映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン -16ページ目


ざらついた16ミリフィルムの映像。
そこにスマホの動画が重なる。
リアルとファンタジーの融合。


「バードここから羽ばたく」
12歳の少女の過ごす環境は劣悪だ。
シングルファーザーには間もなく結婚する女性がいて、母親は暴力的な別の男と暮らしてる。


居場所のない少女が出会ったのは、謎の男バード。
両親を探しているという彼に、少女は手を差し伸べるのだった。
昨年日本で公開されたフランス映画「動物界」を思い出した。


そこで描かれたのは、人間が動物に変化していくという奇病。
体がどんどん鳥になっていく男がいて、彼は必死に翼を羽ばたかせて、飛ぶ練習をしていた。
少女が出会うのも、バードと名乗る人物である。


手持ちカメラと徹底したリアリズム。
アンドレア・アーノルド監督は、自分の育った地域に近い場所で青春映画を撮った。
そこに加えたのが、少女に希望を与えるファンタジー要素だ。


現実は少女を打ちのめし、容赦なく彼女を追い込む。
バードは4日間、彼女に寄り添う。
後半に見せる少女の愛らしい笑顔に、我々は救われるのだ。


カンヌ国際映画祭正式出品作品。
鮮やかな撮影は、「哀れなるものたち」やケン・ローチ作品のロビー・ライアン。
立ち上がるきっかけはバードがくれたが、実際立ち上がったのは、彼女自身である。








ロバート・レッドフォードが89歳で亡くなった。
皆さんの好きな作品は何でしょうか?
やはりポール・ニューマンとコンビを組んだ「明日に向って撃て!」や「スティング」でしょうか?


「追憶」でしょうか?
「大統領の陰謀」でしょうか?
1970年代の若くて輝いていたレッドフォードの姿が甦る。


アメリカの古き良き時代の俳優を思わせる。
正統派の二枚目だけれど、映画を愛し、映画のために尽くした俳優。
それがサンダンス映画祭を主催したこと。


どれ程の若い映画監督や俳優が、サンダンス映画祭によって世に登場したことでしょう?
ブラッド・ピットもまた、彼の監督作「リバー・ランズ・スルー・イット」により、大スターの仲間入りをした。
監督作「普通の人々」もアカデミー賞を受賞。


才能に溢れ、何もかもを持っていた。
晩年も勢いのある映画監督と仕事を続け、存在を示した。
あの時代の俳優がどんどん亡くなっていくのは、淋しい。







呉美保監督作品へのハードルは、上がる一方だ。
おみぽ監督。
絶賛された「そこのみにて光輝く」ももちろん良かったが、「君はいい子」とかもっと評価されても良いのにと思う。


前作の「僕が生きてる、ふたつの世界」も彼女ならでは。
彼女が描く人間は多面的で、登場人物がそれぞれ面白い。
「ふつうの子ども」も、 いつもとは違う軽やかな展開だったが、全くもって呉美保ワールドであった。


主人公はごく普通の小学4年生男子。
環境問題に熱いクラスの女の子のことが気になり出す。
彼女に興味があるから、自身も環境問題を考え始める。


そこからクラスメートを交えて冒険が始まるのだ。
それは正に暴走、至って普通の子供達が起こす騒動。
次第にエスカレートしていく。


呉美保監督らしさが爆発したのは会議室のクライマックス。
蒼井優さん演じる主人公の母親や、瀧内公美さん演じる女の子の母親を交えての話し合い。
大人の身勝手さが炸裂し、止まらない。


瀧内公美という上手い女優を、アンサンブルの中で見事に輝かせていた。
しかも深刻にならず、笑わせるのだ。
登場人物の一挙手一投足に、誰もが目を見張ったに違いない。


呉美保監督の映画がますます好きになった。
子供達のころころ変わる表情の何と愛しいことよ。
幼い日に戻って、彼らの冒険に加わってみたくなった。