映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン -11ページ目


カトリーヌ・ドヌーヴに竹野内豊さん、堺正章さん共演。
何だか不思議な組み合わせで、気になるではないか。
「スピリットワールド」


日本、フランス、シンガポールの合作映画。
原題は 「Yurei」、そう幽霊だ。
カトリーヌ・ドヌーヴも堺正章さんも、死んで彷徨っている役だ。


なので、フランス語と日本語での会話が成立する。
カトリーヌ・ドヌーヴは圧倒的な美貌で登場したフランスを代表する女優だが、キャリアと共に演技も評価された大女優。
作品選びのセンスも独特だ。


フランスに留まらず、他国の監督とも積極的にコラボする。
自分が面白いと思ったら、今回のように低予算でも主演を張る。
シンガポールのエリック・クー監督に直訴し、シャンソンシンガーの役を得た。


年齢を重ねても、軽快に映画と向き合う姿が格好良く、今回は自らの歌も聴かせる。
堺正章さんは、ドヌーヴ演じる歌手の大ファンの役だ。
竹野内豊さん演じる息子を見守り、ドヌーヴも行動を共にする。


ドヌーヴも身軽なら、堺正章さんも身体能力を得意としてきた人。
「西遊記」でも、現在自分が録画して観ている「天皇の料理番」でも、もちろん「かくし芸大会」でも、堺さんは体を自在に使う。
ここでも、老いた父親を肉体で掴まえる。


ファンタジー映画だが、主要3人はアルコールに依存している。
人には後悔がつきものだ。
生きている限り何度もやり直しは効くが、再生も容易ではない。


群馬県高崎市と千葉県いすみ市の美しい情景が、優しく彼らを包み込む。
ドヌーヴ自身が望んだ、日本での撮影。
カトリーヌ・ドヌーヴも堺正章さんも、経験を積んだ今が素敵だ。






「愚か者の身分」を観ている間、自分が出会った、街の底辺を蠢く人達を思い出していた。
自分がバンドをやっていた頃の20歳代、渋谷の道玄坂百軒店。
三谷幸喜さんのドラマ「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」の舞台にもなっている場所だ。


1980年代後半だから、ちょうど自分もそこで生きていた。
お笑い芸人やバンドマン、ストリッパーも風俗嬢も、様々な人間模様があった。
皆、何かを求め、飢え、必死だった。


20歳代後半からは歌舞伎町でバイトし、役者をしながら食いつないでいた。
片足を突っ込んで、溢れるクズ達の中であっぷあっぷと息をしていた。
「愚か者の身分」の主人公達は、両足を突っ込み、抜けられなくなった若者だ。


歌舞伎町の闇ビジネス。
彼らは青春を謳歌するが、疑問も感じている。
このままでいいわけないと。


そこが肝心で、そのままブレーキも踏まずに突っ走る若者も多い。
人を人とも思わず、 私利私欲のために暴走する者達。
もちろんまともな人達もいて、抜け出すチャンスを窺う奴らも多い。


誘惑も多く、金と欲が交錯し、よっぽど強くないと足元を掬われる。
皆成功を夢見ているが、ほとんどは成功しない。
自分も成功に目が眩んでいたので、正常ではなかった。


3人の登場人物は、その大きな一歩を踏み出す。
危険を覚悟で。
今、この瞬間を逃したら、もう二度と抜け出せないかもしれない。


永田琴監督は、ぎりぎりを生きる彼らを偽りなく映し切った。
端から端まで、キャストの熱も半端じゃなく。
アクションもあるエンタメだが、彼らが明日に向かって生きているのでつい応援したくなる。


自分もあの街で抗ったからこそ、今の暮らしがある。
描いていた成功ではなかったが、楽しく暮らせてる。
もし今その現実と向き合っている人がいたら、どうしたら人生をやり直せるかを、一度立ち止まって考えてほしい。







目の前に、「世界で一番美しい少年」のパンフレットがある。
ビョルン・アンドレセンが亡くなった。
70歳だった。


ルキノ・ヴィスコンティ監督作品「ベニスに死す」で一躍スターになった。
老作曲家を狂わせる美少年役。
来日した時も、熱狂で迎えられた。


その後はパッとせず、2021年製作のドキュメンタリー映画「世界で一番美しい少年」では、不幸な生い立ちが語られた。
2019年にホラー映画「ミッドサマー」で復活。
ある意味、役の強烈さも含めて衝撃だった。


美少年として煌びやかに登場して、翻弄された人生。
狂わせる役を演じて、自分の人生が狂わされてしまった。
選ばれた奇跡の人生だが、色々思うところはある。