夢見てズレて転び続けたオレの黒歴史ノート

夢見てズレて転び続けたオレの黒歴史ノート

失敗だらけの人生を笑いに変換中。夢見てズレて空回り、今も迷子。成功談なし、再現性もなし。でも続けてます。青春編(全64話)完結済み。




なぁ、あの頃のオレ。

サッカーで毎日全力ダッシュしとったやろ。

その余ったエネルギー、
なぜか労働に回されとるからな。

誰の判断やねん。

◆ 兄貴の「働く」宣言

始まりは突然やった。

ある日、兄貴が友達と一緒に
新聞配達を始めたんや。

小学校高学年のくせに、
急に「働く」とか言い出して、
何を目指してたんか今でも謎。

ただな、
新聞配達って
早朝が地獄レベルで暗い。

特に冬。
朝5時。
街灯ポツン。
犬の鳴き声だけ。

完全にホラー。

兄貴、
たぶんビビったんやろな。

ある日いきなり、
オレに言うてきた。

「月500円やるから手伝え」

なぁオレ。
その時の顔、覚えとるで。

「500円!?!?!?」

小2の価値観で言うたら、
20億円。
石油王。
人生勝ち組。

理由?
意味?
将来性?

全部どうでもええ。
500円で即契約。

◆ 暗闇が怖い男たちとオレ

しかもな、
問題は兄貴だけやなかった。

一緒に配っとった
兄貴の友達も、
暗闇が怖い。

友達もオレに言う。

「なぁ…今日オレの方ついてきてくれへん?」

気づけばオレ、
早朝の暗闇が怖い小学生男子2名に
取り合いされる存在。

なんやこれ。
どうなっとんねん。

朝5時に
「今日オレの方な!」
「昨日お前やったやろ!」

人生で一番モテた瞬間、
間違いなくここ。

◆ 気づけば一人、残ってた

でもな、
時間って残酷や。

数年経って、
兄貴と友達、
そろって辞めた。

潔すぎる。

で、残されたのが──
オレ。

新聞屋のおっちゃんが言う。

「頼むでオレくん、このまま続けてくれへんか」

気づいたら、
契約更新。

サインしてへん。
同意してへん。
でも継続。

ブラック企業、爆誕。

◆ 小学生、7年勤務

そこからオレ、
小2〜中学卒業まで
新聞配達継続。

7年。

雨の日も、
風の日も、
台風の日も、
雪でチャリ何回もコケた日も。

なぁオレ。
誰が小学生に
こんな責任背負わせたんや。

◆ それでも走るのが好きやった

それでもな、
当時のオレは
しんどいと思ってへんかった。

サッカーも新聞配達も、
オレにとっては
「働く」やなくて
「走る」やった。

ポストに新聞入れる音。
朝焼けの空。
白い息。

気づいたら、
なんか好きになっとった。

月500円は

どう考えても安い。


まぁ途中からはちゃんと 

普通の配達代もらえる

ようになったけどな。 


最初の500円契約が

すべての始まりやった。



でもな、
オレはここで
「続ける力」
「逃げへん癖」
「自分で動く感覚」

そういうもんを
知らん間に手に入れてた。

◆ 次に欲しくなったもの

走れて、
ボール触れて、
毎日全力。

そうしてオレ、
思い始める。

「これ、もっとやりたい」

走るだけやなくて、
どこかに
ちゃんと属したくなる。

そう。
次は──
部活。

【一言まとめ】
月500円で始まった新聞配達は、
気づけば7年続いてた。
オレは走りながら、
生き方の基礎体力を作ってた。

【次回】
好きだけじゃ通用せえへん世界。
部活という名の、
もう一段深い沼が始まる。





◆ 放課後=神社出勤


なぁ、あの頃のオレ。
ここから先、
お前の放課後スケジュール、
完全に狂うからな。

まずな、
オレの放課後は
もはや「下校」ちゃう。

神社出勤。

ランドセル置く

靴脱ぐ

ボール持つ

神社

流れ作業。
出社判子押してへんだけ。

「おい!神社行くでぇぇ!」
「今日はオレ、無双するからな!!」

……なぁオレ。
誰に向かって宣言しとんねん。
ただの小学生やぞ。

◆ 狂気と自由の境界線

夕暮れの境内。
裸足でボール追いかけて、
膝ズルむけてもノーダメージ。

指先から血ぃ出ても、
「見てみ!オレ、戦士や!!」

いやいや。
戦士ちゃう。
保健室案件や。

でもな、
今思い返したら
あのテンション完全に狂気やけど、
あの場所だけは
ほんまに楽しかった。

オトンの顔色も、
学校の息苦しさも、
鳥居くぐった瞬間、

全部ログアウト。

◆ 神社という安全地帯

ミスしても誰も怒らん。
「今の何やねん!」
「天才の逆やな!」

笑って次のプレー。
はい、リスタート。

ここだけは、
オレがオレでいてええ場所やった。

◆ 紙切れ一枚の破壊力

……そんな自由を
満喫しきってたある日。

事件は突然起こる。

テスト返却日。

紙切れ一枚で
人の人生揺らすな。

先生がニヤッと笑って言う。
「はい、もっと…がんばりましょうねぇ〜」

なぁ先生。
その言い方、
人の心を静かに殺すやつやぞ。

答案見た瞬間、
オレの魂、
一回天井突き破った。

真っ赤。
赤点。
もはや芸術。

◆ 雷と比較と心の断線

家着いたら、
当然の流れで──

雷、ドーン。

「なんやこの点数は!!」
「お兄ちゃん見てみい!」

はい来ました。
比較シリーズ第784話。

胸の奥が
ギュウゥゥって縮んで、
その瞬間な、

オレの中の
「勉強がんばろスイッチ」

スッ……

切れた。

「どうせ何しても怒られるなら、
 もうええわ」

こうして、
オレの勉強ライフは
第1話で完結しました。

全1巻。
短っ!!

◆ だから、そこに逃げた

でもな。
その日の夕方。

神社のグラウンド立った瞬間、
全部どうでもよくなる。

怒鳴り声も、
悔しさも、
先生の
「がんばりましょうねぇ〜」も、

ボール蹴った瞬間、
風と一緒に
全部飛んでいく。

神社の砂まみれの地面は、
オレのメンタルの
避難所やった。

◆ 沼は完成していた

毎日、
裸足で走って、
転んで、
笑って、
また走る。

泥だらけ。
汗ベタベタ。
膝ボロボロ。

でもな、
そこにはちゃんと
生きてる顔したオレがおった。

気づいたら、
勉強よりサッカー。
家より神社。
正解より楽しさ。

怒られる人生より、
笑える時間を
選ぶようになってた。


一言まとめ
赤点と雷で居場所を失ったオレは、
サッカーを「逃げ場」から
「帰る場所」に変えていった。


次回
好きだけじゃ、

済まされへん世界が来る。


はじめての方はこちら👇
【第1話】
「不器用オトンと顔色センサー全開の子ども時代」
https://note.com/regal_wren4369/n/n802c36a0d555

まとめて読む方はこちら👇
【青春編まとめ】
https://note.com/regal_wren4369/n/nc16f5879e57c?sub_rt=share_pw




◆ 世界がちょっとだけ変わり始めた頃


なぁ、あの頃のオレ。
この頃のお前、
ちょっとだけ世界が変わり始めてたやろ。

教室では相変わらずビクビク。
先生の声にビクッ。
後ろの席の笑い声にビクッ。

でもな、
放課後のサッカーだけは違った。

◆ 別人になる時間

ボール蹴ってる時のオレ、
完全に別人。

声出る。
走る。
笑う。
調子乗る。

……誰やねん、それ。

不思議なことに、
その“調子乗りモード”が
ちょっとずつ教室にも
染み出してきたんや。

ほんまに、
ちょっとだけやで。

◆ 教室で起きた小さな事件

授業前、
サッカー仲間と目が合って、

「昨日のシュートさぁ」

って、
自分から話しかけてもうた。

なぁオレ。
それ、事件やぞ。

今までのお前なら、
話しかけられるまで
視線そらしてたやろ。

それがな、
無意識に口が動いた。

理由は単純。

サッカーの話なら、
考えんでも喋れたから。

◆ 初めて顔を出した“素のオレ”

どう思われるとか、
間違えたらどうしようとか、
一瞬だけ
頭から消えてた。

教室で初めて、
“素のオレ”が
ほんの1ミリ、
顔出した瞬間や。

それがな、
めちゃくちゃ嬉しかった。

「あれ?
 オレ、ここにおっても
 ええんちゃう?」

ほんの一瞬やけど、
そう思えたんや。

◆ 潰される音は突然に

休み時間。
サッカー仲間数人で
ワチャワチャ喋ってた。

笑ってた。
声出してた。

……なぁオレ。
その顔、
何年ぶりや。

でもな。
人生って
タイミング悪いねん。

そこに現れる。
例のアイツ。

教室で
いつもチクチク言うてくるヤツ。

そいつが
ニヤッとしながら
こう言うた。

「最近さぁ、
 調子のってるやん」

◆ 一瞬で逆再生

……はい、終了。

さっきまで
ポワッて灯ってた
小さな自信の火。

フッ。

一瞬で消えた。

(あ、出過ぎた?)
(オレ、調子乗った?)
(やっぱりアカンかった?)

笑顔、即収納。
声、即ミュート。
存在感、最小設定。

「……別に」

視線落として、
元のオレ完成。

なぁオレ。
戻るの早すぎるやろ。

◆ 自分で自分を引っ込めた日

その日は、
教室で一言も喋らんかった。

サッカー仲間とも
距離取った。

「また言われたらイヤや」
「調子乗ってるって
 思われたくない」

せっかく出てきた
素のオレを、
自分で引っ込めた。

◆ だから、そこに戻った

でもな。
放課後。

ボール蹴った瞬間、
全部どうでもよくなる。

「あー、これや」

教室で縮こまった分、
グラウンドで
思いっきり走った。

なぁオレ。
この時点で
もう気づいてたやろ。

教室は、
オレを小さくする場所。

サッカーは、
オレを戻してくれる場所。

そら、
ハマるよ。

誰だって、
自分でいられる場所に
逃げたくなる。

【一言まとめ】
一度でも「自分でいられる場所」を知ったら、
人はそこに戻らずにいられない。

【次回】
赤点・雷・親の怒号。

それでもオレは、ボールを選ぶ。


はじめての方はこちら👇
【第1話】
「不器用オトンと顔色センサー全開の子ども時代」
https://note.com/regal_wren4369/n/n802c36a0d555

まとめて読む方はこちら👇
【青春編まとめ】
https://note.com/regal_wren4369/n/nc16f5879e57c?sub_rt=share_pw





◆ 調子に乗る前に言っとく


なぁ、あの頃のオレ。
ここから一気にお前、
調子乗り始めるからな。

先に言っとく。
安心せえ。

それ、
実力ちゃう。

全部、
ま・ぐ・れ・や。

◆ 団子サッカーという名の無法地帯

昼休みのサッカーは相変わらずや。

団子状態。
ワチャワチャ。

ルール?
曖昧。

ポジション?
なにそれ美味しいん?

全員が全員、
ボールしか見てへん。

サッカーというより、
ボール争奪戦。
知性ゼロ。

◆ たまに起きる「事故」

せやけどな、
その中で
一個だけ確実に変わってきたことがある。

それが──
「たまに、うまくいく瞬間」

ほんまに、
た・ま・に、や。

◆ 歴史が改ざんされた瞬間

ある日、
偶然ボールが足元に転がってきて、
なんとなく前に蹴った。

そしたら──

「あれ?」
「抜けた?」

相手、置き去り。

……いや、
たぶん相手が
自分の足に引っかかって
勝手にコケただけ。

でもな、
オレの中では
その瞬間、

歴史が書き換えられた。

【公式記録】
「オレ、ドリブルで相手を抜く」

記念日制定レベル。

◆ 勘違い界のエース誕生

さらに追い討ち事件。

また別の日。
ゴール前で
適当に蹴ったシュート。

力も方向も
何も考えてへん。

ボール、
ゴロゴロ…
ゴロゴロ……

……入った。

キーパー?
知らん。

たぶん砂いじってた。
人生について考えてた可能性もある。

でもその瞬間、
オレの頭の中で鳴った音。

🎉 パァァァン 🎉

「……え?」
「今のオレ、
 ちょっとサッカーしてたんちゃう?」

勘違い界のエース、
ここに誕生。

◆ 一番危険な感覚

なぁオレ。
この
“うまくいった感覚”
これが一番危険や。

一回でも味わうと、
脳が覚える。

「もう一回」
「またあれやりたい」

はい、
中毒の始まり。

◆ 日常が侵食されていく

ここからや。
オレの
日常がおかしくなっていくのは。

学校の行き帰り。
支給されたドッジボール。

普通はな、
手に持つやろ?

オレは違う。

網の袋に入れて、
蹴りながら登下校。

「ドゥンッ」
「ドゥンッ」
「ドゥンッ」

なぁオレ。
通学路で
リズム刻むな。

完全に不審者。

◆ 定期的に起きる田んぼ事件

そして、
定期的に起きる悲劇。

網、
ビリッ。

ボール、
ポーン。

一直線。

田植え前の
田んぼへダイブ。

靴下脱いで
即突入。

泥、冷たい。
足、ズブズブ。
カエル、ゲコゲコ。

なぁオレ。
今なら言える。

それ全部、
楽しかったやろ。

怒られる恐怖より、
ボール失う恐怖のほうが
もう勝ってる。

◆ 世界の中心がボールになる

昼休みも異常。

給食出た瞬間、
ほぼ反射。

味?
知らん。

噛む < 飲み込む。

一日がな、
完全にサッカー中心で
回り始めてた。

午前中=ウォーミングアップ
昼休み=本番
午後=余韻

授業?
副菜。

主食はボール。

◆ もう戻れへん地点

雨の日。

運動場使えへん。

それだけで、
テンション奈落。

窓の外の雨を見て
ため息つく小学生。

なぁオレ。
感情の比重、
完全におかしいぞ。

気づいたら、
サッカーは
「遊び」やなくなってた。

生活の一部。
呼吸と同じ。

なぁオレ。
この時点で、
もう後戻りできへん。

でもな、
この勘違いの勢いは、
次の話で――

【一言まとめ】
まぐれは、才能よりも人を惑わせる。

【次回】
その勘違いが、
「選ばれる側」だと思わせてくる。




◆ いつもはブレーキ全開

普段のオレはな、
何するにも考えてた。

「今の感情、出してええ?」
「このテンション、浮いてへん?」
「ちょっと抑えたほうが無難ちゃう?」

常に、
感情にブレーキかけながら生きてた。

◆ 運動場だけ感情フリーパス

それが運動場では、

喜び → そのまま喜ぶ
悔しさ → そのまま悔しがる

……おい。
感情フリーパスやんけ。

ここでな、
とんでもないことが起きる。

オレ、
自分を忘れてたんや。

いや、怖い話ちゃうで。
ホラーちゃう。

もっと意味分からんやつ。

◆ 「自分」が消える感覚

「自分がどう思われてるか」
「自分がどう見えてるか」

その“自分”が、
サッカー中は消えてた。

残ってるのは、

・ボール
・ゴール
・相手
・味方

それだけ。

なぁオレ。
それ、
いわゆる“ゾーン”ってやつや。

小学生で体験すな。

◆ 気づいたら別人格

でも当時のオレは知らん。

「なんか楽しい」
「時間早すぎ」
「もう終わり!?」

それだけ。

昼休み終わっても
息切れしたまま。

顔真っ赤。
汗ビショビショ。

教室戻って、
急に我に返る。

「……あ、オレ静かなキャラやった」

思い出すの遅いわ。

◆ 切り替え雑すぎ問題

そのギャップよ。

さっきまで
「パス!パス!」
「ナイスー!」
言うてたやつが、

教室入った瞬間、

「……」

無音。

なぁオレ。
その切り替えスイッチ、
雑すぎるやろ。

◆ 神社サッカー名物・裸足制度

ほんでや。
神社サッカー名物、
あの謎ルール。

裸足。

理由はな、
ゴール裏が
ちっさい川やったから。

ゴール決めるたびに
ボールが川に落ちる。

そのたびに、
誰かが
くつ下脱いで
川に入って
ボール取りに行く。

……冷静に考えたら、
毎回誰かが犠牲になるシステム。

(川に落ちひん工夫せえ!!)

結果、
「最初から脱いどこか」
という
小学生らしすぎる結論。

全員裸足。

石ころ?
知らん。
小枝?
踏む。

血出ても、
「これ勲章や!」

……なぁオレ。
それ武勇伝ちゃう。
ただの不注意や。

◆ 暗くなっても帰らない時間

夕方になっても、
誰も帰らん。

「もう一本だけ!」
「ラストな!ラスト!」

そのラスト、
何回目やねん。

気づいたら真っ暗。
神社の灯りが
ポツンと光ってる。

汗だく。
泥だらけ。
裸足。

完全に
不審者一歩手前の集団。

でもな、
その時間が
めちゃくちゃ幸せやった。

◆ 「楽しい」が「好き」に変わる瞬間

気づいたら、
“楽しい”が
“好き”に変わってた。

嫌なことあっても、
ボール蹴ったら消える。

オトンの怒鳴り声も、
学校の息苦しさも、
全部、
ボールの転がる音が
飲み込んでくれた。

◆ ここではオレでいられた

ここでは誰も、
オレを評価せえへん。

ここでは誰も、
オレに正解を求めへん。

「ここでは怒られへん」
「ここでは、オレがオレでええ」

その感覚が、
じわじわ
オレの中に染み込んでいった。

◆ 気づいてなかった真実

なぁ、あの頃のオレ。
まだこの時は
気づいてへんかったやろ。

誤魔化して作った自分より、
何も考えてへん時の自分のほうが、
よっぽど生きてるってことに。

ただ一つだけ、
ハッキリしてた。

「また、サッカーしたい」

それだけ。

ボールは
ただの遊びやなくなってた。

居場所になり始めてた。

──そしてオレは、
この場所に、だんだん本気になっていく。




◆ 逃げ場のつもりやった

なぁ、あの頃のオレ。
最初はな、
ほんまに“逃げ場”のつもりやったやろ。

でもな、
逃げてたはずの場所が、
いつの間にか戻りたい場所になってたんや。

怒鳴られるのもイヤ。
比べられるのもイヤ。
正解の顔するのもしんどい。

教室におっても息できひん。
家におっても空気重たい。

せやからオレは、
放課後になると
家でも学校でもない場所に
自然と足が向いてた。

神社や。

理由なんかない。
ただ、そこに
ちょっと広い場所があって、
ボール蹴れたから。

◆ 生き延びた感覚

ボール蹴ってる時間だけが、
「今日も生き延びたな」
って思える時間やった。

でもな──
気づいたらそれ、
“逃げ”やのうて
完全に“日常”になってたんや。

◆ 何も決めてないのに楽しい

最初はほんまに、
近所の友だち数人で
神社の広場に集まっただけ。

「おい、ボール持ってきたで!」
「よっしゃ、チーム決めよや!」

約束もない。
計画もない。
目標もない。

ただ、
ボールがあって、
人が集まっただけ。

それやのに、
なんであんなに楽しかったんやろな。

◆ 自由の正体

土けむり舞う中、
誰かが蹴ったボールが
フワッて空に上がる。

その軌道を、
みんなで一瞬だけ見上げる。

なぁオレ。
今なら分かる。

あれ、
「自由」や。

◆ 下手くそでも続いた理由

せやけどな、
相変わらずオレは下手くそやった。

蹴ったつもりが
スネ直撃。

トラップしたら
ボールだけ旅立つ。

思った方向に
一切飛ばん。

イライラしてボールに八つ当たり。
「なんで言うこと聞かへんねん!」
って、ボールに説教。

でもな、
不思議なもんで、
ちょっとずつ変わっていく。

足の甲に
ピタッて吸いつく瞬間。

狙ったとこに
スッて転がる瞬間。

たったそれだけで、
テンション爆上がり。

なぁオレ。
ハードル低すぎて可愛いな。

◆ 別人格の誕生

この頃からや。

サッカーしてる時のオレ、
今思えば
完全に別人格やった。

・声デカい
・よく走る
・よく転ぶ
・めっちゃ笑う

誰やねんお前。

でもな、
本人は全然そんな自覚なかった。

なぜなら──
自分のこと、
一切考えてへんかったから。

◆ 見られる自分を忘れた時間

なぁオレ。
これ、めちゃくちゃ大事な話やで。

お前な、
サッカーしてる時だけ

「どう見られてるか」

を、
一切考えてへんかった。

パス来たら蹴る。
取られたら追う。
外したら「あぁー!」って叫ぶ。

以上。

感情が、
そのまんま外に出てた。

◆ 逃げ場から居場所へ

気づいたら、
ボールは
ただの遊びやなくなってた。

逃げ場やったはずの場所が、
いつの間にか
「戻ってきたい場所」になってた。

怒られへん。
比べられへん。
正解もいらん。

ここでは、
オレは
考えんでええ。

ただ走って、
ただ蹴って、
ただ笑うだけでよかった。

それだけで、オレは少しだけ生き返ってた。




あの頃のオレは、

毎日なにかに怯えながら学校に来てた。
なお、敵の正体は不明。


◆ 今日もレーダー起動



なぁ、あの頃のオレ。
相変わらずやな。

学校来ても、
まず最初にやることが
「人の目チェック」。

席着いた瞬間、
レーダー起動。
空気測定。
機嫌観測。

忙しすぎるやろ。 NASAか。
打ち上げ前より緊張しとるやん

誤魔化すスキルも
だいぶ仕上がってきて、

愛想笑い。
相づち。
無難コメント。

フルコンボ。

一見な、
「クラスに馴染んでる風」
には見えてたと思う。

でも中身はどうや?

息、
めっちゃ浅い。

酸素足りてへん。
心、常に軽く窒息状態。

小学生がなる症状ちゃうでそれ。
保健室でも治らんタイプや。

◆ 生きてるフリ



なぁオレ。
それ生きてる言うより、
「止まらんように動いてる」だけや。

そんなオレにもな、
一つだけあったんよ。

「ここなら大丈夫」
って思える時間が。

それが──
朝の運動場。

◆ 今思うと謎ルール



今思い返すとやで?
あの学校のルール、
冷静に考えたら
だいぶ意味分からん。

町内ごとに集団登校して、
朝8時前後から、
約20分。

全校生徒、
ほぼ全員──
強制運動。

なぁオレ。
今なら言える。

「登校=即運動」
どんな教育方針やねん。

しかもその日のメニュー、
決めるのは上級生。

完全縦社会。
小学生版・封建制度。

◆ それでも救われた理由



逆らったら即、
「ノリ悪い奴」
の烙印。

選択肢はない。
従うか、
空気になるか。

内容はだいたい、

ドッジボール。
鬼ごっこ。
たまに誰得かわからんリレー。

……今思うと、
普通にハードや。

でもな。

教室で
あんなに息詰まってたオレが、
この時間だけは
ちょっと違った。

理由はめちゃくちゃシンプル。

運動には
ルールがある。

◆ ルールがある安心



やったらあかんことが決まってる。
やったらええことも決まってる。
空気、読まんでええ。

最高か。
ルールあるってだけで、
こんな安心するって何やねん。
オレ、どんだけ曖昧世界で生きてきとんねん。

教室では
「今どう振る舞うべきか」
を常に考えてたオレが、

運動場では、

ボール来た。
走る。
投げる。

以上。

脳、休憩。
思考、停止。
生存確認。

なぁオレ。
この感覚、
久しぶりやったやろ。

◆ サッカーとの距離が縮まる



そんな流れでな、
サッカーとの出会いは
ほんまに何気なかった。

昼休みの定番は、
ドッジボールかサッカー。

最初はドッジ多め。

でもな、
だんだん空気が変わる。

理由は単純。

ドッジは
コート作らなアカン。
当たったら即退場。
一瞬で
「見学者」。

外野でボール待ちながら、
人生について考え始める。

……小学生が。

でもサッカーは違う。

下手でも、
とりあえず走れる。
ボール1個で
全員参加。

◆ 身体が先に笑った



ルールもポジションも、
正直よう分かってへん。

オフサイド?
なにそれ。
美味しいん?

全員でボール追いかける、
伝説の団子サッカー。
戦術?あるかい。
とりあえず追え。以上。


でもな。

ゴール決めた時、
理由分からんけど、
めっちゃ嬉しかった。

褒められたからちゃう。
評価されたからちゃう。

身体が
先に喜んでた。

教室では
息止めてたオレが、

運動場では
ハァハァ言いながら、
ちゃんと息してた。

◆ 始まりは逃げ場



なぁ、あの頃のオレ。

これな、
もう始まってるで。

このあとオレ、
サッカーに
だいぶ持っていかれる。

でもこの時はまだ、
ただの「逃げ場」。

正解の顔、いらん。
気ぃ使わんでええ。
ミスしても怒鳴られへん。

ただ走って、
蹴って、
息切れしてただけ。

……それだけで、十分やったんやけどな。





◆ 正直キャンペーン、開催



なぁ、あの頃のオレ。
お前が「誤魔化す技術」を
本格的に身につけた日、
ちゃんと覚えてるか?

そうや。
あの日や。

オトンが家で使っとった、
コンクリートをならすための
あの“命より大事そうな”コテを──
お前が思いっきり踏んで、
「バキッ!!」っていかせた日。

今思い返しても、
人生の分岐点にしては
効果音が派手すぎる。
音響担当、気合入りすぎやろ。

◆ オトンという環境



休みの日のオトンはな、
ヒマさえあったら掃除して、
コンクリートをこねくり回す人間やった。

午前=掃除。
午後=左官。
機嫌いい日=左官。
機嫌悪い日=さらに左官。

……最終的に
何を目指してたんかは知らん。

しかもやで。
子どもが走り回る庭に、
その大事なコテを
ポンって置いとく判断力。

それはそれで
なかなか攻めてる。

◆ 桜の木理論という地雷



とはいえ、
踏んだオレが悪い。
それは分かっとる。

でもな、
当時のオレには
ちょっと前に仕入れた
一つの“理論”があった。

ジョージ・ワシントンの
「桜の木理論」。

正直に言ったら褒められる。
正直者は許される。
世界は正直で回っている。

……誰やこの理論、
小学生に刷り込んだやつ。

しかもそれを、
アメリカ初代大統領から
そのまんま
日本の鬼瓦オトンに
適用しようとするという、
致命的判断ミス。

◆ 正直の結果



それでもお前は
勇気出したよな。

震える声で言うた。

「……オトン、
 オレが踏んで壊してもうた」

心の中ではもう、
「正直者オレ、表彰状授与」
くらいの勢い。

拍手喝采。
感動BGM。
ワシントン再来。

結果。

雷、落ちた。

「何しとんじゃボケェ!!」

終了。

褒め言葉ゼロ。
感動ゼロ。
正直ポイント、即没収。

それどころか、
「正直に言えば
 許されると思っとんのか!!」
って、
正直に言った罪まで
上乗せペナルティ。

◆ 学習完了



なぁオレ。
正直キャンペーン、
初日で打ち切られたな。

この瞬間、
はっきり学習したよな。

「正直=安全」ちゃう。
「正直=ダメージ倍増」。

その時や。
オレの中で
カチッて音したん。

人格のスイッチ。

◆ 誤魔化しスキル、実装



そこからや。
誤魔化しスキルが
本格稼働し始めたんは。

家では、
怒られそうなことは言わん。
聞かれても曖昧に返す。
「知らん」「覚えてへん」を多用。
場合によってはウソ。

会話というより、
煙幕散布。

学校でも同じ。
雰囲気悪くなりそうなことは言わん。
意見聞かれたら、
「……みんなと同じで」

はい完成。
思考停止型・平和回答。

◆ 誤魔化しの代償



なぁオレ。
それ意見ちゃう。
避難や。

仲良くなる努力やなくて、
怒られへん努力ばっかり
してたで。

誰ともケンカせえへん。
誰にも強く嫌われへん。
でも、誰とも深くつながらへん。

……うっす。

人間関係、
カルピス頼んだら
水だけ出てきた感じ。

でも当時のオレにとっては、
これが最適解やった。

目立たんかったら怒られへん。
怒られへんかったら安全。

人生=
地雷回避ゲーム(セーブ不可)。

こうしてお前は、
その場を誤魔化す才能だけ
順調に育てていった。

──生き残るためにな。





※第6話です。


じいちゃんが言うた。

「素直に生きたらええ」

その言葉を胸ポケットに入れたまま、
オレはまた学校へ戻った。

……ただな。

胸ポケットに入れただけで
人間が変わるなら、
この世に自己啓発本いらんねん。


◆それでも学校に戻る選択

なぁ、あの頃のオレ。

第5話で一回折れて、
オナラ付き人生訓もらって、
それでもまた学校に行くってな。

お前、根性はある。
方向性は迷子やけど。

校門が見えた瞬間、
胃がキュッてなる。

「今日は大丈夫やろか」
「また変な空気ならんやろか」
「昨日の続き、再放送ないよな?」

……なぁオレ。
人生、常にリプレイ恐怖症やんけ。


◆世界は即死ゾーンじゃなかった

意外なことに、
みんな普通やった。

「体大丈夫なん?」
「昨日休んでたやん」

優しい声もある。

なぁオレ。
世界、思ってたより即アウトちゃうかった。
いきなり退場させられるわけでもなかった。

……ただしな。


◆どこにでもいる“地雷設置係”

必ず一人はおる。

空気読まんレジェンド。

「え、ズル休みしてたんやろ?」

来た。
ピンポイント爆撃。

心の中で即座に
“反論会議”が始まる。

(違う違う違う)
(説明せな)
(でも説明って何?)

結果、

「いや…まぁ…」

……なぁオレ。
その“まぁ”に何を込めた。


◆悟り「このままやと心が先に死ぬ」

その瞬間、悟る。

「あ、これ長期戦や」

身体は出席。
心は欠席。

心の出席番号、
ずっと呼ばれてへん。

このままやと、
心が先に退学する。

せやから考えた。

どうすれば怒られへんか。
どうすれば突っ込まれへんか。
どうすれば存在が薄くなれるか。

発想がもう、
忍者養成学校や。


◆究極の生存戦略、誕生

そして完成する。

名付けて――

置き物系男子。

響き、最弱。

戦闘力ゼロ。
防御力だけ異常進化。


◆置き物マニュアル

基本行動パターン。

・全力うなずき
・否定ゼロ
・意見は心の中だけ
・「へぇ〜」の使い回し

語彙は三種の神器。

「へぇ〜」
「そうなんや〜」
「マジで?」

なぁオレ。
お前の人生、
リアクション芸人か。


◆感情は腹八分目

喜びすぎたら浮く。
落ち込みすぎたら重い。
怒ったら終わる。

よって、
感情は腹八分目。

テンションは常温。
ぬるめ設定。

……どこの温泉や。


◆成功。でも代償あり

この戦略、
実は成功する。

怒られへん。
突っ込まれへん。
目立たへん。

「おとなしいけど害はないやつ」

安全圏、確保。

なぁオレ。
前より生存能力だけ無駄にレベル上がってるやん。

ただな。

その代わりに消えていった。

「これ好き」
「それイヤ」
「ほんまはこうしたい」

全部、
心の押し入れの奥。

「あとで出すから」って
言いながら、

鍵かけてるの、
自分やった。


なぁ、あの頃のオレ。

この頃からや。

お前はもう、

“生きる”より先に
“生き残る”を選び始めてた。

静かに。
誰にも気づかれずに。





※第10話まで公開しました。

サッカーにハマり始めた少年の物語、ここから加速します。

▶第1話 「不器用オトンと顔色センサー全開の子ども時代」
https://note.com/regal_wren4369/n/n802c36a0d555?sub_rt=share_pw

▶第2話 「自己否定、フル装備完了のオレ」
https://note.com/regal_wren4369/n/n18247cd7edb8?sub_rt=share_pw

▶第3話 「気ぃ使いすぎて、笑うのも怖なったオレ」
https://note.com/regal_wren4369/n/n36d58abca50e?sub_rt=share_pw

▶第4話 「勇気出したら、心ズタズタにされたオレ」
https://note.com/regal_wren4369/n/n4beb6b571ecc?sub_rt=share_pw

▶第5話 「とうとう学校を休んでしまったオレ」
https://note.com/regal_wren4369/n/ncfd53ce43eec?sub_rt=share_pw

▶第6話
「生きるより、まず生き残ることを選んだオレ」
https://note.com/regal_wren4369/n/nb83492c44b0f?sub_rt=share_pw

▶第7話
「その場を誤魔化す才能が伸びたオレ」
https://note.com/regal_wren4369/n/n3f30b83baa9c

▶第8話
「正解の顔を探してたオレが、やっと息できた話」
https://note.com/regal_wren4369/n/ndc82b5398c3f

▶第9話
「気づいたら、ボールが居場所になってたオレ」
https://note.com/regal_wren4369/n/nda97c06ce2ce

▶第10話
「自分を忘れたら、オレが1番うるさかった」
https://note.com/regal_wren4369/n/ncfb08c547f50