★今日のベビメタ
本日1月16日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。
2012年10月6日のLegend ”I”で、初降臨した神バンドのメンバーは、ギターの神:紫煉、Leda、ベースの神:RYO、ドラムスSHINの4名だった。
このうちギターの神、紫煉(平野幸村)は、2008年に東方Projectやアニソンをメタルアレンジで演奏する音楽プロジェクトUnlucky Morpheus(あんきも)を設立。
2010年のLegend “I”を経て、2013年にはゴシックメタルバンド妖精帝國に加入。
さらに2014年からゲームソフト用音源を制作する電気式華憐音楽集団(デンカレ)にも参加した。
2018年2月、ギタリストの業病ともいえる腕の腱鞘炎のため休養に入り、妖精帝國は「除隊」したが、Unlucky Morpheusは経過を見て復帰予定とのこと。
Unlucky Morpheusは、これぞメロスピ、ジャパメタという楽曲・アレンジで、女性ボーカリストの天外冬黄(てんげふゆき)の迫力あるボーカル、ツインギターの速弾きに加え、女性バイオリニストJillが奏でるクラシカルなメロディが、ファンタジックかつ甘美なアニメの世界観を表現する。最新アルバム『CHANGE OF GENERATION』が昨年9月19日にリリースされている。
妖精帝國は、正式名称を「妖精帝國第参軍楽隊」といい、妖精の存在を忘れてしまった人間界で、音楽を通じて、妖精帝國を再興させるという「設定」で、皇女ゆい(声優伊月ゆい)と橘尭葉によって、SU-の生まれた1997年の名古屋で結成された。
事務所は、ヒャダイン、JAMProject、影山ヒロノブ、LAZYなども所属するバンダイナムコ傘下のレーベルLantis。楽曲は、Within Temptation、In This Momentなど女性ボーカルのシンフォニック/ゴシックメタルやイングウェイ・マルムスティーンのクラシックメタルの影響も強いが、アニメやゲームに楽曲提供し、主題歌となることも多い。ただし、皇女ゆいのボーカルが「アニメ声」なので、ゴシックメタルではあるが、重くはなく、むしろ軽やかでメロディアスな印象を受ける。
要するに、初代ギターの神であった紫煉は、Unlucky Morpheus、BABYMETAL、妖精帝國と、3つのバンドに関わったわけだが、そのすべてが女性ボーカル、アニメ的世界観設定=メロスピ/メロデス/ゴシックメタルといった要素を持っていた。
まあ、BABYMETALとアニメとの関わりは、2012年のキバオブアキバとのスプリットシングル「君とアニメが見たい」リリースや2012-13年のAFA(アジアアニメフェスティバル)出演と、戦闘少女的コスチュームくらいで、直接楽曲提供したわけではないが。
これに、黒猫を擁する陰陽座(男女ツインボーカル)を加えれば、女性ボーカル&ゴシックメタルの要素という条件で絞り込んだ日本のバンドの代表選手が勢ぞろいする。
実は、女性ボーカル&ゴシックメタル要素という条件は、女性ボーカルを擁する世界的メタルバンド、Nightwish、Arch Enemy、Within Temptationといった北欧のシンフォニックメタルバンドや、EvanescenceやIn This Momentといったアメリカのゴシックメタルバンドと共通する。
日本では、さくら学院出身のBABYMETALの成功以来、「アイドル」の枠組みの中で、メタル、ハードコア、モダンヘヴィネスを志向するグループ(例えばPASSCODE、ゆくえしれずつれづれ、ゆるめるモ!)や、海外進出するガールズバンド(BAND-MAID、LOVEBITES)が増えた。
「アイドルなのに会いに行ける」という方法論が、音楽でもなんでもなく接待業に過ぎないということに気づいた人々が、集客しやすい「アイドル」の枠組みを利用しながら、人の心を動かす表現としての音楽を模索し始めたようである。
それはそれでよいのだが、BABYMETALがモダンヘヴィネスにくくられることなく、メタルにこだわるのは、上記したように、メタルの1ジャンルとしての女性ボーカル&ゴシックメタルの世界的潮流に位置しているからだともいえるのだ。
「アイドルなのにメタル」(あるいはヘヴィネス)という段階を超えて、「アイドル出身の日本人女性メタルユニットに何が表現できるか」がBABYMETALの課題なのである。
YUI脱退後のBABYMETALの方向性はどうあるべきか。
音楽性の水準は、これらの世界的女性ボーカルメタルバンドの中で、どのくらいの戦闘力を持っているのか。
それを推し量る一つの方法として、YouTubeにアップされたオフィシャルPVを比較してみることにしよう。
まずは、国内の同コンセプトバンドから。
昨年まで紫煉が在籍していた妖精帝國のオフィシャルPVは、ゴシック的世界観で組み立てられており、初期BABYMETALと共通するところが多々ある。
例えば、荒涼たる岩山の石窟、地面の黒い水、剣が描かれる「Wahrheit」(2009/03/12アップロード、以下UL)や、石造りの地下宮殿で演奏される「Astral Dogma」(2014/12/09UL)の雰囲気は、なんとなく、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」オフィシャルPV (2012/11/26UL)の背景となる荒野や石窟に似ている。
巨大な月をバックに始まる「空想メソロギヰ」(2015/01/15UL)や、「Disorder」(TVアニメビッグオーダーOP、2016/04/15UL)に出てくる教室の少女は、どこか「ヘドバンギャー!!!」(2012/06/21UL)のSU-METALを思わせる。
「Flamma Idola」( 2017/07/15UL)は、「洞窟の炎」というラテン語のタイトル通り、地面に魔法陣が描かれ、フレームマシンの炎が立ち上る中で演奏されている。その雰囲気は、BABYMETALのライブで魔法陣のようなデザインのステージで「Road of Resistance」や「紅月-アカツキ-」や「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の際に噴き上げられる炎(2014年日本武道館、2015年Final Chapter of Trilogy、2016年Wembley Arena)を彷彿とさせる。
女性ボーカルのメタルバンドで、かつファンタジックな世界観を訴求するという意味で、1997年に結成された妖精帝國は、BABYMETALの先駆者といえる。
だが、このようにオフィシャルPVのタイムラインを確認すれば、ほとんどの楽曲でBABYMETALの方が先にアップロードされていることがわかる。
それは、YouTubeのサービス自体が2010年代になって一般化したためであって、妖精帝國の世界観自体がBABYMETALの影響を受けたというわけではない。
バンドや楽曲の世界観のビジュアライズは、MTV時代から行われていたが、それには映画の撮影と同じくらい手間と費用がかかった。多額の費用をかけても回収できる当て=テレビ媒体での宣伝とCD販売益を前提としなければ、コストが見合わない。
だが、YouTubeならば、撮影・編集さえできれば簡単にアップできる。
要するに、YouTubeが一般化するまで、妖精帝國の世界観は、PVではなく、歌詞やジャケットに描かれていたのだが、YouTubeありきでデビューしたBABYMETALは、最初からPV=ビジュアライズを考えていたため、一歩先んじたということなのだろう。
要するに、デビュー時から世界観を発信するツールだったBABYMETALのPVは、海外と直接つながり、訴求するレベルだった。その最初のヒット作が「ド・キ・ド・キ☆モーニング」で、いきなり海外のジャパンカルチャーファンから注目されたわけだ。
「ギミチョコ!!」「Road of Resistance」「THE ONE」「No Rain No Rainbow」のオフィシャルPVは、ライブ映像だった。
2016年の「KARATE」、昨年配信シングルとなった「Distortion」と「Starlight」は、世界観を表現したスタジオMVだった。
これらは、世界的女性ボーカルバンドのPVと比べて、どうなのか。
(つづく)