Darknight Carnival(2) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

1840BGMがメタリカの「Master of Puppets」に変わる。場内から「マスター!マスター!」の掛け声。客電が落ち、大歓声が沸く。

短いDarknight Carnivalの動画から、BABYMETALのロゴが大写しとなる。間髪を入れず「Light and Darkness…」から始まる英語のDark Side「紙芝居」が始まる。

「…It’s time to Metal Resistance Episode with BABYMETAL」と告げられた瞬間、Djentのギターリフが駆け上がり、特効の爆発音とともに、大音響の1.「In the Name of」が始まる。客席は3階席まで総立ちになる。

舞台上段には黒いヴェールと金色に輝くコスチュームをまとい、日蝕の錫杖を持った7人がずらりと並んでいる。

7人が錫杖を上手から下手へ動かしていくと、舞台から客席に向けてピンスポットライトが幾条にも照射される。見事なシンクロ。やはりSSAぐらい広い会場の方が、この演出が生きる。

やがて中央の一人が長い階段をゆっくりと降りてくる。もちろんSU-METALだ。

ステージ最前面の▽に一人で立つと、その▽が5メートルほどの高さまでせり上がってゆく。ピットからは10メートル近い。その高さから錫杖を持ったまま、SU-が3万人の観客を睥睨する。とんでもないオーラ。文字通り女神の降臨である。

そこでSU-は、他のメンバーを呼び込むため、後ろ向きになる。▽には手すりなどない。ひゃあ。手に汗握って見ていると▽は徐々に下がっていき、他のメンバーも舞台に降りてくる。

海外公演や幕張に比べて、迫力、オーラ、スリルが大増量している。

曲が終わり、暗転。青い照明の中、「キーン」という不穏なハウリング音が流れ、ドラム音が鳴り響く。そこへDjent風のギターリフ。

大騒ぎの客席は早くもサークルモッシュの準備に入る。

リフが数回繰り返され、ボルテージがマックスになったところで「♪Woo Woo Woo Woo」というコーラスが聞こえてくる。もちろん観客も「♪Woo Woo Woo Woo」と大合唱する。

2.「Distortion」である。

この曲の最初は観客とSU-の掛け合いだ。観客が、Give Up Give UPと歌うとSU-が「Can’t Stop the Power」と応える。もう一度観客が「Give Up Give UP」と歌うとSU-は「Stop the Power」と応える。観客が再度「Give Up Give Up」と問うと、SU-は「Is this a Bad Dream?」と応える。これはまさに今の状況そのものだ。

だが、「Distortion!」のデスボイスから、SU-の歌声が、空気を切り裂く。

「♪歪んだカラダ叫びだす」(Woo Woo Woo Woo)、「♪歪んだイタミ、切りつける、汚い世界だった」

「♪歪んだツバサ飛べるなら」(WooWooWooWoo)、「♪歪んだシハイ恐れない、偽善者なんて切り捨てちまえよ」

こうしてSU-は、SSAに観客を巻き込んだ歌世界を創っていく。幕張はややキンキンした音響だったが、SSAはフラットなイコライジングだった。やはりあれだけの声量には、スタジアム級の会場がふさわしい。

フォーメーションは、最前▽にSU-、中央△にMOAとピエロ1、後方左右の▽に各2人ずつ。メイクは、幕張二日目よりさらに薄くなっていて、ピエロの素顔がわかるようだったし、MINAMI神、MINAKO神の目の隈取はやや細くなっていた。

間奏部、SU-は「ヘイ、サイタマ!」と叫ぶ。つかみはOKだ。だがベビメタはそこで止まらない。SU-は「I wanna see a BIG CIRCLE PIT!」「Show me a BIG CIRCLEPIT!」と客席を煽る。MOAは手拍子をしながらニコニコ顔。

もちろん、観客にいやはない。前の超モッシュッシュピットで2つ。後ろのモッシュッシュピットで1つ大きな輪ができる。

SU-が再び「♪歪んだ…」と歌いだすと、ピットの観客はもみくちゃになりながら高速で回る。文字通り熱狂の渦。

「♪この世界が壊れても…」と歌い上げたところで曲が終わる。暗転。

聴きなれたキリキリキリ…という軋み音から「Give me…、Give me…」というデスボイスが流れる。

3.「ギミチョコ!!」である。

フォーメーションは、中央△にSU-、前▽にMOAとピエロ1号。後方左右▽に各2名。

7人による大迫力の頭指差しヘンテコダンスである。

やはりMIKIKO師によるあの振り付けは強い。これだけ異形のコスチューム、メイクをしていてもKawaiさは色あせない。

間奏部。今日の神バンドは、下手ギター大村神、ベースBOH、上手ギターISAO神で、ドラムスは青山神とほぼ同じメイクだったが、別人。かどしゅんたろう神でも前田遊野神でもない。青山神よりやや重くてパワフルなドラミング。にゃんごすたー神説も。

手拍子を促すMOAの笑顔が弾ける。そして再び7人のヘンテコダンス。

「♪パーパーパパパパ」で曲が終わり、一瞬暗転ののち赤い照明となる。エレピのコード弾きのイントロが流れる。

ジャングル風のワチャワチャしたリズムボックスから「♪Hey Baby, Are you going now dadadadadadaAh…」というオートチューンが流れ、曲が始まる。

4.「Elevator Girl」である。

フォーメーションは、中央の△にSU-MOA、ピエロ1号、左右後方▽にMINAKO神、MINAMI神の5人体制。「新3人組」の中ではSU-が頭一つ大きく、後ろの両ダンスの女神とのバランスがいい。それが最後の方になると、全部真ん中に集まって来て、身体をくねらせるようなダンスになる。「ギミチョコ!!」「あわだまフィーバー」「ヤバッ!」系のコケティッシュな曲という位置づけで、こういう曲を続けていくことで、新体制でもKawaii Metalらしさを維持していくということなのだろう。

曲が終わると大歓声が湧く。

場内に物悲しい映画の一場面のようなオーケストラが流れる。宇佐美秀文氏による藤岡氏への哀惜をこめたインターミッション。照明が青く変わり、ピアノのイントロが流れる。

5.「紅月-アカツキ-」である。

ステージ最上段。金のマントに身を包んで立つSU-にスポットライトが当たる。

「♪幾千もの時を超えて…」と歌いだすと、場内は静まり返る。何という澄み切った歌声。何というオーラ。3万人の視線を一身に集め、アップになる表情は、しかし過度な悲しみや苦悩ではなく、毅然としている。今日のSU-は、表情豊かというより、決意と確信に満ち、強い意志を感じさせた。

ピッチは精密機械のように1セントも揺るがない。

ギターのイントロが入ってくる。バスドラの鼓動が観客の心音とリンクする。ピッキングハーモニクスが空気を切り裂く。

SU-が「アカツキだー!」と叫ぶと、ステージ上段左右各4本、舞台前面左右6本ずつ置かれたパイロが大きな炎を噴き上げる。

階段を下りて舞台に立ったSU-は、澄み渡る歌声でメタルへの愛を歌う。

かつて、“巨大勢力アイドル”に囚われたYUIMOAを救うために立ち上がったSU-METALは、今再び存亡の危機に陥ったBABYMETALを救うために立ち上がる。悲しみや苦悩を胸に秘めつつ、決然と前を向く。

間奏部。大村神とISAO神のツインギターバトルの背後、ステージ上段で、MINAKO神とMINAMI神が切れ味鋭い空手の型を披露し、階段を駆け下りると舞台中央でがっぷり四つに組み、すさまじい気迫の殺陣を展開する。

その戦いは過去の自分と戦うSU-の心象風景でもあり、BABYMETALに参加してくれた2人の内面の葛藤でもあり、さらには、もう二度と帰らないYUIMETALと藤岡神のいた「あの頃」のBABYMETALに未練を残す、ぼくらファンの嵐のような心の相克でもある。

そこへ、マントを翻して、SU-METALが割って入る。

「♪過ぎてゆく時の中、瞳を閉じたまま」

「♪この手に流れる赤い糸消えても感じている、絆を…」

ベビメタフェスは、ぼくらファンの願いだった。オズフェスト、ノットフェス、KORNツアー…。主催フェスでシーンを作り、仲間のバンドに表現の場を与えることは、一時代を画したバンドの誉れである。

それが今、こうして実現している。

だがそこには、YUIMETALがいない。藤岡幹大神もいない。

「♪孤独も不安も、斬りつける心まで、今…」

座り込んだSU-の表情は、だがしかし、苦悩に歪んではいない。むしろ表情一つ変えず、しっかりと前を見据えたまま、すっくと立ちあがる。

強い。SU-METALは強い。その強さに、心を鷲掴みにされる。

マントを翻して後ろを向いたSU-の残像が残るまま、暗転。

ステージからレーザー光が照射される。それは会場後方で、青、赤、白の波を描く。

「♪ララララーラーラーラーラー…」という懐かしいようなコーラスが聴こえてくる。

6.新曲「Starlight」である。

Djentのギターリフから速いリズムで曲が始まる。

「♪時を超えて解き放てFar away、走り続け遥か彼方Run way…」

「♪Dreaming nowDreaming nowAh Higher in the lightAh Higher than the skyStarlightStarlight、光放つその先へ…」

という歌詞は、前を向き、ふたたび駆け上ろうとする今のBABYMETALそのものである。

そして、サビの歌詞。

「♪Whenever we won’t be with you, We never forget shining starlight」(あなたと一緒にいられないどんなときでも、私たちは輝く星の光を忘れない)

「♪Wherever you will live in my heart, We never forget shooting star」(あなたが私の心に住んでいるならどこにいても、私たちは流れ星となったあなたを忘れない)

は、YUIMETALと藤岡神にささげる歌詞だ。

フォーメーションは「新3人組」+ピエロ2号、3号の5人。

新生BABYMEALは「Starlight」で、過去と決別し、前を向くのだ。またも泣きそうになっていると、ここでテレビゲームのような「紙芝居」が入った。

(つづく)