メタルファンタジーとしてのPV(5) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日120日は、2012年、雑誌『SWITCH』に、BABYMETAL単体として初めてのインタビューとなるマーティ・フリードマンとの対談が掲載され、またKawaii girl Japanに初登場した日DEATH

 

19日に行われた第2回「My Little God」@洲本市文化体育館は、昨年に引き続き大村バンド、MICannonのほか、C4Jupiterが出演し盛り上がった模様です。ぼくは土曜日に仕事があり、どうしてもいけなかったのですが、ワインをガンガン飲みつつ、購入した昨年のDVDで故人を偲びました。

20日の展示会では、藤岡 父×大村 父による焼きそば販売、藤岡 母×大村 母によるタコ焼き販売、詰め放題みかん/玉ねぎ販売、藤岡家おにぎりなどの販売もあったようで、行きたかったなあ。出演者の皆様、参戦した皆様、お疲れさまでした。

 

Within Temptationの最新PVThe Reckoning feat. Jacoby Shaddix」(2018/09/24UL)は、まるでSF映画だ。一本の木もない荒野を、シャロン・デン・アデルを先頭に、白い服、白い旗を掲げた男たちが突っ切っていくと、その前に何十台ものクレーンのようなロボットの群れが待ち構えているのが見えてくる。クレーンの先端から赤いレーザー光線が射出され、何人かの男たちは捕らえられてしまうが、シャロンと二人の男はそこを潜り抜け、宇宙船の残骸が散らばっているところへ到達する。すると雲の中から巨大な円盤が現れる。

シャロンがひざまずくと、円盤はシャロンに向かって赤い光を放ち、シャロンは囚われてしまうが、それを見ていた白い服の男たちが旗を地面に突き刺すと、竿の先端から白い光が円盤に向かって放たれ、円盤は爆発して墜落する。つまり、シャロンは我が身を囮にして、円盤を落とすハンターだったわけだ。

何だろうね、これ。「Reckoning」とは、計算とか御会計とかいう意味だ。

オランダのシンフォニック/ゴシックメタルバンドWithin Temptationは、女性ボーカリスト、シャロン・デン・アデルと、現在プロデューサーとなっている夫のローベルト・ヴェスターホルト(G)によって結成され、SU-が生まれた1997年にアルバム『Enter』をリリースし、欧州ツアーを行うなど、鮮烈なデビューを飾った。

その後メンバーの学業やシャロンの就職などで休止期間を経て、2004年の3rdアルバム『The Silent Force』は、オランダでチャート1位、ダブルプラチナとなり、ドイツ、ベルギー、フィンランド、ポルトガル、スペインでゴールドディスク認定された。イギリス、日本、オーストラリアでもリリースされ、世界的な人気と評価を受けるバンドとなった。

2007年の『The Heart of Everything』は、オランダで1位、ベルギーとフィンランドで2位、スウェーデンで4位、ドイツとポルトガルで5位、スイスで8位を獲得。米ビルボード200では106位だったが、ロシアでゴールド、イギリスではシルバーを獲得し、ヨーロッパでの地位を不動のものとした。

2011年の6thアルバム『The Unforgiving』は、ロマノ・モレナー作のアメリカン・コミックスとタイアップし、ビルボード20050位を獲得。ヨーロッパのチャートでは、イギリスこそ23位だが、ベルギー3位、 チェコ4位、オランダ2位、フィンランド3位、ドイツ7位、ポーランド6位、ポルトガル3位、スウェーデン7位、スイス9位といったチャート成績を残した。日本ではオリコン36位だった。

2014年には、元ナイトウィッシュのターヤ・トゥルネンらがゲスト参加した『Hydra』をリリース。チャート成績は、母国オランダで1位、米ビルボード20016位、イギリス6位、ドイツ4位、オーストリア5位、ベルギー4位、チェコ1位、フィンランド2位、ポーランド4位、ロシア9位、スイス2位。日本ではオリコン22位に入った。

ちなみにこの年、BABYMETALの『BABYMETAL』がリリースされている。

母国日本では4位、米ビルボード200187位、イギリス103位、ドイツ95位、オーストリア69位、オランダ90位だった。

最新アルバムは『Resist』で、201921日にリリース予定。

この中のシングルカットで先行配信されているのが「The Rockoning feat. Jacoby Shaddix」である。

さて、Within TemptationPVである。

前回書いた「Stand My Ground」は、2004年の『The Silent Force』収録曲。

バイキングを思わせる船にのった女神の絵がクローズアップされる。それはどうやら中世から伝わる「秘密の書」らしい。女神がつけていたのと同じペンダントを持つシャロンが、神殿のようなところで、マンホールみたいなものにペンダントをはめ込むと、その「秘密の書」がせり上がってくる。夜の古風なビルの屋上で演奏するバンド。やがて、天から大粒の雨が降り、街はみるみる洪水に埋まっていく。そして、とうとう最後の場面は、「秘密の書」にあったように、シャロン一行は、一面海になったところを船に乗ってどこかへ去っていく。あの「秘密の書」は、世界を滅ぼす「洪水」と、そこから逃れる女神の予言だったのだ。

たぶん、現代の「何か」を象徴しているであろう「神話」をベースに楽曲を組み立てるWithin TemptationらしいPVである。

The Silent Force』からもう一曲「Memories」(2007/10/19UL)を見てみる。

古い西洋館にいる白い服を着た女。部屋は朽ち果て、ピアノには蜘蛛が糸を張っている。「あなたと時が終わるまで一緒にいたかった。」と歌う彼女によって、時間が逆戻りして、室内楽が奏でられる裕福で楽しい生活が再現される。だがそれは追憶の中だけのことで、切々と歌う彼女のバックは、メタルバンドに変わり、彼女自身も老婆へと変わる。要するにゴーストですな。

黒髪のシャロン・デン・アデルは美しく、歌唱はクリーンで時に、ベルカント風のソプラノでさえある。これが、Within Temptationがシンフォニックメタルである所以であり、ポルトガルやスペインでも人気が出た理由でもある。

2007年の『The Heart of Everything』収録曲「What Have You Done」(2009/10/27UL)は、男と暮らした部屋から鞄ひとつで出ていくシャロンが泣きながら男をなじる歌であり、残された男が部屋で荒れるというだけの、まるで演歌のような世界を、Nu-Metal風の激しい楽曲で表現したもの。

同じく「Frozen」(2009/10/27UL)は、金持ちの家庭で、DVの父親が娘に牙をむいたため、母親が彼を毒殺し、刑務所で娘への手紙を書いているというドラマ。これも悲しいテーマをストレートにメタルで表現している。

同じく「The Howling」(2009/10/27)は、美しい自然に囲まれた館で、はにかむ子どもに笑いかけるシャロンの手の中の蝶が、次の瞬間黒いサソリに変わり、戦争で燃え上がる廃墟の街でバンドが演奏しているというもので、これも「平和な日常がいつ壊れるかわからない」というストレートなテーマの映像である。

前作『The Silent Force』に比べると、より激しい曲調になっており、シンフォニック色からゴシック色が強くなっているが、あまりにもストレートなメッセージ性でちょっと胸焼けする。

2011年の『The Unforgiving』になると、PVのクオリティはぐっと上がる。

Faster」(2011/01/31UL)は、モノクロ映像で老婆が、おとぎ話を語り始めるが、やがてその目が黒目だけの不気味な姿に変わる。曲が始まると都会のビルの一室に、上半身裸の少年がよじ登っていき、部屋の中の物が吹き飛ばされていく。サラリーマン風の男が、シャロンあるいは見えない何かに、ものすごい勢いで引きずられていく。「Faster, Faster…」と歌うシャロンが怖い。最後は、霊安室のようなところから、立ち上がり出ていく濡れた足のアップ。画面には「To be continued」の文字。意味深。

Shot in the Dark」(2011/10/04UL)は、モノクロでバンドが演奏し、楽曲のすばらしさが堪能できるPVだが、「Fire and Ice」(2011/12/20UL)は、大天使ミカエルあるいは堕天使ルシフェルとおぼしき天使がゴシックの教会にやってきて、傷ついた体を神父に治療してもらい、翼が取れて女性の姿になるという物語で、シャロンもバンドも登場しない。

このアルバムでは、楽曲の完成度が上がり、かつPVも初期のような「神話性」が復活して、より緻密な表現になっているように思う。

2014年の『Hydra』は、さまざまなゲストをフィーチャーしたアルバム。

黒人ラッパーのXzibitを迎えた「And We Run ft. Xzibit」(2014/05/23UL)はネルソン・マンデラの言葉が浮かび上がると、異世界の丘のようなところで、女神のコスチュームをしたシャロンとバンドが演奏する中、遠くに見えるモノクロの機械工場のようなところに囚われたXzibitが、歌に励まされて鎖を断ち切り、工場をぶち壊すというSFファンタジー×ストリート=シンフォニックメタル×ラップというアニメのような世界が展開する。

元ナイトウィッシュのターヤ・トゥルネンをゲストに迎えた「Paradise (What About Us?) ft. Tarja」(2013/09/26UL)は、原発が壊れ、核汚染で廃墟と化した近未来の街が舞台で、防護服を着た二人の人間が、手作りで「放射能除去装置」をつくるというお話。

灼熱の砂漠のような荒野で、こけつまろびつ部品を運び、装置を組み立てる二人。やがて装置が完成し、それを天に向かって撃つと、恵みの雨が降ってきて放射能が洗い流され、再び植物が芽吹き始めるというストーリー。防護マスクを外した二人は、もちろん、シャロンとターヤを思わせるように女性である。

宇宙戦艦ヤマトか!と突っ込みを入れたくなるほど、プロットは陳腐だが、放射能除去装置が稼働した瞬間、ターヤとシャロンのベルカントが響き渡り、Within Temptationには珍しく、それにかぶさる速弾きのギターソロもあって、けっこう感動的である。

冒頭にあげた201921日リリース予定の『Resist』 の先行配信PVThe Reckoning feat. Jacoby Shaddix」(2018/09/24UL)も、基本的にはこのテーマの延長で、映画『Independence Day』のような世界観なのだろう。

壮大といえば壮大、子どもじみていると言われればその通りかもしれないが、「人類滅亡」とか「絶望的な状況」とかに立ち向かうためのメタルファンタジーが、Within Temptationの真骨頂である。そこに響き渡るシャロン・デン・アデルの歌声は、まさに女神の歌声なのだ。

その意味でBABYMETALの音楽性は、Within Temptationに近い気がする。

先ほど、しつこく各アルバムのチャート成績を上げたのは、欧米市場でのBABYMETALは、ちょうどWithin Temptationのニッチに重なると思うからだ。

今のところ、BABYMETALはまだまだWithin Temptationに及ばない。

2016年の『Metal Resistance』 のチャート成績は、米ビルボード20039位、イギリス15位、ドイツ36位、オランダ71位、ベルギー63位、スイス55位、オーストリア22位、フィンランド45位。

もし、今年BABYMETALの3rdアルバムが出るとしたら、Within Temptationの『Resist』とモロにかぶることになる。

SU-が生まれた年にデビューしたWithin Temptationの壮大かつ重厚な音楽性に対して、BABYMETALはどう戦えばよいのか。

(つづく)