ブルータルの研究(3) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

THE ONE NEVER FORGET MIKIO FUJIOKA

★今日のベビメタ

本日2月28日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントはありませんでしたが、2018年、ワールドツアーの予定が発表された日DEATH。

詳細は、http://www.babymetal.jp/schedule/

●5月8日 単独ライブ

アメリカ合衆国ミズーリ州カンザスシティー/ Uptown Theater 開演8:00PM

●5月10日 単独ライブ

アメリカ合衆国テキサス州オースティン/ ACL Live at the Moody Theater 時間未定

●5月11日 単独ライブ

アメリカ合衆国テキサス州ダラス/ House of Blues Dallas 開場7:00 PM 開演8:00 PM

●5月13日 単独ライブ

アメリカ合衆国テキサス州ヒューストン/ Revention Music Center 開場7:00PM

●5月15日 単独ライブ

アメリカ合衆国ジョージア州アトランタ/ Tabernacle Atlanta 開演 8:00PM

●5月17日 単独ライブ

アメリカ合衆国ノースカロライナ州シャーロット / The Fillmore 時間未定

●5月18日 単独ライブ

アメリカ合衆国テネシー州ナッシュビル / Marathon Music Works開演 8:00 PM

●5月20日 Rock on the Rangeフェス

アメリカ合衆国オハイオ州コロンバス / MAPFRE STADIUM 出演時間未定

●6月1日 Rock am Ring 2018フェス 出演時間未定

ドイツ・ニュルブルク / Nürburgring

●6月2日 Rock im Park 2018フェス

ドイツ・ニュルンベルク / Zeppelinfeld

●6月4日 単独ライブ

オーストリア・インスブルック / Music Hall Innsbruck 時間未定

●6月5日 単独ライブ

オランダ・ユトレヒト / TivoliVredenburg 時間未定

●6月9日 Download フェス

イギリス・ダービー / Donington Park 出演時間未定

昨年に引き続き、US Tourが行われますが、昨年行かなかったテキサス、テネシー、ジョージアといったアメリカのど真ん中、南部~中西部を攻めるようですね。3年連続のシャーロットは南部に近いですが、東海岸なのでちょっと寄り道という感じがして、ますます不思議です。(^^)/

カンザスシティーは、ミズーリ川をはさんでカンサス州にもまたがっていますが、Uptown Theaterはミズーリ州側のようです。

6月からはドイツの2フェス、オーストリアとオランダは単独ライブで、ゲルマン色豊かなメタル・ベルトを攻略するようです。

ぼくが行く予定のイギリスではまだ単独ライブ予定がないのが寂しいですね。例年、追加公演が発表されるので、期待しましょう。

 

「♪ダダダダダダダン、ダダダダダダダン…」に続いて、低音の開放弦を使ったギターの複雑なリフが入り、ドラムスが「♪ダダン、ダダッ、ダダッ」とリズムを刻む。

ここも「FF#A#ACA#F#F」といった半音進行のメロディだが、コードはF。平行調はC#なので、B♭m⇔Fは、Ⅵm⇔Ⅲというコードになる。

「水戸黄門」(原曲C#mをB♭mに移調)では、「♪(Fm)涙の後には」のところで、そのあと「♪(D#m)虹も出(B♭m)るー」と、いったん下がってから発展して元に戻るⅥm→Ⅲm→Ⅱm→Ⅵmという短調の3コード進行になっている。

しかし、「BMD」は、B♭m⇔F(Ⅵm⇔Ⅲ)の2コードだけで、発展部というものがない。

つまり、短調のまま、沈み込んで元に戻るだけのコード進行に、不安な半音進行の重低音リフが重なるという構造になっている。

ギターのアームアップとSEで「♪きゅいーん」という不気味な高音が鳴ると、大会場のライブでは特効が「パーン!」と爆発する。

野外ライブの場合は、イントロから三人が下手あるいは上手から、フードをかぶって、屠場に引かれる犠牲の子羊のごとく俯いたままステージに上がってくるが、5大キツネ祭りのような小箱ではここで紗幕が落ち、東京ドームのような大箱では観客の予想を裏切る場所に三人が忽然と現れる。

つまり、暗い重低音のマイナーコードに、不安を掻き立てる半音進行のギターのメロディが続き、絶望感が最底辺に達した瞬間、BABYMETALが現れるのである。当然、ここで客席から大歓声が上がる。

三人は両手を上げ、キツネサインと首を小刻みに揺らし、トランス状態に入っていく。

B♭mのコードを維持したまま、ギターが「♪(休)ジャッ・ジャッ・ジャージャージャー、(休)ジャッ、ジャッ、ジャージャージャー…」というリフを刻む。

ここは「♪(B♭)FC#・FC#・FC#―D#C―F#D#、(B♭)FC#・FC#・F#D#―FC#―D#C#」という2弦3弦または5弦6弦の和音による半音進行で、「紙芝居」およびイントロのトレモロ奏法のモチーフをなぞっている。ベースは、細かい半音進行で不気味にうねるようなラインを奏でている。

8小節の終わりに、闇に閃めくナイフの刃のようなツインギターのパッセージが入り、ベビメタ体操が始まる。

「B!」「A!」「B!」「Y!」「M!」「E!」「T!」「A!」のたびに、観客は両手を上げ、BABYMETALと一体化する。「L!」と同時に 「(休)DEATH!(休)DEATH!(休)DEATH!」…という裏拍のXジャンプに移行する。最初はゆっくりと、次に速くというアクションのリズムも、観客の熱狂を徐々に高めていく常套手段だ。

「SU-METALデス!」、「YUIMETALデス!」、「MOAMETALデス!」、「BABYMETALデス!」というメンバー紹介は、実はアイドルの自己紹介と同じで、「SU-推し」「YUI推し」「MOA推し」「箱推し」という構造になっている。

だが、「BMD」では、重苦しく不気味でブルータルな曲調の中、メンバーそれぞれが、絶望的な状況の中、神の恩寵として奇跡的に降臨した “救世主”に見えてくる。

再び、鋭いナイフのようなツインギターのパッセージに続いて、同じことがもう一度繰り返されるが、二度目の「M!」「E!」「T!」「A!」からは、ドラムスのリズムが、より裏拍を強調したシンプルなものに変わり、観客の上半身の動きを統一していく。

「♪…BABY、METAL、DEATH!」と一段落した後は、同じB♭mのまま、高音のギターによる「♪チャララララーラーラーラー、チャララララーラーラー」という印象的なメロディが流れる。構成音は「♪A#FCC#G#―C#―D#―C―、A#FCC#G#―F#―F―」で、ほとんどイントロと同じだが、より半音進行の上がったり下がったりを繰り返し、「あの世」感が強調されている。

ドラムスのリズムはゆったりしたものになり、三人が「DEATH!」「DEATH!」と両手を上げると、観客も一緒に両手を上げて「DEATH!」「DEATH!」と叫ぶ。

“救世主”として降臨した三人が、まず「信徒」に要求するのは、「死」なのである。

常識的な価値観に「死」を。

アイドル=カワイイだけという固定観念に「死」を。

大声や感情を露わにすることを抑圧して暮らす日常に「死」を。

職場や家庭や学校で“いい人”を演じている仮面生活に「死」を。

自分にこだわっている自分に「死」を。

そして、「♪ダンダンダン、ダンダンダン、ダンダンダン…」という三連符のリズムで、低音弦を使った「F・F#・A、F・F#・A、F・F#・A」という半音進行のリフが奏でられ、不安感や焦燥感が高まる。SU-が大きく頭を振り、YUIは辛そうに体をよじる。MOAに至っては頭を抱えて激しく何度もジャンプし、全身で悩乱している様子を見せる。

これは、メンバー自身がキツネ様の憑依によって、「世を忍ぶ仮の姿」の「死」を宣告され、トランスフォーム=生まれ変わっていくシークエンスである。

ドラムスが「♪タカタタカタタカタ…」と12連符をたたき出すと、SU-が腰を屈めて「♪アー」と叫ぶ。

ここでギターソロとなり、1弦18フレットの最高音から駆け下り、そこから半音進行で転調しつつ上昇するフレーズを奏でていく。三人は手を夢遊病のように大きく振りながらステージ上をひらひらと駆け回り、ステージ袖やお立ち台に上ると、観客と向き合ってコミュニケーションをとる。

ソロの最後、三人が舞台中央に集まってくる頃にはB♭mのマイナースケールによる「♪C#CA#A・A#FF#D#・DC#A#A・A#~」というメロディが鳴り響く。

これもごらんのとおり半音進行だが、すべてマイナースケールを外さないバッハ音階である。「トルコ行進曲」の速弾き部分の短調から長調に変わる直前とも似ている。

「BMD」では、不安や恐怖を掻き立てる半音進行の最後は、端正に整った短調のメロディになるのだ。絶望と悩乱の果てに、なぜか悲しくも清明な境地が出現する。それを強調するかのように、藤岡神は最後のA#に思いっきりビブラートをかけるのだ。

三人はステージ正面に並び、「(休)DEATH!」「(休)DEATH!」…「SU-METALデス!」「YUIMETALデス!」「MOAMETALデス!」「BABYMETALデス!」を繰り返す。

そして、そのまま客席に拳を振り上げ「「DEATH!」「DEATH!」…と繰り返してステージを歩き回り、観客を煽る。

注目したいのはMOAの表情だ。

ギターソロ前、つまりキツネ神憑依前は、大観衆を見てニヤリとすることはあっても、ニコニコすることはない。しかし、激しくジャンプするトランスフォーム後のMOAは、ギターソロの間、ステージを駆け回りながら観客に笑顔を見せる。ときには最前列の客と何かしゃべっているように見えることもある。

拳を振り上げる最後の「DEATH!」「DEATH!」のときにはもうニッコニコである。中央のお立ち台に上り、客席を煽り、飛び降りる。気づくとSU-もYUIもニコニコしながら観客を煽っている。

トドメは、最後「♪BABY、METAL、DEATH~」とB♭mのコードに、サイレンのような「キーン」というややチューニングをずらした電子音が重なることである。

これはオクターブ上のGで、平行調C#の減5度(dim5)にあたる。ディミニッシュは、不協和だが、Ⅵmに重ねると不思議な終了感をもたらす。

ドラムスが「♪ダンドンドンドンドン」と終っても、照明が真っ赤に染まる中、この電子音は長く続き、最後はスライドするように音程が下がって消える。

これは、ライブ会場が、キツネ様が臨在し、その「魔力」によって封じられた結界の中に入ったのだという「この世との決別」を示しているのだと思う。

重苦しく絶望的な状況の中で、日常生活=世を忍ぶ仮の姿に、自ら「死」を告げ、抑圧された衝動を解放する。そうして「死」が勝利するが、それは不思議なことに「希望」に変わる。

抱え込んできた古い自分が死に、重荷から解放された新しい自分に生まれ変わる。

自分が変われば世界が変わる。

この不思議な「死の勝利」を高らかに歌い上げるのが「BABYMETAL DEATH」という曲なのである。

「いいこと思いついた。Kawaiiアイドルにデスメタルをやらせたら面白かろう、ぐふふ。」という「企画物」なんかでは断じてない。

癒しを求める「お客さん」を楽しませるのがアイドルの使命だからこそ、ブルータルな楽曲をやる意味がある。

「BABYMETAL DEATH」は、真正面からブルータルな音楽の真価を訴求した、「アイドルとメタルの融合」、BABYMETALのオープニングに相応しい名曲なのである。

(つづく)