子たちは、幼いころからヘヴィメタルサウンドに「カッコよさ」を感じていたに違いないのだ。
いったい、こういうヘヴィメタルサウンドが、日本の子どもたちの胸に刻まれていったのは、いつごろからなのか。
1972年まできたのだが、ここからはさすがにぼくも中学生になり、現役としては特撮ドラマやアニメを観なくなってしまったため、記憶に頼るわけにはいかない。
そこで、ヒーロー物に限定して、各年度の有名な特撮ドラマやアニメの主題歌の中から、ブラスとストリングスの入っていない主題歌を探していくという作業を行った。
しかし、これは思った以上に難儀だった。
アニソン歌手の歌はカッコいいのだが、ブラス、ストリングス、ティンパニーの入っていないアニメ、特撮ドラマの主題歌は、聴けども聴けども、なかなか登場してこないのだ。
<1973年>
『バビル2世』イントロからいきなりブラス。歌は水木一郎でギターのブリッジが所々入る。
『魔人ハンターミツルギ』いきなりストリングス。ギターはワウがかかっていてカッコいい。
『新造人間キャシャーン』セリフに続いてストリングス&ブラス。歌はささきいさお。
『イナズマン』いきなりブラス&ティンパニーだが、ギターは強烈なファズ&ワウ。歌は子門真人。
『キューティーハニー』イントロはいきなりストリングス。ギターはクリーンカッティング。歌はアニソン四天王の一人、前川陽子。
『仮面ライダーV3』いきなりブラスからのストリングス。歌は主演の宮内洋。
『ロボット刑事』いきなりブラス&フルートをフィーチャーしたフルオケ。
『ウルトラマン・タロウ』電子音から歌に入るブリッジはドライブのかかったエレキギターなのだが、ストリングス、ブラスが入ると行進曲となり、ギターはワウのカッティングになる。
『キカイダー01』いきなりブラスだが、ディストーションギターがブリッジに使われている。歌は子門真人。
『ジャンボーグA』いきなりブラス。歌は子門真人(谷あきら名義)
『流星人間ゾーン』いきなりブラス。間奏部はストリングス。歌は子門真人。
『行け!グリーンマン』地球の自然を公害から守る環境保護ヒーローなんだけど、先生!これは「軍艦マーチ」(ものほん)であります。
<1974年>
『スーパーロボットレッドバロン(2期)』イントロは、「ハイウェイスター」のイントロ風ドラムスとジョン・ロード風のオルガンがフィーチャーされ、ディストーションギターの音もかなりイイ。だが、歌に入るとストリングス、ブラス、ティンパニーが入ってきてしまう。


『チャージマン研!』行進曲風のフルオケ。
『ゲッターロボ』いきなりブラス。歌はささきいさお。
『グレートマジンガー』水木一郎の「♪ダッシュダッシュ」から、いきなりブラス&ティンパニー。
『宇宙戦艦ヤマト』ご存知雄大なフルオケ行進曲風+ささきいさお。
『仮面ライダーX』「♪セタップ!セタップ!」水木一郎歌だが、やっぱりブラス始まりですね。
『ウルトラマン・レオ』ブラス始まりだが、シンセ音が使われているのがちょっと新しいし、ギターのメロディが終始歌と並走する。
『仮面ライダー・アマゾン』「♪ア・マ・ゾーン!」からのホルン。歌は子門真人。ギターはワウのカッティング主体。
『電人ザボーガー』変身シーンからいきなりブラス。歌は子門真人。

 

追記:1974年10月に始まった『スーパーロボットマッハバロン』は、前作『レッドバロン』からのストーリー上の引継ぎはなかったが、主題歌「マッハバロン」は、作曲・編曲井上忠夫/歌すぎうらよしひろで、ブラスもティンパニーもストリングスもないHR色の強いロックンロールだった。フィンガー5の玉元晃や甲本ヒロト、ROLLYのカバーバージョンがある。ご指摘いただいたhisnosip-metalさんありがとうございました。
 

<1975年>
『勇者ライディーン』いきなりブラス。歌は子門真人。
『秘密戦隊ゴレンジャー』仮面ライダーと同じく、爆発、疾走するバイク、ブラス。ギターはワウ&キレのいいカッティング。歌はささきいさお。
『ゲッターロボG』いきなりブラス。
『宇宙の騎士テッカマン』いきなりティンパニー&ブラス。歌は水木一郎。
『UFOロボグレンダイザー』いきなりブラス。歌はささきいさお。
『鋼鉄ジーグ』いきなりブラス。歌は水木一郎。
『仮面ライダー・ストロンガー』いきなりブラス&ティンパニー。歌は水木一郎。
<1976年>
『大空魔竜ガイキング』いきなりブラス。
『マシンハヤブサ』いきなりブラス。歌は水木一郎。
『ゴワッパー5ゴーダム』いきなりブラス。歌は水木一郎。
『UFO戦士ダイアポロン』いきなりブラス。ギターはワウ。歌は子門真人。
『超電磁ロボ コン・バトラーV』いきなりブラス。ギターはワウ+ディストーション。歌は水木一郎。
『グロイザーX』いきなりブラス&ティンパニー。
『ブロッカー軍団Ⅳマシーンブラスター』いきなりブラス。
『マグネロボガ・キーン』いきなりブラス。歌は水木一郎。
『ザ・カゲスター』シンセ音に続き、ティンパニー。そこからブラスが入り、リズムはGSっぽい8ビートで、ギターはワウのカッティング&ブリッジのブルーノート。ちょっとコミカルタッチだが、男女変身コンビは斬新。
『バトルホーク』ブラス、ストリングス、マリンバを含むフルオケ構成。
『宇宙鉄人キョーダイン』いきなりブラス。ストリングスとギターのカッティング、マリンバも聴こえる。歌はささきいさお。
『超神ビビューン』イントロからAメロまで、ドラムスとサーフロックのようなエコーを利かせたギターの音がフィーチャーされ、「オッ!」と思うが、サビに入るとブラス、ストリングが入ってきてしまう。歌はささきいさお。
<1977年>
『ヤッターマン』変身ヒーローアニメのセルフパロディで、主題歌もブラス、ストリングスで迫力を出しているが、メロディは演歌調。よく聴くと意外にギターのブリッジやリフが多用されている。
『ジェッターマルス』手塚治虫原作で、明らかに低年齢向けの牧歌的内容。主題歌は4ビートで子どもが歌っている。
『合身戦隊メカンダーロボ』歌は水木一郎+少年少女コーラス。ブラス&ストリングスだが、ギターはサブやブリッジに頻出する。
『惑星ロボダンガードA』ブラスのイントロから、ギターのワウによるカッティングが前面に出てくる。サビはブラス&ストリングス。歌はささきいさお。
『超合体魔術ロボギンガイザー』いきなりブラスのイントロ。パーカッション付きフルオケ伴奏で、歌はささきいさお。
『氷河戦士ガイスラッガー』いきなりブラス。歌は水木一郎。
『超電磁マシーンボルテスV』アジアに輸出され、人気番組になった。フィリピン・クラブでの定番。歌は堀江美都子。
『超人戦隊バラタック』いきなりティンパニー。ストリングとブラスに電子音。歌は水木一郎。
『ルパン三世(新)』大野雄二による作編曲。演奏はジャズのビッグバンド編成。ブラスで始まり、シンセ音でブリッジを盛り上げ、「♪ルパンルパーン」という女性コーラス。メインメロディはアルトサックス→ストリングス→トランペット。ワウをかけたギターがバックで鳴る完全なジャズ・フュージョン。大人のピカレスクアクションという当初の企画を生かし、ヒーローアニメとは一線を画した主題歌だが、これが小学校高学年~高校生あたりまでの男子を夢中にさせた。音楽的にも、ハードロックより、フュージョンの方が大人っぽくてカッコいいかもというギター小僧の“躓きの石”にもなった罪作りな作品。
『超スーパーカーガッタイガー』スーパーカーブームに合体ロボ要素を加えたアニメ。バスドラの連打から始まるが、イントロはやっぱりブラス。
『恐竜大戦争アイゼンボーグ』円谷プロの恐竜三部作のひとつで、アニメと特撮が同居しているうえ、またもや男女合体で巨大化する。主題歌はブラスで始まり、歌は行進曲調で少年合唱団という、もはやアナクロ。
『ジャッカー電撃隊』スーパー戦隊の後継。ギターのカッティングとパーカッション、シンセが前面に出はするが、やはりサビはブラスとストリングが強い。歌はささきいさお。
『無敵超人ザンボット3』いきなりブラスのイントロ。歌は複数のコーラスグループが担当し、ちょっとR&Bのフィーリングがある。
『怪傑ズバット』ストリングスとブラスのイントロ。効果音に琵琶?の音が使われている。歌は水木一郎。
<1978年>
『宇宙海賊キャプテンハーロック』壮大なフルオケのイントロに続き、ギターはカッティングのみ。歌は水木一郎。ちなみにぼくの高校時代のバンドの名前は「キャプテンハードロック」だった。ああ恥ずかし。


『闘将ダイモス』電子音に続き、ブラスのイントロ。ギターはカッティングとブリッジのチョーキング。歌はささきいさお+少年合唱団。

『SF西遊記スタージンガー』松本零士によるアニメ設定。マリンバ、ストリングス、ブラス、フルートのフルオケ編成。ギターはカッティングのみ。歌はささきいさお。
『未来少年コナン』宮崎駿・高畑勲が演出。主題歌は池辺晋一郎の初アニメ作品で、アコーディオン、フルート、ストリングス、ギターのカッティングをメインに、ブラスはサビ部分のみという、明るく優しい感じのフルオケ。
『無敵鋼人ダイターン3』いきなりブラス「♪123!」とくるが、歌部分はオケ伴だが、ポリフォニックシンセサイザーが多用され、間奏部分ではクリーンなギターソロもある。作詞は富野由悠季による。
『宇宙魔神ダイケンゴー』七五調のナレーションからブラスのイントロ。歌は堀江美都子+コーラスで、ギターがブリッジに細かく入る。サビのあとのギターのブラッシング音(♪チャカコーン)がカッコいい。
『銀河鉄道999』歌はささきいさお。壮大なフルオケ+電子音だが、細かいカッティングのギターが入っている。
『科学忍者隊ガッチャマンⅡ』ストリングス+ブラスにアコースティックギターのカッティング。歌はささきいさお+少年合唱団。
『宇宙戦艦ヤマト2』第1作同様だが、編曲にはシンセが多用され、ややアップデートされている。歌はもちろん、ささきいさお
『新エースをねらえ!』ギターのメロディによるイントロ。歌に入ってもずっとカッティング。そこへストリングスとマリンバが重なり、サビに入るとブラスも加わる。
『UFO大戦争 戦え! レッドタイガー』いきなりブラス&ティンパニー。ギターはワウのカッティング。歌はささきいさお。
『西遊記』ナレーションの後、石から堺正章が飛び出してくると、ブラスもストリングスも入らないシンセ音で始まる「Monkey Magic」は、歌詞も英語。これは特撮ドラマとしても画期的ではないか。もちろん、メタルではなくフュージョンに近いが、とりあえずロックバンドのフォーマットである。


<1979年>
『サイボーグ009(新)』いきなりブラス+ティンパニー。ギターはワウのカッティング。歌は成田賢+こおろぎ‘73。
『未来ロボダルタニアス』ブラス主体の行進曲調。アナクロだが、歌の堀江美都子の伸びのある歌で、爽やかさや希望を感じる。
『機動戦士ガンダム』爆発音に続いて、シンセ・パーカッションの音、 池田鴻による「♪燃え上れ燃え上れ燃え上れガンダム…」の歌が始まるが、リズムは前ノリの16ビート(ドンツクドンツク)である。シンセ音は多用され、女性コーラスは『ルパン三世』みたいなR&Bハーモニーである。間奏部には一瞬、コーネル・デュプリー風のギターソロが入る。ガンダムは後世のアニメに多大な影響を与えたが、主題歌はHRでもHMでもなく、80年代フュージョンの匂いがするのだ。
『SF西遊記スタージンガーⅡ』いきなりブラス+パーカッション。ギターのブラッシング音(♪チャカコーン)がブリッジになっている。歌はささきいさお。
『科学冒険隊タンサー5』シンセ音+シンセパーカッション+ウインドチャイムで始まる。ストリングス風の音は入るが、これはシンセによるもので、ブラスは最後まで出てこない。ギターはフュージョン風にカッティングし、ベースはスラップ。間奏のソロもヴァイオリン風の音だがシンセである。ハードロックともメタルともいえないが、80年代風の音であることは間違いない。
『宇宙戦艦ヤマト新たなる旅立ち』編曲が若干違うだけで、初代、2と共通。
『科学忍者隊ガッチャマンF』電子音に続き、ブラスのイントロ。歌に入ると、フルートとギターがブリッジになっている。サビにはストリングスと少年合唱団。歌はささきいさお。
『闘士ゴーディアン』いきなりティンパニー&ブラス+電子音のイントロ。歌に入ると、ギターがブリッジになるが、メロディはどことなく演歌調。
『宇宙空母ブルーノア』いきなりブラス&ティンパニーのイントロ。歌に入るとストリングス+女性コーラス。
『仮面ライダー(スカイライダー)』いきなりブラスのイントロ。歌に入ると、ワウギターのカッティング。歌の終わりはティンパニー。歌は水木一郎。
結局、1970年代を通じて、ブラス、ストリングス、ティンパニーの入っていない特撮ヒーロードラマ&アニメの主題歌は、フュージョン風の『科学冒険隊タンサー5』のみだった。
1979年に、映画版『銀河鉄道999 Galaxy Express 999』が封切されたのだが、主題歌はゴダイゴによるもので、これにはブラス、ストリングスが入っていない。
『西遊記』の「Monkey Magic」もゴダイゴであり、当時の子どもたちの「ロックバンド」のイメージは、ゴダイゴだったかもしれない。
もちろん、この時点で世界の音楽市場は、ハードロックやプログレハードからパンク、NWOBHMへと進化していたのであり、リッチー信者のギター小僧から見れば、「ゴダイゴ?英語で歌ってるけど、ポップバンドだよね」という反発があり、なんで世間はHR/HMの良さを認めないんだというジレンマがあった。
ヘヴィメタルへの道は、まだまだ遠い。
(つづく)