Tales of the Destinies | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

来ました。6月に注文したMetal Resistance episodeⅢトリロジーの3枚組BDボックスと、バンドスコア、7月に注文した東京ドーム用のTシャツとリストバンド。全部まとめて本日届きました。

バンドスコアは、8月にはタワレコの店頭にあった。アスマートでまとめて注文すると後から出る商品に合わせて入手が遅くなるという矛盾。なんか複雑だが、ちゃんと来たのでよし。

あと来てないのは4月に入金した19日のThe Oneシートのチケット引換券だけ。他サイトの情報によると、来週発送とか。やや不安だが待つしかない。

写真をどうぞ。

 
  

トリロジーの梱包を開けると、こんな感じ。

 

3枚の三角形のディスク収納厚紙を組み立て、付属の三角巾?を被せてピラミッドみたいに飾れということか。でも、置物として放置したら、三角巾は褪色してしまうし、厚紙もペナペナになってしまいそう。見終わったら梱包箱ごと安置しようと思うが、ケースも梱包箱も馬鹿でかいので、CDラックには入らない。

前回、BABYMETALが歴史的アーティストであることの様々な要素を述べた。

それにもうひとつ、つけ加えておきたいことがある。

それは、BABYMETALの歌詞が、多くのHR/HM、ラウドロック系のバンドとはやっぱり次元の異なる多様性、ポジティブさに満ちていることである。

曲調や使用楽器、アレンジだけが音楽のジャンルを決定するわけではない、というのがぼくの持論である。その意味で娘=アイドルに振り回されるパパ=父兄をおちょくった「おねだり大作戦」や、“四つ”のタブーに縛られた日本のTV業界や出版界に、これ、放送・出版してもいいのか、という踏み絵を強いる「4の歌」は、ブラックメタルだと思っている。

1stアルバム「BABYMETAL」の楽曲を並べてみると、神秘的な女性コーラスのイントロから、METALLICAの「One」そっくりのリフで、アイドルが「Death! Death!」と歌い踊りつつ、歌詞は「○○メタルDeath」だけという、衝撃の「BABYMETAL DEATH」に始まり、アイドルソングのサビにパンテラ風のリフを組み合わせたデビュー曲「ド・キ・ド・キ☆モーニング」や、心理学的アトラクトで全世界にBABYMETALを広めた「ギミチョコ!」、日本を代表するさくらさくらをへヴィリフにしてしまった「メギツネ」、パラパラ、ラップ、童謡に、へヴィメタルを組み合わせたNuメタル「いいね!」や「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」。かと思えばXジャパン風プログレメタルの「紅月-アカツキ-」、15歳の自立の決意を描くインディーズデビュー曲「ヘドバンギャー!!」、本格的メロスピのメジャーデビュー曲「イジメ、ダメ、ゼッタイ」まで、「なんじゃこりゃ」感に満ちていた。

一方、2ndアルバム「Metal Resistance」は、アイドルでもメタルでもないOnly OneのBABYMETAL道を行く決意を歌った「Road of Resistance」に始まり、その途上で疲れ果て、倒れてもなお立ち上がり、己れ自身と戦う意思を示した「KARATE」、ファンとともに世界をひとつにする壮大なシンフォニックメタル「THE ONE」など、劇的なメタルチューンが多くなった。

「GJ!」や「Sis. Anger」は、ブラックベビーメタルの楽曲ではあるが、内容はブラックではなく、むしろ「メタルの力で辛い日常を乗り切ろう」というファンへの応援歌。「あわだまフィーバー」や「YABA!」はコミカルだが、「ギミチョコ!」ほどの「なんじゃこりゃ」感はない。「META!メタ太郎」は、甲子園か水戸黄門かという楽しいバイキングメタルだが、歌詞は「メタルのパワーで生まれ変わるのさ」という、アルバムのテーマそのもの。

「No Rain No Rainbow」の切ないバラード、「Amore-蒼星-」や「シンコペーション」のSU-ソロのスピード感もあるから、多様性は健在だが、衝撃的なイロモノ性は薄れ、一貫して「メタルの力で生まれ変わろう」というポジティブなメッセージ性が感じられた。

レッチリとのマッチングを考えると、BABYMETALの曲で、レッチリっぽい「毒」をまきちらすのは、YUIとMOAがタオルをぶんぶん振り回す「おねだり大作戦」ではないかと最初は思った。

だが、本当にレッチリを“食う”つもりならば、正統BABYMETALメタル、つまり、キツイ日常の中で、メタルからパワーを得て立ち上がろうと呼びかける曲で勝負すべきではないかと考え直した。それは、ライブでは未披露の「Tales of The Destinies」から「The One」ではないか。

―――――引用

運がない! ツイてない!答えはいつも仕方ない!

しょうがない!ナイナナイナイナ ナイ!

あれじゃない! これじゃない!答えはどこにない!ない!ない!ない!

ナイナナイナイナナイナイナ ナイ!

Don’t worry さあ 生まれ変わるCount down始めていこうよSet me free !

止まらない 終わらない 限りないメロディー

僕らは 振り向かないNow and Forever

永遠のメモリーTHE ONE will be with you我らが The Destinies

 

ダメじゃない? ダメじゃない!ナイナイナイナイ!無理じゃない? 無理じゃない!

夢じゃない? 夢じゃない!ナイナイナイナイ!今じゃない? 今じゃない!

Can’t stop me now 今始まるThe big chance狙っていこうよGet ready!

止まらない 終わらない果てしない ジャーニー

僕らはひとりじゃないNow and Forever

それがデスティニーTHE ONE will be with you我らが The Destinies

―――――引用終わり

1990年代、メタルという形式の音楽は、レッチリをはじめとするグランジ=ラウド系ロックにファンを奪われ、存亡の危機に立った。グランジを取り入れて楽曲の幅を広げたMETALLICAのような存在もあったし、ラップや電子音をミクスチャーしたNuメタルも生まれた。メロスピ=パワーメタルやシンフォニックメタルは南米、ドイツ、北欧で人気を保った。だが、若者向けの音楽としては、より大きな市場をもつダンサブルなヒップホップやラップとラウド系に押され、メタルというジャンル全体が、細分化し細々と生き永らえて来た。2014年のBABYMETAL欧米登場は、冗談ではなく、メタル再興の救世主として受け取られた。

メタルの出自はハードロックであり、元をただせばR&Bやロックンロールにつながる。

人類進化論でいえば、R&Bがアウストラロピテクス、クラプトンやレッドツェッペリンなどのブルースロックがホモ・エレクトス、ディープパープルからNWBHMへの流れが、ひ弱だったため、技術力で勝負したホモ・サピエンス、ブルースロックからパンク、グランジへとつながる流れが、体が大きく、それゆえに技術力を発展させなかったネアンデルタール人といえる。

そう、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は、同じホモ・エレクトスという先祖から分かれ、3万年前まで共存していた2系統の人類なのである。ま、これには絶滅人類に擬されたロックファンは異論があるでしょうが、巨大な脳を持ち、格闘能力に秀で、肉食獣にも対抗できたネアンデルタール人には、ひ弱なホモ・サピエンスは敵わず、これまで類人猿が見向きもしなかった魚を食って水辺で生き延びてきたという事実を知れば、なんとなく納得してくれるかな。

アフリカを出た後の中東、ヨーロッパなどのネアンデルタール人の先住地域で、ホモ・サピエンスの女性は、ひんぱんにネアンデルタール人にレイプされていたらしく、アフリカ人以外のホモ・サピエンス、つまりぼくらのDNAには、ネアンデルタール人の遺伝子が数%含まれているという。こんなところも、今のメタルに、ラウド系ミクスチャーの遺伝子が含まれているのに似てるでしょ?

たとえ話はこれくらいにして、BABYMETALがレッチリと勝負するなら、正統派メタルとして、レッチリが絶対にできない圧倒的な演奏力や、ドラマチックなメロディライン、そして、ここが肝心だが、「暴動」ではなく「革命」を歌うべきなのだ。日常生活へのフラストレーションや狂気のような感情の吐露は、ロックの遺伝子をもつ音楽として当然だ。だが、何もかもぶち壊してしまえ、と無秩序な煽りで終わるなら、それは「暴動」しか起こさない。そうではなく、「立ち上がろう」「団結して現状を変えていこう」と呼びかければそれは「革命」となる。レッチリの歌詞は鋭く、現状への不満や不安、告発に満ちている。それに対して、BABYMETALの歌詞には、「メタルの力で立ち上がろう」「自分を変えていこう」というポジティブなメッセージがある。METALLICAほどの社会性には到達していないし、アイドルらしく応援歌っぽい甘さもある。だが、日本人の10代の女の子が、世界中をメタルの力で変えてきたという生身のリアリティが、そこにはある。その感動は、「Tales of The Destinies」(運命のお伽話)というシンフォニックメタルっぽいタイトルに如実に表れている。

「ダメじゃない? ダメじゃない!無理じゃない?無理じゃない!」という歌詞は、運がない、しょうがないとあきらめかけていた日常から、「ない」という日本語の両義性を生かしたポジティブな逆転を促している。

「僕らはひとりじゃないNow and Forever それがデスティニーTHE ONE will be with you我らが The Destinies」という歌詞は、次の「The One」への布石である。BABYMETALは、日本では2012年から、欧米では2014年から戦ってきた。アイドルでもメタルでもないOnly Oneの過酷なBABYMETAL道をひたすら走ってきた。その迫力が、世界をひとつにする壮大な「The One」の地平線を切り拓いた。レッチリが吐露してきた「心の闇」に観客が共感しているにしても、現実を変えてきた三人の少女たちと神バンドの演奏の迫力には、きっと心を動かされるだろう。

横浜アリーナのBDを見終わって、さくら学院の2010年のデビューステージを見返してみた。

あんなに幼かった三人が、大観衆の上空を、CGではなく本当に飛翔している姿に、ぼくは50数年間、どんな高い地位の人にも感じたことのなかった“カリスマ”を感じた。

横アリのSU-の歌声は、やはりそれまでとは一段違う。「ヘドバンギャー!!」では2014年までにも出ていた、あのちょっと低めの迫力ある声が、全曲とも聴かれた。「The One」で、観客の上空を飛びながら、その声で歌い続ける。これはもうちょっと、人の域ではない。

横アリ観戦記のブログをいくつか読んだが、ある人は、目の前を三人が飛んでいくのを見て拝みそうになり、最後に紙芝居で東京ドームの画像が出たとき、号泣してしばらく震えが止まらず、その場を動けなかったという。

BABYMETALとは、これほどのモノなのだ。レッチリには絶対に負けない。