
「愚か者の身分」を観ている間、自分が出会った、街の底辺を蠢く人達を思い出していた。
自分がバンドをやっていた頃の20歳代、渋谷の道玄坂百軒店。
三谷幸喜さんのドラマ「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」の舞台にもなっている場所だ。

1980年代後半だから、ちょうど自分もそこで生きていた。
お笑い芸人やバンドマン、ストリッパーも風俗嬢も、様々な人間模様があった。
皆、何かを求め、飢え、必死だった。

20歳代後半からは歌舞伎町でバイトし、役者をしながら食いつないでいた。
片足を突っ込んで、溢れるクズ達の中であっぷあっぷと息をしていた。
「愚か者の身分」の主人公達は、両足を突っ込み、抜けられなくなった若者だ。

歌舞伎町の闇ビジネス。
彼らは青春を謳歌するが、疑問も感じている。
このままでいいわけないと。

そこが肝心で、そのままブレーキも踏まずに突っ走る若者も多い。
人を人とも思わず、 私利私欲のために暴走する者達。
もちろんまともな人達もいて、抜け出すチャンスを窺う奴らも多い。

誘惑も多く、金と欲が交錯し、よっぽど強くないと足元を掬われる。
皆成功を夢見ているが、ほとんどは成功しない。
自分も成功に目が眩んでいたので、正常ではなかった。

3人の登場人物は、その大きな一歩を踏み出す。
危険を覚悟で。
今、この瞬間を逃したら、もう二度と抜け出せないかもしれない。
永田琴監督は、ぎりぎりを生きる彼らを偽りなく映し切った。
端から端まで、キャストの熱も半端じゃなく。
アクションもあるエンタメだが、彼らが明日に向かって生きているのでつい応援したくなる。

自分もあの街で抗ったからこそ、今の暮らしがある。
描いていた成功ではなかったが、楽しく暮らせてる。
もし今その現実と向き合っている人がいたら、どうしたら人生をやり直せるかを、一度立ち止まって考えてほしい。
