『なぁ、あの頃のオレ。』青春編 第88話「サッカーだけになったオレ」 | 『なぁ、あの頃のオレ』青春編

『なぁ、あの頃のオレ』青春編

失敗だらけの人生を、
今のオレが昔のオレにツッコむ。

16歳で一人イタリアへ。
気ぃ使いすぎて空回り。

失敗も、勘違いも、だいたい自分発。

全部実話。1話完結。

『なぁ、あの頃のオレ。』連載中。



◆ 夢の生活、始まる

なぁ、あの頃のオレ。

イタリアへ来て、

ついに始まった、
サッカー留学。

朝起きて、
サッカー。

昼も、
サッカー。

午後も、
サッカー。

……

最高やん。

夢にまで見た生活が、
始まった。

ただな。

実際に始まってみたら、

夢は夢でも、

思ってたんとは、
ちょっと違った。

まず、

朝飯。

最初は、

ラスク。

牛乳。

卵。

バナナ。

部屋ごとに、
一週間分まとめて、
配られとった。

豪華ではない。

でも、

ちゃんと朝飯や。

ところが。

しばらくすると、

卵、

消えた。

……

「あれ?」

さらに、

バナナも、

消えた。

……

残ったん、

ラスク。

牛乳。

以上。

……

なぁオレ。

朝飯のメンバー、

一人ずつ、
退団しとるやないか。

卵、
戦力外。

バナナ、
契約終了。

残留したん、

ラスクと牛乳。

……

弱い。

朝から、
布陣が弱すぎる。

しゃあないから、

自分で卵買ってきて、
目玉焼きを焼く。

……

なぁオレ。

イタリアまで来て、

最初に上達したん、

トラップでも、
ドリブルでもない。

目玉焼きや。

……

まぁ、

だいたい、
焼きすぎとったけどな。


◆ バスの運転手

朝飯を食べたら、

スパイク持って、
送迎バスへ。

運転手は、

かなり太った、
イタリア人のおっちゃん。

無口。

無愛想。

オレには、

「お前ら日本人に、

ホンマにサッカーできるヤツ、
おるんか?」

そんな顔に見えた。

……

なぁオレ。

おっちゃん、

一言も、
しゃべってへんぞ。

勝手にセリフ、
付けるな。

それでもオレ。

「見とけよ。」

心の中で、
勝手に対抗。

ちょっと胸張って、
バスに乗る。

……

何の勝負や。

相手、

運転手やぞ。

ほんで、

練習場に到着。

午前中は、

日本人だけで、
練習。

……

正直。

ちょっと、
違和感があった。

「何で、

イタリアまで来て、

日本人だけで、
サッカーしてんねん。」

せっかく、
海越えて来たんや。

オレがやりたかったんは、

イタリア人との、
サッカーや。

しかも、

練習が始まったら。

走る。

また走る。

まだ走る。

……

なぁオレ。

イタリア人どころか、

ボールまで、
おらんようになったぞ。

現在、

イタリアまで来て、

日本人と、

走ってるだけ。

……

これ、

海越えてまで、
やることなんか。


◆ ようやくイタリア人

午前の練習が終わったら、

一回、
ホテルへ戻る。

昼ご飯は、
いつもの
レストラン。

食べたら、
少し休憩。

ほんで、

またバス。

……

朝乗って。

昼戻って。

また乗る。

なぁオレ。

サッカー留学というより、

だいぶ、
送迎されとるな。

でも、

午後は違う。

年齢ごとに分かれて、

イタリア人のチームに、
合流する。

……

ようやくや。

イタリア人と、

一緒に、
ボールを蹴る。

言葉は、

ほとんど分からん。

でも、

ボールがあれば、
何とかなる。

……

なぁオレ。

何や、

その根拠のない自信。

イタリア語、

ほぼゼロ。

せやのに、

気持ちだけ、

セリエA。

ほんで、

実際に一緒に、
プレーしてみる。

……

「あれ?」

オレ。

ちょっとだけ、
戸惑った。

もちろん、

上手いヤツもおる。

でも、

オレが勝手に想像しとった、

「イタリア人=
全員めちゃくちゃ上手い」

って感じでもない。

……

なぁオレ。

また出た。

お前の、

イタリア万能説。

何でイタリア人全員、

サッカー上手い設定やねん。

イタリア人全員、

生まれた瞬間から、

リフティングしてるとでも、
思っとったんか。

でも。

そんなこと、

どうでもよかった。

オレは今、

イタリアのグラウンドで、

イタリア人と、

ボールを蹴っとる。

……

それだけで、

嬉しかった。

◆ 結論

なぁ、あの頃のオレ。

お前が夢見とった、

イタリアでの、
サッカー生活。

実際は。

ラスク食って。

バス乗って。

日本人と、
走って。

昼飯食って。

またバス乗って。

イタリア人と、
蹴って。

また走って。

寝る。

……

なぁオレ。

思ってたんと、

だいぶ違うな。

もっと、

キラキラした毎日を、
想像しとったやろ。

でも、

実際に始まった毎日は、

めちゃくちゃ、
シンプルやった。

でもな。

それでも、

楽しかった。

朝起きたら、

今日も、
サッカー。

昼も、
サッカー。

明日も、
サッカー。

気ぃ付いたら、

お前の毎日は、

サッカーだけに、
なっとった。

日本におった頃、

遠くから憧れとった、
イタリアでの生活。

それが、

ラスク食って。

バス乗って。

走って。

ボール蹴って。

また走る。

そんな、

普通の毎日に、
なっとった。

……

なぁオレ。

夢やった毎日が、

ほんまに、
毎日になったな。

……

まぁ。

思ってたより、

だいぶ、

走るけどな。

【一言まとめ】
夢やったサッカーが、
毎日になった。

【次回】
イタリア語レッスン始まる。