
正直、マリア・シュナイダーのことはよく知らない。
彼女の主演作である「ラストタンゴ・イン・パリ」も観ていない。
問題作であるということ以外は分かってない。

「タンゴの後で」はどうしても観たかった。
あの映画がどう問題だったのかを知りたかったからだ。
あまり評価もされてないし、さほどの話題になっていないにしても。

イタリアの映画監督ベルナルド・ベルトルッチは好きな監督である。
代表作「ラストエンペラー」はもちろん、「暗殺の森」や「殺し」、「シャンドライの恋」、どれもお気に入りだ。
しかし、この「ラストタンゴ・イン・パリ」については詳しくなかった。

暴行シーンについて、事前に知らされていなかったことが問題だった。
脚本に書かれているように、男女の性を描いたラブストーリーであり、ある程度のシーンについてはマリアは承知していた。
だが、暴行はマーロン・ブランドのアドリブであり、ベルトルッチだけがそれを理解していた。

マリア・シュナイダーはそのシーンの撮影後、トラウマに苦しんだ。
薬物依存になり、賞賛と同様に批判の的にもなった。
彼女は最大の被害者であった。

マーロン・ブランドをマット・ディロンが演じるのも興味深かった。
それにしても、これ程までにマーロン・ブランドやベルナルド・ベルトルッチへの憎しみが描かれているとは思わなかった。
マーロン・ブランドと言えば、映画の歴史を変えた名優である。

「ゴッドファーザー」や「波止場」、「欲望という名の電車」、「地獄の黙示録」と、燦然と輝く作品を残した俳優である。
ベルトルッチもまた、大きな足跡を残した名監督である。
今は亡き二人が、これ程怒りの矛先を向けられるとは。

マリア・シュナイダーはその後もトラブルを繰り返しながら女優も続け、58歳に癌で亡くなった。
「ラストタンゴ・イン・パリ」が彼女の人生を狂わせたのは間違いないだろう。
演じるのは、アナマリア・ヴァルトロメイ。

10歳で「ヴィオレッタ」で主演デビュー。
「あのこと」等、問題作に積極的に出演する今期待される女優だ。
マリア・シュナイダーが世間と戦ってから50年、悲劇は二度と繰り返してほしくないものだ。