
なぁ、あの頃のオレ。
ついに来たな。
チーム対抗戦や。
イタリア来てから、
呼吸法。
改名。
マジック。
金玉。
梅干し。
ディスコ。
なぁオレ。
サッカー合宿の内容、
だいぶ迷子やったな。
でもこの日は違う。
ちゃんとサッカーや。
ほんでな。
実はその頃のお前、
少しだけ自信ついてた。
理由はフリーキック練習。
コーチが聞いてきた。
「右角、蹴れるか?」
オレ、
「うん。」
軽く返事する。
ほんで蹴ったら、
カーン!!
右角のバー直撃。
コーチも見てた。
チームメイトも見てた。
なぁオレ。
一本当たっただけや。
一本当たっただけやのに、
お前の脳内ではもう、
セリエAデビュー決まっとる。
まだ練習やぞ。
◆ 世界との差と勘違い
試合始まる。
速い。
上手い。
強い。
なぁオレ。
ボールが来る前に、
次のプレー決まっとる。
オレだけや。
ボール来てから考えてるん。
でもな。
不思議やった。
圧倒される。
悔しい。
でも逃げたくはならへん。
むしろ、
負けたくなかった。
追いつきたかった。
同じピッチで、
もっとやりたかった。
なぁオレ。
この頃からやな。
サッカーがさらに
面白くなり始めてたんは。
でもな。
全く通用せんかった訳ちゃう。
たまに止める。
たまに蹴れる。
たまに褒められる。
ほんでその「たまに」が、
危険やった。
なぁオレ。
お前な。
ちょっと褒められたら、
すぐ勘違いする。
人生ずっとそうや。
◆ スーシーコール
試合終盤。
PK獲得。
なぁオレ。
正直な。
お前は蹴る気なんか全然無かった。
「誰が蹴るんやろな」
ぐらいに思ってた。
するとや。
コーチがこっち見る。
ほんで指差す。
「スーシー。」
……。
……。
え?
オレ?
なぁオレ。
その瞬間や。
お前の脳みそ、
一気に都合良くなった。
「やっぱりな。」
「オレのフリーキック。」
「評価されてたんや。」
なぁオレ。
違うかもしれんやろ。
まだ分からんやろ。
でもお前の中では、
もう代表選出ぐらいの出来事やった。
誰もそんなこと
言うてへん。
「スーシー!!」
「スーシー!!」
「スーシー!!」
なぁオレ。
ゴール裏におった。
ちびっ子軍団や。
マジックのサクラ達や。
梅干しの共犯者達や。
ほんで全員、
めちゃくちゃ応援してる。
「スーシー!!」
「スーシー!!」
なぁオレ。
その瞬間。
お前の脳みそ、
壊れた。
◆ 始まる妄想
なぁオレ。
PKってな。
決めたら一点や。
それだけや。
でもお前の頭の中では違う。
オレ決める。
↓
ちびっ子大歓声。
↓
肩車。
↓
スーシーコール。
↓
新聞載る。
↓
セリエA。
↓
ワールドカップ。
↓
バロンドール。
↓
教科書載る。
なぁオレ。
飛び級しすぎや。
ほんでさらに思う。
「普通に決めてもおもんないな」
その考え、今すぐ捨てろ。
蹴る前のオレに、
誰か言うたってくれ。
◆ 悲劇
お前が狙ったんは、
チップキック。
思いっきり蹴るフリ。
ほんでフワッと浮かせる。
キーパー左右に飛ぶ。
ゴールど真ん中に
フワッと吸い込まれる。
……。
一瞬の沈黙。
なぁオレ。
頭の中では
もう完璧や。
オレ大歓声。
頭の中ではな。
なぁオレ。
現実はどうや。
ゴール裏。
「スーシー!!」
「スーシー!!」
ちびっ子ら叫んでる。
お前さらに気持ち高ぶる。
キーパーかまえる。
オレ、助走入る。
キーパー動かへん。
オレ、
思いっきり蹴るフリする。
ほんで軽く蹴る。
フワッ。
……
……
キーパー。
一瞬驚く。
……
動かへん。
……
そのままや。
なぁオレ。
キーパー全然動かへん。
ほんで立っとる。
パシッ。
終了。
なぁオレ。
めちゃくちゃ
普通に取られた。
キーパーな。
読んだんちゃう。
予測したんちゃう。
ただビビったけど
立っとっただけや。
ほんでボールがっちりキャッチ。
◆ ちびっ子のリアクション
一瞬静かになる。
ほんで次の瞬間。
「ノォォォォォ!!」
ちびっ子達絶叫。
頭抱える。
しゃがみ込む。
なぁオレ。
相変わらず
リアクションがデカい。
でもな。
一番恥ずかしいんは、
オレや。
普通に蹴ったら良かった。
ほんまに。
それだけやった。
なぁオレ。
お前な。
たまにこういうとこある。
100点狙わんでええ場面で、
120点狙って0点なる。
なぁオレ。
そういうとこやぞ。
◆ 帰りたくなかった
でもな。
試合終わって、
みんなと歩いてた時。
ふと思った。
悔しかった。
恥ずかしかった。
でもそれ以上に、
楽しかった。
なぁオレ。
正直な。
試合内容あんま覚えてへん。
何対何やったかも、
もう覚えてへん。
でもな。
一つだけ覚えてる。
帰りたくなかった。
もっとここでやりたい。
もっと上手くなりたい。
もっとみんなとおりたい。
そう思った。
◆ 結論
なぁ、あの頃のオレ。
お前な。
世界レベルとの差より先に、
自分の調子乗り癖を知ったな。
PKは止められた。
ちびっ子には叫ばれた。
だいぶ恥かいた。
でもな。
イタリア来る前より、
サッカー好きになってた。
それだけは本物やった。
【一言まとめ】
普通に蹴れば英雄。
調子乗った結果、
伝説だけ残った。
【次回】
合宿最終日。
帰りたくないオレ。