夢見てズレて転び続けたオレの黒歴史ノート -2ページ目

夢見てズレて転び続けたオレの黒歴史ノート

【連載】

なぁ、あの頃のオレ。
ちゃんとできへん人生の話

青春編 (77話完結済)
社会人編 現在執筆中

第1話はこちら
https://note.com/regal_wren4369/n/n802c36a0d555



ようやく走れるようになったオレ



なぁ、あの頃のオレ。

数日経った。

走る。
止める。
蹴る。

また走る。

なぁオレ。

イタリア来て分かった。

サッカーって、
こんな走る競技やったんか。

お前な。

来る前は、

華麗なドリブル。
芸術的なパス。
漫画みたいなシュート。

そんなもんばっかり想像してた。

でも現実👇

走る。

止める。

蹴る。



走る。

止める。

蹴る。



また走る。

なぁオレ。

ほぼ陸上部や。

でも不思議なもんで、

身体は慣れてくる。

息も前ほど上がらん。
足も動く。

人間って、

環境の動物なんやなぁ。

なぁオレ。

急に悟った感じ出すな。

イタリアの動物園

レッサーパンダみたいな顔したヤツ。

特別飛び抜けてるわけやない。

でも全部うまい。

トラップ。
パス。
ドリブル。
シュート。
守備。

全部平均以上。

弱点どこやねん。

神様、

配分ミスってる。

小柄なハリネズミみたいなヤツもおった。

コイツのドリブルは意味不明や。

目の前おる。
距離も近い。

なのに取れへん。

絶対ボールに接着剤ついてる。

同じ競技と思われへん。

そしてゴリラマン。

肩幅広い。
胸板厚い。

当たられたら吹っ飛ぶ。

いや、

記憶飛ぶ。

サッカー選手というより、

戦闘員やった。

もう人間というより、

ゴリラの親戚や。

最後にナポリ出身のヤツ。

顔だけ見たら完全にキリスト。

髪モジャモジャで長い。
ヒゲ濃い。
彫り深い。

でもな。

神々しさが無い。

ちょっとアホそう。

しかもちょっとぽっちゃり。

だからオレの中では、

私生活だらしない方のキリストやった。

正直サッカーはそんなにうまくなかった。

それでも皆から好かれてた。

いつも笑ってた。

チームのムードメーカーやった。

練習中に戦争始まる

その日や。

ゴリラマンが
ドリブルしてた。

すると――。

キリスト。

勢いよくスライディング。

ズザァーー!!

なかなか激しい。

いや、

だいぶ激しい。

ゴリラマン、
バランス崩す。

倒れそうになる。

ほんで次の瞬間。

「オイ!!」

ゴリラマン激怒。

キリストも立ち上がる。

何か言い返してる。

もちろん意味は分からん。



でも分かる。

絶対怒ってる。

ゴリラマン前出る。
キリスト引かへん。

顔近い。

近い近い。

もう鼻当たる。

なぁオレ。

もう殴る距離や。

オレの頭の中👇

え?
どうなるん?

殴り合い?
チーム分裂?
退学?

警察呼ぶ?
大使館案件?

周りも一気に集まる。

なぁオレ。

お前の頭の中だけ、

もう映画一本
完成してる。

そしてみんな止める。
引き離す。

完全に練習どころやない。

なぁオレ。

想像だけ一流や。

イタリア来てまだ数日。

陽気で明るくて仲良し。

そんなイメージやった。

でも目の前では、

普通に一触即発や。

勝手に心配するオレ

結局、

周りが止めて練習再開。

でもオレは気になる。

絶対まだ怒ってる。
絶対あとで揉める。

晩ご飯どうするんやろ。

同じテーブル無理やろ。
寮帰っても気まずいやろ。

なぁオレ。

お前だけ勝手に続編作るな。

本人らより心配してる。

晩飯どうする。
パン投げるんちゃう?
ナイフ飛ぶ?

寮分ける?
強制送還?
ワールドカップ中止?

シャワー浴びてても気になる。
飯の時間まで気になる。

オレの頭の中だけ、

昼のケンカ継続中やった。

夜になると

そして夜。

食堂へ向かった。

すると――。

ゴリラマンとキリスト。

並んで座ってる。

しかも。

めちゃくちゃ笑ってる。

え?

何で?

昼ケンカしてなかった?

肩組んでる。
笑ってる。

パン投げ合ってる。

普通に仲ええやん。

なぁオレ。

昼から心配してたん、

お前だけや。

チーム崩壊。
殴り合い。
退学。

勝手に全部想像してた。

でも本人ら、

もう終わってた。

なぁオレ。

ケンカ終わってたんちゃう。

終わってへんかったんは、

お前の頭の中だけや。

返してほしい。

昼から心配した

オレの時間。

しかもな。

あまりにも普通に笑ってるから、

ちょっと腹立ってきた。

今からでもええ。

もう一回やり合え。

オレの心配、

無駄にするな。

結論

イタリア人は不思議やった。

言いたいことは言う。

ぶつかる時はぶつかる。

でも終わったら終わり。

それ以降は持ち越さへん。

オレはずっと、

嫌われへんように。
揉めへんように。
空気壊さんように。

そんなことばっかり考えてた。

でも彼らは違った。

ケンカしても仲間。
ぶつかっても仲間。

なぁオレ。

あの日学んだんは、
サッカーやなくて、
人とのぶつかり方やった。

まぁその時のお前、

そんなことより、

返してほしかったんは、

心配した時間やったけどな。

一言まとめ
昼は戦争。夜は親友。
一番引きずってたんは、オレやった。

次回
気付けばチームのおもちゃやったオレ。


朝から怒られるオレ

なぁ、あの頃のオレ。

朝起きた瞬間や。

同室のイタリア人、
めちゃくちゃ怒ってる。

何言うてるか、
全然分からん。

でもな。

怒ってることだけは分かる。

なぁオレ。

外国語能力ゼロでも、
怒られてる時だけは分かる。

ほんでお前、
必死に考える。

昨日の梅干しか。
マジックか。
スーシーか。

心当たり、
多すぎる。

なぁオレ。

数日で問題児なり過ぎや。

でも違うっぽい。

どうやら夜中、
お前が何かやらかしたらしい。

なぁオレ。

問題はそこからや。

寝てた本人、
何も覚えてへん。

同室の子は必死に説明する。
お前は必死に聞く。

でも言葉分からん。

結果。

全員モヤモヤしてる。

なぁオレ。

外交問題や。

たぶん寝言やったんやろ。

たぶんやで。
証拠は無い。

でもな。

昨日の梅干しテロで
テンション上がり過ぎてたし、
十分ありえる。

しかも身振り手振り見てたら、
両手上げてたっぽい。

天井見ながら、
何か唱えてたっぽい。

なぁオレ。

白髪じいじの呼吸法、
寝ながら復習するな。

もしホンマやったら、
夜中。

知らん東洋人が、
ベッドの上で、
両手上げながら、
何か唱えてる。

なぁオレ。

同室の子からしたら、
普通にホラーや。

しかも隣のベッドや。

逃げ場ない。

なぁオレ。

悪魔召喚疑われても
文句言われへん。

外交問題ちゃう。

悪魔問題や。

ようやくサッカー

ほんで練習。

なぁオレ。

ようやくや。

やっとサッカーや。

ここ数日の思い出。

呼吸法。
改名。
マジック。
金玉。
梅干し。

なぁオレ。

サッカー要素、
どこ置いてきた。

でもな。

この日から空気変わる。

ボール使う練習が始まった。

ほんで驚いたんが、
内容や。

止める。
蹴る。
止める。
蹴る。

ひたすら基本。

相手より先にボール触る。

また基本。

さらに基本。

なぁオレ。

もっと派手なん想像してた。

オーバーヘッドとか。
必殺シュートとか。

でも違う。

世界レベルほど、
基本から逃げへん。

白髪じいじのお手並み拝見

ほんで出てきた。

白髪じいじ。

なぁオレ。

またお前か。

今日は何させられるんや。

前回は呼吸法。

正直、
効いたかどうかは
今でも分からん。

なぁオレ。

その時のお前、
まだ思ってる。

「呼吸法のじいさんやろ?」

って。

失礼にも程がある。

でも今回は違う。

ボール持ってる。

なぁオレ。

ようやく本業か。

ほんでお前、
ちょっと思ってる。

「まぁ見せてもらおか」

なぁオレ。

何で上からやねん。

体力テストで死にかけた側やぞ。

じいじが持ってきたんは、
上からヒモで吊ったボール。

ブランコみたいな状態や。

ほんで。

ポン。
ポン。
ポン。
ポン。

同じ場所。
同じリズム。

全然ズレへん。

なぁオレ。

ボールと会話してる。

しかもじいじ、
めちゃくちゃ涼しい顔。

なぁオレ。

その顔が一番腹立つ。

そしてオレの番

ほんでオレもやる。

ポン。

……

あれ?

なぁオレ。

思ったよりムズい。

でもな。

一回目や。

こんなん誤差や。

ほんで二回目。

ポン。

……

あれ?

三回目。

……

あれっ?

四回目。

……

あれっ!?!?

なぁオレ。

出来ひん。

全然出来ひん。

さっきまで
「まぁ見せてもらおか」
みたいな顔してた男、
今めちゃくちゃ焦ってる。

しかも横見たら。

白髪じいじ。

ポン。
ポン。
ポン。
ポン。

なぁオレ。

何でやねん。

ボール、
オレのだけ反抗期や。

ほんでお前、
だんだん必死になる。

体動かす。
位置変える。
リズム変える。

でも出来ひん。

なぁオレ。

サッカーちゃう。

パニックの連鎖や。

止めるだけが止まらへん

ほんで次。

トラップ練習。

また白髪じいじが見本見せる。

ボール蹴る。

戻ってくる。

ほんで。

ピタッ。

なぁオレ。

止めてへん。

吸い付いてる。

ボールが
「ここです」
言うて止まってる。

ほんでオレ。

真似する。

戻ってくる。

ドン。

なぁオレ。

止まらん。

ボールめちゃくちゃ揺れてる。

前。
後ろ。
左右。

大暴れ。

しかも吊ってるから、
逃げへん。

何回失敗しても、
また戻ってくる。

なぁオレ。

ミスのおかわり、
無限や。

逃げ場ない。

サッカー人生で初めて、
ボール吊るした人を恨んだ。

発明者、
どこにおんねん。

ほんで白髪じいじ。

またピタッ。
またピタッ。
またピタッ。

なぁオレ。

その技、
前回の呼吸法より先に教えてくれ。

次はヘディング

ほんで次。

ボールを
頭より少し高い位置に上げる。

ジャンプ。

ヘディング。

じいじ。

ポン。
ポン。
ポン。
ポン。

同じ場所。
同じ高さ。
同じリズム。

なぁオレ。

じいじ、
機械なんか。

ほんでじいじ見る。

また涼しい顔。

なぁオレ。

もうええ。

その顔見てたら腹立つ。

白髪何本か、
むしったろか思た。

ほんでオレ。

ポン。

二回目。

来ない。

三回目。

もっと来ない。

なぁオレ。

一回目で終わる競技ちゃうねん。

当てるだけちゃう。

どこに当てるか。
どこへ返すか。

全部計算やった。

それまでのお前、
ヘディングって
「当たったら成功」
ぐらい思ってた。

なぁオレ。

発想が幼稚園児や。

結論

なぁ、あの頃のオレ。

お前な。

イタリア来て、
初めてサッカーの凄さ見たな。

派手な技ちゃう。

基本や。

止める。
蹴る。
当てる。

その精度が異常やった。

ほんで白髪じいじ。

呼吸法見た時は、
「何やこのじいさん」思った。

でもな。

ボール持った瞬間、
オレの方が子どもやった。

なぁオレ。

世界との差って、
必殺技ちゃうねん。

基本を何百回でも
同じように出来ることやった。

一言まとめ
白髪じいじ、
呼吸法は謎やったけど
サッカーは本物やった。

次回

一番引きずってたんはオレやった。






昨日の敗北、まだ忘れてへん

なぁ、あの頃のオレ。

お前な。
昨日な。

ちびっ子達に、
散々笑われた。

発音の勉強してただけや。

真面目にやってただけや。

それやのに。

爆笑。

また爆笑。

さらに爆笑。

なぁオレ。

笑われる16歳。
なかなか無い。

……いや。

正確には違う。

あの時のお前。
まだ意味知らんかった。

ほんで後で辞書引く。

「coglione」

……。

……。

金玉。

なぁオレ。

あの日の授業。
だいぶ終わってた。

しかも真顔で連呼してた。

そら笑う。

ほんで翌日や。

オレは思った。

「仕返ししたろ」

なぁオレ。

発想が小学生や。

日本代表、反撃開始

でもな。
オレも考えた。
昨日やられっぱなしや。

日本代表として。

男として。

日本の魂を背負って戦う。

なあオレ。

背負い方、
だいぶ間違ってるわ。

ほんで思い出した。

スーツケースの奥。

日本から持って来てた。

梅干し。

なぁオレ。

武器の選択、
だいぶ渋い。

もっと他あったやろ。

でもな。
お前には確信あった。

ちびっ子ら、
絶対知らん。

ほんで絶対ビビる。

なぁオレ。

性格、
だいぶ悪なってる。

完全に罠や

ちびっ子達、
興味津々。

「それ何?」

みたいな顔。

一人が匂い嗅ぐ。
もう一人も嗅ぐ。
みんな顔見合わせる。

なぁオレ。

まだ誰も警戒してへん。

ほんでお前。

まず自分で食う。

パクッ。

平然。

ほんで。

「ブオーノ!!」

ほっぺたグリグリ。

めちゃくちゃ美味いアピール。

なぁオレ。

演技派やな。

昨日まで

「コリオーネ!」

言うて笑われてた男と、
同じとは思えへん。

人間、
ホームゲームなると強い。

しかもお前、
顔色一つ変えへん。

梅干し慣れてる日本人、
ここだけ圧倒的有利や。

ちびっ子達。

「オォォォ!!」

目キラキラ。

なぁオレ。

完全に信用されてる。

ほんでお前、
その信用を利用してる。

なかなか最低や。

イタリア崩壊

ほんでお前。

梅干しを4人に配る。

なぁオレ。

配り方がもう危険や。

ちびっ子達、
完全に信じてる。

ほんで4人同時に。

パクッ。

……。

……。

……。

一瞬、

静かになる。

なぁオレ。

脳みそが
まだ処理追いついてへん。

ほんで次の瞬間。

「ウワァァァァ!!」

「ノォォォォ!!」

「マンマミーア!!」

「アアアアア!!」

4人同時爆発。

なぁオレ。

テーブル一個で
イタリア崩壊してる。

しかも顔。

眉毛。

鼻。

口。

全部真ん中寄ってる。

一人は水探してる。

一人は口パクパクしてる。

一人は固まってる。

なぁオレ。

そんな顔、
サッカーで負けてもならん。

ほんでお前。

大爆笑。

昨日まで笑われる側。

今日は笑わせる側。

人生、
一日で立場変わる。

被害拡大、そして謎

でも終わらへん。

最初に食ったちびっ子。

急にオレ側来る。

さっきまで

「ノォォォ!!」

言うてたのに、

今度は友達連れて来る。

なぁオレ。

お前、
さっきまで被害者やったやろ。

ほんで二人で。

「ブオーノ!!」

完全に共犯や。

しかもな。

数分前まで
顔グシャグシャやったヤツが、

今度はめちゃくちゃ
ええ顔してる。

悪い顔覚えるん、
早すぎる。

ほんで友達来たら、
また食わせる。

友達叫ぶ。

みんな笑う。

また次連れて来る。

食う。

叫ぶ。

笑う。

なぁオレ。

日本人一人と
イタリア人5歳児。

国際犯罪チーム結成されてる。

昨日は先生。

今日は共犯。

昇格スピード、
だいぶ速い。

しかも驚いたんは、
その後や。

さっきまで叫んでた子ら、
また来る。

なぁオレ。

学習能力ゼロや。

「もう一個!」

みたいな顔してる。

なぁオレ。

その頃にはもう、
仕返しとか
どうでも良くなってた。

オレも笑う。

ちびっ子達も笑う。

梅干しだけが
被害受けてた。

もしかしたら、

ちびっ子らも同じやったんかもしれん。


自分が食うより、
友達のリアクション見て笑う方が
面白かったんや。

ほんでまた新しい子連れて来る。

食う。

叫ぶ。

笑う。

また連れて来る。

食う。

叫ぶ。

笑う。

なぁオレ。

途中から
梅干し試食会ちゃう。

リアクション選手権や。

結論

なぁ、あの頃のオレ。

お前な。

昨日は発音で笑われた。

今日は梅干しで笑わせた。

笑われるんも、
笑わせるんも、
結局どっちも楽しかった。

昨日は笑われた。

今日は笑わせた。

なぁオレ。

それだけで、
もうちょっと仲良くなれた気がした。

なぁオレ。

異文化交流って、
案外こんなもんかもしれんな。

いや。

そんなことはない。

たぶん違う。

まぁ今回に関しては、

異文化交流ちゃう。

梅干しテロや。

一言まとめ
昨日は金玉。
今日は梅干し。
イタリアで何を学んでるんやオレ。

次回】

白髪じいじに現実見せられたオレ。



オレにも学ぶ気はある

なぁ、あの頃のオレ。

お前な。

イタリア来て数日。

ちびっ子達とは
だいぶ仲良くなった。

「スーシー!」

呼ばれる。

手振られる。

部屋呼ばれる。

膝乗られる。

なぁオレ。

だいぶ人気者や。

でもな。

一つだけ問題ある。

会話。

全然分からん。

お前。

「オー!」

「ベーネ!」

「グラッツィエ!」

以上や。

日本で倒せへんかった敵

ほんでお前、

ふと思う。

「イタリア語、
ちゃんと覚えたいな」

日本おる時、

一応勉強してた。

参考書。

ノート。

カセットテープ。

一応な。

一応やで。

でもな。

ずっと勝てへん相手おった。

そいつの名前。

「gli」

なぁオレ。

たった三文字で
人を絶望させるな。

先生は簡単そうに言う。

テープも簡単そうに言う。

でもな。

オレが言うたら、

全然違う音なる。

何回やっても無理。

結局、

雰囲気で放置した。

なぁオレ。

問題先送り癖、

昔からや。

ちびっ子先生誕生

ほんである日。

ちびっ子達と
遊んでる時や。

お前。

「イタリアーノ!」

言うて、

勉強したいアピール。

すると。

ちびっ子達、

急に先生になる。

なぁオレ。

先生の平均年齢、

たぶん5歳。

ほんで一人が言う。

「famiglia!」

みんな復唱。

「famiglia!」

なぁオレ。

たぶん家族や。

知らんけど。

ほんでオレも言う。

「ファミーリア!」

すると。

「ノーノーノー!!」

笑われる。

なぁオレ。

まだ一発目やぞ。

famigliaが倒せない

ちびっ子。

「ファミーリア!」

オレ。

「ファミーリア!」

ちびっ子。

爆笑。

もう一回。

「ファミーリア!」

「ファミーリア!」

爆笑。

なぁオレ。

お前な。

めちゃくちゃ真剣やねん。

でもな。

ちびっ子先生達、

全員笑ってる。

一人なんか、

腹抱えて笑ってもうてる。

ほんで何回目かで気付く。

原因。

「gli」

や。

なぁオレ。

やっぱりお前か。

「リ」と「ギ」の間みたいな発音。

日本で倒せへんかった敵、

イタリアまで追いかけて来てる。

先生達の最終兵器

ほんで先生達、

考えたんやろな。

もっと簡単な単語で
教えたろって。

ほんで出てきたんが。

「coglione」

なぁオレ。

今思えば、

だいぶ終わってる。

でも当時のお前、

意味知らん。

ただただ真面目。

ちびっ子。

「コリオーネ!」

オレ。

「コリオーネ!」

ギャハハハハ!!

大爆笑。

オレ。

「え?」

ちびっ子。

「コリオーネ!」

オレ。

「コリオーネ!」

ギャハハハハ!!

なぁオレ。

どこが違うんか

全然分からん。

オレだけ真剣

ちびっ子。

「コリオーネ!」

オレ。

「コリオーネ!」

爆笑。

ちびっ子。

床転がる。

オレ。

「え?」

また言う。

「コリオーネ!」

爆笑。

なぁオレ。

お前の耳には、

全部同じや。

先生達だけが違い分かってる。

完全に置いて行かれてる。

だからもう一回聞く。

ちびっ子。

「コリオーネ!」

オレ。

真剣に聞く。

真剣に真似する。

「コリオーネ!」

ギャハハハハ!!

なぁオレ。

勉強してる側と、

笑ってる側の温度差エグい。

ほんでお前、

途中から意地なる。

「コリオーネ!」

違う。

「コリオーネ!!」

違う。

「コリオーネェェ!!」

違う。

なぁオレ。

発音より気合いで突破しようとするな。

ほんで。

発音。

復唱。

爆笑。

発音。

復唱。

爆笑。

発音。

復唱。

爆笑。

廊下から知らんオッサンまで笑ってる。

なぁオレ。

勉強ちゃう。

公開処刑や。

温度差事故発生

先生達。

涙出るほど笑ってる。

一人なんか、

床転がってる。

でもな。

オレだけ真顔。

お前だけ、

語学の勉強してるつもりや。

なぁオレ。

この時のお前、

まだ知らん。

何回も。

何十回も。

汗だくで発音練習してたその単語。

意味。
金玉やった。

今思えば。

あの子ら、
絶対分かって教えてた。

なぁオレ。

ほんで周りから見たら、

真顔で金玉連呼してる

16歳の日本人や。

そら笑う。

結論

なぁ、あの頃のオレ。

お前な。

その日、

イタリア語は

ほとんど覚えられへんかった。

でもな。

ちびっ子達とは、

昨日より仲良くなった。

言葉は増えへんかった。

でも笑い声は増えた。

なぁオレ。

国も違う。

言葉も違う。

でもな。

一緒に笑った時間だけは、

ちゃんと通じてた。

まぁその友情、
金玉から始まったんやけどな。

なぁオレ。

あの日は笑われてると思ってた。

今思えば、
一緒に笑ってたんやな。

一言まとめ
イタリア語覚えようとして、
なぜか金玉だけ発音練習した。

次回
日本から持ってきたもので、
ちびっ子に仕返しするオレ。



朝から営業開始

なぁ、あの頃のオレ。

次の日の朝。
部屋のドア。

コンコン。

開ける。

ちびっ子達。
第一声。

「スーシー!!」

「ペン!!」

「ペン!!」

なぁオレ。

お前。
完全にマジシャン認定されてる。

昨日までは、
ただの日本人。

今日はもう、

移動式マジックショーや。

しかも朝からや。

営業時間、

早すぎる。

大喜びのちびっ子たち

ほんで始まる。

昨日大ウケした、
ペン曲げるマジック。

ペン持つ。

フニャフニャ。

曲がって見える。

すると。

「ウオォォォォ!!」

「アアアアア!!」

「オォォォォ!!」

大歓声。

なぁオレ。

毎回同じリアクション。
しかも全力。

テレビショッピングでも、

もうちょい落ち着いてる。

ほんでお前。

調子乗る。

またやる。

今度はペンが、
短くなったように見えるやつ。

すると。

「ウオオオオオ!!!」

「アアアアア!!!」

「オォォォォォ!!!」

なぁオレ。

目の錯覚や。

でも反応は。
石油掘り当てたレベル。

ただのペンやぞ。

ほんでさらに、
コインマジック。

右手から左手に、
コインを移動。

すると。

「ノォォォォォ!!!」

「エェェェェェ!!!」

「ウワァァァァァ!!!」

リアクションが、
石油掘り当てたレベル。

なぁオレ。

お前な。
最初は一人やった。
ほんで二人なった。
三人なった。

気付いたら、

後ろにちびっ子列できてる。

完全に引率の先生や。

でもな。
何が嬉しいって、
昨日まで警戒されてたんが、
今日は笑いながら付いて来る。

それが地味に嬉しかった。

なぁオレ。

この時点でお前、
ちょっと思い始めてたやろ。

祭り連れてったら、
一日食っていける。

距離感どうなってんねん

でもな。
驚いたんは、
ここからや。

昨日。

扉の向こうから、
コソコソ見てた子ら。

それが今日。

膝の上。

肩組む。

手握る。

背中叩く。

なぁオレ。

距離感どうなってんねん。

気付いたら、
一人乗る。
また一人乗る。
さらに乗る。

なぁオレ。

人気者というより、
ジャングルジムや。

昨日までやで。
扉の向こうから、
コソコソ見てたん。

それが今日。

普通に膝の上。

しかも全然遠慮ない。

なぁオレ。

信用獲得速度、
だいぶバグってる。

16歳のオレより、
ちびっ子達の方が、
よっぽど人懐っこい。

しかもみんな、

ずっと笑ってる。

言葉は分からん。

でも楽しそうなんは分かる。

なぁオレ。

昨日まで他人やったん、

もう忘れてる。

自慢大会スタート

ほんで次は、
自慢大会。

おもちゃ持ってくる。
サッカーカード持ってくる。
お気に入りのボール持ってくる。

なぁオレ。

みんな

「見て見て!」

や。

ほんでオレの手、
引っ張る。

走る。

階段上がる。

また走る。

ほんで。

ドヤ顔。

「△〇□〜〜〜!!」

何言うてるか、
全然分からん。

でもな。

たぶん。

「ここオレの部屋!」

やと思う。

知らんけど。

ほんでまた別の子。

また手引っ張る。

また部屋。

また説明。

また分からん。

なぁオレ。

イタリア語、
相変わらずわかってへん。

会話は成立してない

ちびっ子。

「△□〇〜〜〜!!」

オレ。

「オーーー!!」

ちびっ子。

「〇△□□〜!!」

オレ。

「ブラーボー!!」

なぁオレ。

雰囲気だけで生きてる。

たぶん向こうも、
オレが理解してると思ってる。

オレも、
理解したフリしてる。

全員幸せ。

なぁオレ。

国際交流って、
案外こんなもんかもしれん。

サッカーの話なんか。

ゲームの話なんか。

家族の話なんか。

全然分からん。

でもな。

笑ってる。

ほんでオレも笑ってる。

それだけで十分やった。

なぁオレ。

昨日まで、
言葉分からん国やと思ってたのにな。

今考えたら不思議や。

会話なんか、
ほとんど成立してへん。

でもな。

楽しかった記憶だけは、
めちゃくちゃ残ってる。

言葉って、
思ってるほど万能ちゃうんかもしれん。

結論

なぁ、あの頃のオレ。

お前な。
イタリア来て。
サッカー合宿参加して。
本場のサッカー学びに来た。

でもな。

気付いたら、
ちびっ子達の心、
根こそぎ持っていってる。

言葉通じへん。

文化も違う。

国も違う。

でもな。

ペン一本で、

全部飛び越えてもうた。

なぁオレ。

サッカーは、

まだまだ全然や。

でもな。

イタリア来て初めて、

「ここ来て良かったかもしれん」

って思った日やった。

ほんでお前、
最後まで思ってる。

この子ら、
サクラとして連れ回したい。

一言まとめ
ペン一本で、
イタリアのちびっ子達の警戒心は全滅した。

次回】
イタリア語覚えようとして、
なぜか大爆笑されたオレ。





無双する予定やった男

なぁ、あの頃のオレ。

ついに始まったで。

イタリアサッカー合宿初日。

昨日もらったユニフォーム。

紫色が主体で、
襟や袖は蛍光イエロー。

なかなか攻めてる。

さらに驚いたんが、

ソックス。

カカト部分ない。

なぁオレ。

お前その時、

「イタリアは大雑把で
日本は細やかやなぁ」

とか思ってる。

なぁオレ。

その時のお前、

急に文化評論家なってる。

お前いったい誰やねん。

ほんで前日の夜。

布団の中で無双してた。

ゴール決める。

観客沸く。

ヒーローインタビュー受ける。

なぁオレ。

まだ一球も蹴ってへん。

妄想だけワールドクラスや。

でもな。

その自信、

開始5分で粉々なる。

人生、

前フリ回収だけ異常に早い。

ボールより先に地獄

ほんで始まったんが、

まさかの体力テスト。

なぁオレ。

サッカー合宿やぞ?

ボールどこ行った。

ダッシュ。

切り返し。

シャトルラン。

説明聞いてる時点で分かる。

「あ、これ長いやつや」

なぁオレ。

メニュー構成に悪意ある。

建設業で鍛えた腕力には自信あった。

重たいもん持てる。

スコップ振れる。

汗もかける。

でもな。

走る体力、

ほぼ無かった。

使う筋肉、

完全に別やった。

開始数分で、

みんな

「スー……ハー……」

スポーツマン。

オレだけ

「ヒューヒュー……」

「ピーピー……」

「ヒョロロロ……」

なぁオレ。

音がおかしい。

壊れかけのリコーダーや。

胸苦しいとか、

足重いとか、

そんな話ちゃう。

途中から

「オレ今どんな音出してる?」

って考えてる。

その時点で終わってる。

そんな時や。

スーッと近寄ってきたのが、

白髪で細身の、

いかにも長老って感じの
じいちゃんコーチ。

背は高くない。

体も細い。

でも立ち方と目が違う。

この人、

たぶん昔は凄い選手。

今は完全に仙人寄り。

その白髪じいじが、

オレの顔をじーっと見て一言。

「息あがった時はな、

 両手を上げて、

 思いっきり吸って吐け。」

めちゃくちゃドヤ顔。

いかにも

「ええこと教えたったで」

みたいな表情。

なぁオレ。

その時のお前、

ちょっと期待したやろ。

イタリアの名コーチや。

何か秘密の技あるんちゃうかって。

結果、

深呼吸や。

でもな。

言われたらやるしかない。

ここで無視したら、

完全に空気読めん日本人や。

両手を天に突き上げて、

空を仰ぎながら、

「スーーーーーハァァァァァ!!!」

……。

……。

……。

変わらん。

全く何も変わらん。

なぁオレ。

5秒前のオレと、

今のオレ。

違いは、

両手上げただけ。

しかも周りのちびっ子達、

こっち見てる。

「なんやあいつ?」

「儀式か?」

「祈ってる?」

なぁオレ。

見た目だけなら、

完全に雨乞いや。

でもな。

白髪じいじ、

ずっとこっち見てる。

「どうや?」

「楽になったやろ?」

そんな顔。

なぁオレ。

期待値が重い。

ほんでお前、

「オー!」

「グラッツィエ!」

言うてる。

呼吸楽になってない。

全然なってない。

息、

まだヒョロロロや。

でもな。

白髪じいじ、

めっちゃ嬉しそう。

満足そうに

ウンウン頷いてる。

なぁオレ。

その顔見た瞬間、

もう言われへん。

「全然効いてません」

とは。

結果、

しんどいまま走る。

なぁオレ。

じいじは救われた。

オレは救われてない。

なぜかオレ改名される

結局その日は、

体力的にはボロボロ。

シャワー浴びた時、

足に力入らんくて、

座り込みそうになった。

なぁオレ。

お前な。

初日の目標、

「イタリア人に勝つ」

やった。

でも現実、

「なんとか立つ」

になってる。

目標設定、

だいぶ下方修正された。

その日の夜。

ベッドで死んでたら、

またちびっ子達来た。

なぁオレ。

昨日からずっと来る。

お前の部屋、

だいぶ人気スポットなってる。

ほんでふと思った。

そういや、

名前知らん。

お前、

一人ずつ聞いていく。


「マルコ」

「ジュゼッペ」

「アルベルト」

「ファビオ」

なぁオレ。

なんかイタリアって感じや。

サッカーゲームの
選手名みたいや。

ほんで次は、

お前の番。

名前聞かれる。

お前、

答える。

……。

首かしげられる。

もう一回言う。

……。

また首かしげられる。

なぁオレ。

そんな難しい名前ちゃうぞ。

ほんで誰か一人が叫ぶ。

「スーシー!」

すると周りも、

「スーシー!」

「スーシー!」

「オォォォ!!」

なぁオレ。

何がオォォォや。

誰も正解知らんのに、

全員納得してる。

ほんでその瞬間。

16年間使ってきた名前、

終了。

本人の意思、

一切確認されてへん。

なぁオレ。

何でスーシーなったんか、

今でも分からん。

でもな。

たぶん寿司や。

ほんで翌日から、

「チャオ!スーシー!」

「スーシー!」

「スーシー!」

会う人会う人、

みんな言う。

なぁオレ。

ちびっ子らの伝達力、

ハンパない。

到着2日で、

本名より浸透してる。

結論

なぁ、あの頃のオレ。

お前な。

体力テストで死にかけて。

白髪じいじの呼吸法試して。

名前変えられて。

初日からだいぶ忙しい。

でもな。

一番衝撃やったんは、

体力不足ちゃう。

改名の早さや。

なぁオレ。

呼吸法は効かんかったけど、

スーシーだけは定着した。

一言まとめ

体力は回復せんかったけど、
名前だけは一瞬で浸透した。

次回
なぜかイタリアのちびっ子達に
大人気になるオレ。


到着してからの歓迎

なぁ、あの頃のオレ。

ついに合宿地到着。

受付の建物に足踏み入れた瞬間。

「ウオォォォ!!」
「ベンベヌート!!」

イタリアのおっちゃん、
めちゃくちゃハグしてきた。

なぁオレ。

嬉しいような。
悲しいような。

人生でおっちゃんに熱烈歓迎された記憶、
ここしかない。

しかも何か色々しゃべってくる。

でもな。

何言うてるかは
1ミリも分からん。

ただ雰囲気は分かる。

「よう来たな!!」
「よく来た!!」

そんな感じ。

なぁオレ。

村一番の英雄みたいな歓迎されてるけど、
ただの日本のガキや。

いきなり巨大合宿

歓迎終わったら、
説明そこそこ。

そのまま部屋案内。

お兄さんが言う。

「ココ!」
「トゥオ・ベッド!」

たぶん、

「ここがお前のベッド」

そんな感じ。

部屋は4人部屋。

しかも合宿参加者、
めちゃくちゃおる。

どこ見ても人。
サッカーしに来てる。

また人。
ユニフォーム姿。

なぁオレ。

だいぶカオスや。

お前はもう、

「ついにイタリアでサッカーや……」

って震えてる。

でもその直後。

「こっち来い!」

言われて終了。

余韻、
ゼロ。

みんな食堂に集まる

ほんで食堂。

扉開けた瞬間。

ザワ……
ザワザワ……

全員見る。

ほんま全員見る。

なぁオレ。

振り向く速度、
ほぼ一致してる。

理由は単純。

アジア人、
オレ1人。

チビっ子なんか、
ポカーーーン。

口開けて
完全に見てる。

「なんや!?」
「あの生きものは!?」

そんな顔。

なぁオレ。

展示物ちゃう。
一般人や。

でもな。

その時のお前、
内心思ってたやろ。

(うわ……)
(全員見てる……)
(有名人やん……)

アホか。

ただ珍しかっただけや。

でも正直、
恥ずかしいような
嬉しいような気持ちやった。

部屋で準備

部屋戻って、
スーツケース開けてた。

すると入口の方で、

チョロ……
チョロ……

なんか動く。

見る。

イタリアチビっ子達。

でもな。

全然入って来ぇへん。

扉の向こうから、

顔だけちょこんと出して、

こっち見てる。

ほんでオレが見ると、

サッ。

引っ込む。

5人ぐらいおる。

でも来ぇへん。

なぁオレ。

向こうも警戒してる。

そらそうや。

アジア人見るん、
初めてやったかもしれん。

ほんでオレも、
どうしたらええか分からん。

なぁオレ。

お互い様子見。

完全に野良猫同士や。

でもな。

そこでお前、
思い付く。

「よし」

一発やるか。

取り出したん、
ペン。

指で揺らしたら曲がって見えるやつ。

あのマジック。

ほんでやった瞬間。

「ウワァァァァ!!!」

大歓声。
大騒ぎ。

さっきまで扉の向こうやった5人、
一気に部屋入って来る。

なぁオレ。

距離感、
消滅した。

肩叩いてくる。
ペン触ってくる。
めちゃ喋ってくる。

何言うてるかは
全然分からん。

でも楽しそうなんは分かる。

ほんで当然。

ペン取られる。

ペン争奪戦

ちびっ子達、
順番にやる。

フリフリ。
フリフリ。

……曲がらん。

またフリフリ。

……やっぱり曲がらん。

なぁオレ。

当たり前や。

ただのペンや。

でもな。

ちびっ子達、
めちゃくちゃ焦ってる。

「なんでや!?」
「さっき曲がったやん!!」

そんな顔。

ほんでお前、
もう一回やる。

ペン。

フニャフニャ。

「ウワァァァァ!!!」

大歓声。

なぁオレ。

サッカー合宿ちゃう。

完全にマジシャン来日公演や。

ほんでオレ、
合宿初日。

まだボール触ってへん。

でもな。

もう人気者や。

理由。

サッカーちゃう。

ペン曲げたからや。

本場イタリア、飯が強い

ほんで夕食。

7〜8人でテーブル囲む。

出てきたパスタ。

食う。

……。

うまい。

めちゃうまい。

なぁオレ。

本場、
反則や。

しかもイタリア人、

粉チーズを

ドサァァァァ!!!

雪崩みたいにかける。

なぁオレ。

もうパスタ見えへん。

ほぼチーズや。

さらに衝撃。

炭酸水。

見た目は水。

飲んだらシュワシュワ。

でも甘くない。

お前、

「え?」
「何これ?」
「アリなん?」

めちゃくちゃビックリしてる。

なぁオレ。

イタリア、
いちいち全部新世界や。

浮かれてるけど震えてる

夜。

テラス出る。

風、
気持ちいい。

なぁオレ。

昼間までペン曲げ芸人やった男が、
今は急に青春してる。

空見上げる。

その時ようやく、
静かになった。

明日から。

ほんまに。

イタリア人と。

イタリアで。

サッカーやる。

何年も夢見てた世界。

それが目の前。

正直、
ワクワクしてた。

でもな。

ちょっと怖かった。

楽しみと不安。

両方あった。

なぁオレ。

浮かれてるけど、
覚悟もちゃんと隣におった。

結論

なぁ、あの頃のオレ。

お前な。

イタリアまで来た。
夢の場所まで来た。

でも今のところ。

サッカー 0分

マジック 100%

なぁオレ。

方向性ちょっと迷子や。

でもな。

その夜見た景色。

あのワクワク。

あれは本物やった。

一言まとめ
サッカーしに来たのに、
初日の実績はペン曲げだけやった。

次回
到着2日目で改名されたオレ。


ボローニャの朝

なぁ、あの頃のオレ。

ボローニャの朝。

お前、
まず腹減ってた。

ほんで入ったん、
イタリアのバール。

響きだけでオシャレ。

なぁオレ。

まだ何も分かってへんのに、
イタリア感だけは味わおうとしてる。

ほんで頼んだん、
ハムとチーズ挟んだパン。

一口。

ガブッ。

……。

「っっっっ硬!!」

なぁオレ。

パンちゃう。
武器や。

日本のふわふわパンに慣れたお前、
朝からだいぶビビる。

でもな。

噛めば噛むほど、
うまい。

ハムもうまい。
チーズもうまい。

結局すぐに完食。

なぁオレ。

食べ物には順応早いな。

“ここ行きたい”だけで戦う男

ほんで次。

ボローニャ駅。

ここから合宿地へ向かう。

お前、
窓口行く。

地図広げる。

ほんで指差す。

「ココ!」

「ココ行きたいねん!!」

なぁオレ。

勢いだけで世界を渡ろうとするな。

駅員のおっさん、
最初めちゃ優しい。

紙出してくれる。

ほんでペン持つ。

サラサラサラ。

家みたいなん2つ描く。

□   □



ほんで説明。

「〇△□〜〜〜」
「△〇□〜〜〜」

なぁオレ。

何の説明かも
よう分かってへん。

でもな。

その頃のお前、
もう別のことで頭いっぱいや。

「質問できた。」
「通じた。」
「オレ今イタリア人と会話してる。」

なぁオレ。

そこがゴールちゃう。

まだ説明中や。

おっさん、
なんか文字書く。

字汚くてわからん。

ほんで矢印描く。

また説明する。

でもお前、
何一つ聞いてへん。

「オォ〜!」
「シー!」
「グラッツィエ!」

だけ。

なぁオレ。

理解度ゼロ。
達成感100点。

ほんでおっさん、
途中で止まる。

紙見る。
お前見る。
また紙見る。

なぁオレ。

気付かれてる。

完全に気付かれてる。

「コイツ……」
「全然分かってへんな」

って。

ほんで最後。

説明やめる。

チケット渡す。
ホーム番号書く。
指差す。

終了。

なぁオレ。

あのおっさんな。

途中から

『理解させる』

を諦めて、

『とりあえず乗せる』

に作戦変更してたと思う。

電車、ほんまに来ぇへん

ほんでホーム。

お前一人。

待つ。

10分。
来ぇへん。

20分。
まだ来ぇへん。

30分。
やっぱり来ぇへん。

時計見る。
チケット見る。
線路見る。
また時計見る。

完全にソワソワしてる。

しかもな。

お前、
だんだん思い始める。

「さっきのおっさん……」
「ホンマに合ってたんかな……」

いや。

おっさんは悪くない。

怪しいんは
お前の理解力や。

しかも聞いた話では、

急にストライキあるらしい。

なぁオレ。

初海外の16歳に
その情報与えるな。

不安しか育たん。

40分。

まだ来ぇへん。

なぁオレ。

この辺からお前、

電車待ってるんか
人生終わってるんか

分からんなってる。

ほんで。

だいぶ諦めかけた頃。

ゴォォォォ……

電車来た。

なぁオレ。

その瞬間のお前、
めちゃくちゃ安心してる。

もはや乗り物ちゃう。

救世主や。

電車乗る。

景色変わる。

都会減る。
建物減る。
緑増える。

なぁオレ。

お前また不安なる。

「これ降りる駅、
ホンマに合ってるよな……」

学習せぇ。

駅止まるたび、

窓見る。
チケット見る。
また窓見る。

落ち着け。

フルーツおじさん強すぎ問題

ほんで到着。

降りた瞬間、

めちゃ田舎。

静か。
人少ない。

なぁオレ。

ちょっと前までローマおったのに、

急に世界変わりすぎや。

ほんで駅前。

売店のおっさん。

いきなり来る。

「〇△□〜〜!!」
「フルーツ!!」
「フルーツ!!」

なぁオレ。

勢いがヤバい。

内容は分からん。

でも勢いは伝わる。

ほんで気付いたら、

買ってる。

なぁオレ。

何のフルーツかも
分かってへんやろ。

意思決定、
だいぶ他人任せや。

ほんで食う。

……。

うまい。
めちゃうまい。

甘い。
めちゃ甘い。

お前、
また感動してる。

なぁオレ。

イタリア来てから、

感動の8割、
食いもんや。

ついに夢の入口

ほんで荷物持って歩く。

知らん街。
知らん空気。
知らん景色。

でもな。

この先には、

夢見てたサッカー合宿がある。

イタリアのサッカー。

なぁオレ。

ここ来るまで、

土木。
親方。
ケガ。
ローマ迷子。
ホテル難民。

色々あった。

ほんで今。

ついにここまで来た。

胸ドキドキ。
足ガクガク。

でも心だけは、
ちゃんとワクワクしてた。

結論

なぁ、あの頃のオレ。

お前な。

イタリア語勉強して来たのに、

結局

「ココ!」

しか言えてへん。

駅員の説明聞いてへん。

電車来ぇへんだけで不安なる。

フルーツのおっさんに押し切られる。

だいぶ頼りない。

でもな。

そんなお前でも、

ちゃんとここまで来た。

なぁオレ。

夢の入口って、

もっとキラキラしてる思てたな。

実際は、

電車来ぇへんし、
言葉分からんし、
フルーツ買わされとるし、

だいぶ想像と違った。

一言まとめ
イタリア来たのに、
オレずっと「これ合ってる?」って顔してた。

次回】
いよいよサッカー合宿へ。
なぜか先に有名になったオレ。


奇跡の日本人コミュニティ

なぁ、あの頃のオレ。

ローマ着いたお前、
だいぶ挙動不審やった。

でもな。

空港で出会った
日本人大学生達。

めちゃ優しかった。

「一緒に観光行きます?」

その一言で、
お前の心は即加入。

なぁオレ。

海外来て最初に頼ったん、
結局日本人や。

でも当時のオレには、
それが命綱やった。

コロッセオと世界遺産

まず行ったんは、
コロッセオ。

テレビで見たやつ。

教科書載ってたやつ。

実物。

デカい。

デカすぎる。

お前、
口開けたまま固まってる。

「うわ……」

以上。

なぁオレ。

語彙力、
日本に置いてきたんか。

しかも感動しながら、

「財布あるよな……?」

確認してる。

なぁオレ。

世界遺産で
股間モゾモゾすな!

ほんで次。

フォロ・ロマーノ。

大学生達が説明してくれる。

「昔のローマ帝国の中心で〜」

でもお前の感想。

「……なんか、
きちゃない公園みたいやな」

なぁオレ。

世界遺産への感想、
最低や。

トレビの泉とアイス

ほんでトレビの泉。

お前、
コイン投げる。

チャポン。

満足。

でも後で知る。

後ろ向きで投げるんやった。

なぁオレ。

ルール間違えてるのに、
達成感だけ一人前や。

ほんでスペイン広場。

アイス食べる。

「うわっ……」

「めっちゃうまいやん……」

なぁオレ。

ローマの感想より、
アイスの感想の方が濃い。

さよなら保護者たち

でもな。

楽しい時間って、
終わる時は早い。

大学生達が言う。

「ところで合宿地ってどこなんですか?」

お前、

場所言う。

すると大学生達、

地図見る。

ほんで一言。

「結構遠いですね」

ローマ。



合宿地。

「……え?」

「そんな遠いん?」

北イタリア。

もちろん知ってる。

でもな。

距離感だけは
全然分かってへんかった。

でもな。

お前の頭の中では、

ローマ着いた。



あとちょっと。

そんな感覚やった。

大学生達が言う。

「今日はボローニャぐらいまでに
しといた方がいいかもね」

なぁオレ。

ローマ観光してる時、

だいぶ到着した気になっとった。

でも違う。

合宿生活、

まだ始まってもおらん。

ほんで最後。

「頑張ってください!」

その瞬間。

急に静かになる。

さっきまで聞こえてた日本語。

急に消える。

なぁオレ。

その背中見ながら、
思ってたやろ。

(待って。)

(まだ行かんといて。)

(オレ、まだ何も分かってへん。)

でも言われへん。

16歳。

変なプライドだけはある。

なぁオレ。

ここから先、
ほんまに一人や。

一人になって気付く

ほんで電車。

窓の外。

夕暮れ。

赤っぽい屋根。

古い街並み。

全部映画みたい。

お前、
窓に張り付いてる。

「うわ……」

「何ここ……」

なぁオレ。

景色だけで感動してる。

でもな。

大学生達と別れてから、

急に心細い。

さっきまで普通に喋ってた日本語。

今は聞こえへん。

周り見ても、

知らん人ばっかり。

なぁオレ。

当たり前や。

ここイタリアや。

でも当時のお前には、

急に世界が広なった気がした。

窓の外は綺麗やのに、

心の中はだいぶ不安やった。

ようやくボローニャ

夜9時頃。

ボローニャに到着。

暗い。

知らん街。

荷物重い。

足痛い。

そしてお前。

ホテル予約してない。

なぁオレ。

もうちょい予定たてとけ。

しかも16歳。

英語ほぼ無理。

イタリア語もっと無理。

そこで登場。

『地球の歩き方』

当時のお前の最強装備。

探し出した言葉。

「エコノミコ」

安い。

ホテル入る。

「ホテル?」

「エコノミコ?」

「トゥナイト?」

なぁオレ。

会話ちゃう。

ほぼ鳴き声や。

満室地獄

ホテル①。

満室。

ホテル②。

満室。

ホテル③。

満室。

ホテル④。

満室。

なぁオレ。

この辺から思い始める。

今日、
普通に野宿あるぞ。

しかも夜。

知らん街。

一人。

荷物重い。

心細い。

昼間まで
コロッセオ見てた男。

今は寝床探して
街さまよってる。

なぁオレ。

落差エグい。

青春というより、
ほぼ遭難や。

やっと見つけた居場所

歩く。

また歩く。

さらに歩く。

ほんでやっと。

「OK」

その一言。

なぁオレ。

たった二文字で
泣きそうになっとる。

ホテル入る。

部屋入る。

ベッド座る。

「あぁぁぁ……」

安心感、
ほぼ実家。

いや、
実家超えてた。

結論

なぁ、あの頃のオレ。

お前な。

ローマ観光してる時は、
全部うまくいってる気になってた。

でも現実は、

ホテル無し。

言葉無し。

計画性無し。

なかなかの三重苦や。

それでも何とかした。

何とかなるまで歩いた。

なぁオレ。

若さって、
勇気のことちゃうんかもしれん。

準備不足でも
突っ込んでまう力なんやろな。

一言まとめ
ローマ満喫してたら、
夜になって急に現実が追い付いてきた。

次回

「全部合ってるか分からんまま進むオレ」



ついにイタリア上陸

なぁ、あの頃のオレ。

ついにやな。

イタリア。

ローマ。

飛行機降りた瞬間、

空気違う。
匂い違う。

声デカい。
なんかみんな、
歩くスピード速い。

なぁオレ。

お前、
完全にキョロキョロしてる。

しかも頭ん中では、

「うわ……ホンマにイタリア来てもた……」

と、

「財布あるよな……?」

が同時進行。

なぁオレ。

感動と防犯。

どっちも全力や。

オカン特製、防犯システム

その時のお前、

もちろん装備中。

オカン特製、
股間財布。

トランクスの内側に縫い付けられた、
秘密のポケット。

財布収納。

なぁオレ。

イタリア来ても、
防犯システムだけ実家仕様や。

しかも歩くたび気になる。
座っても気になる。

安心感より違和感。

でもな。

当時のオレは本気で思ってた。

もしスリが来ても大丈夫や。

財布取られへん。

勝った気でおった。

……いや待て。

財布は守れても、

股間触られたら終わりや。

なぁオレ。

防犯の方向性、
ちょっと見失っとる。

ローマ、いきなり詰む

ほんで空港。

時刻は夜。

外もう暗い。

なぁオレ。

まだホテルにも着いてへん。

飛行機降りたら、

コロッセオ。
石畳。
イタリア人。

カフェ。
ピザ。

なんかそんなもん想像してた。

なぁオレ。

お前な。

空港着いたら、
もうローマの街やと思っとる。

でも現実。

まだ空港。
しかも中心地まで電車。

……は?

なぁオレ。

この瞬間のお前、

初めて知る。

空港って、

街ちゃうねん。

入口やねん。

切符分からん。
ホーム分からん。

案内板分からん。

全部分からん。

なぁオレ。

イタリア着いて30分。

早くも詰んでる。

しかもこの辺から、
妄想が始まる。

切符買われへん。



電車乗られへん。



空港で野宿。



スリ来る。



財布取られる。



股間財布だけ生き残る。



日本帰国。



「イタリアどうやった?」



「空港やった」

終了。

なぁオレ。

まだ何も起きてへん。

全部お前の脳内や。

世界一安心した日本語

完全に詰みかけた時や。

後ろから声。

「え、日本の方ですか?」

日本語。

その瞬間、

肩の力全部抜けた。

でもな。

当時のオレ。

ちょっと疑ってる。

詐欺ちゃうか。
宗教ちゃうか。

臓器売られるんちゃうか。

なぁオレ。

人助けに対する警戒心どうなっとんねん。

振り向く。

普通の日本人大学生。

めちゃくちゃ優しそう。

そして実際優しかった。

切符。
ホーム。
電車。

全部教えてくれた。

なぁオレ。

ローマ来て初めて、

心からホッとした瞬間やった。

夜のローマ

ほんで電車。

窓の外。

落書き。
知らん駅名。

知らん景色。

雑誌で見てたイタリアと違う。

駅着く。

夜。
人少ない。

なんか怖い。

犯罪なんか見てへん。

何も起きてへん。

でもな。

遠くの方で、
誰か叫んでる。

何言うてるか分からん。

でも当時のオレには、

「あっち行くな」

「財布取られるぞ」

「日本帰れ」

って聞こえた気がした。

なぁオレ。

イタリア語全然分からんのに、

怖い言葉だけ聞き取るな。

ホテルちゃうやろコレ

なんとか住所の場所まで来た。

たぶんここや。

たぶん。

でもな。

ホテルっぽくない。

看板小さい。
入口も分かりにくい。

しかも両開きのデカい扉。

なぁオレ。

ホテルちゃう。

マフィアのアジトや。

ほんで当時のお前、

勝手に映画始まる。

扉開く。



黒スーツ出てくる。



イタリア語で何か言う。



分からん。



囲まれる。



股間財布見つかる。



説明求められる。



イタリア語分からん。



ビーフプリーズ。



終了。

なぁオレ。

何が終了やねん。

まだ扉も開けてへん。

でも当時は本気やった。

ほんで勇気出して押した。

ギィィィ……

開いた。

なぁオレ。

映画やったら、

ここで絶対一人撃たれてる。

でも現実は、

観葉植物置いてあった。
受付のおっちゃんもおった。

ホテル到着、限界

でもな。

中入ったら、

ちゃんとホテルやった。

当たり前や。

お前以外、

誰もマフィアのアジトやと思ってへん。

部屋入る。

ベッド見る。

その瞬間。

「あぁぁぁ……」

って声出た。

緊張も。

移動も。

時差も。

全部一気に来た。

ベッド倒れ込みながら思う。

「……ホンマに来てもた」

数ヶ月前まで、

土木。
親方。
水道管。

ほんで今、

ローマ。

なぁオレ。

怖かったな。

不安やったな。

でもな。

もうちょいしたら、

サッカー出来る。

その事だけ考えてた。

結論

なぁ、あの頃のオレ。

お前な。

イタリア着いても全然スマートちゃう。

キョロキョロして。
財布気にして。

日本語聞いて安心して。

だいぶ挙動不審。

でもな。

それでよかった。

夢って、

だいたいカッコよく始まらへん。

なぁオレ。

あの日のお前、

世界に感動する前に、

世界にビビってたな。

一言まとめ
イタリア来たのに、
最初に覚えたんは海外の怖さやった。

次回】
ローマ満喫してたら急に一人になったオレ