映画「クルージング」が意味するもの | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


現在、シネマート新宿で上映されている1980年の映画「クルージング」。
アル・パチーノ主演の異色作である。
監督は「エクソシスト」と「フレンチ・コネクション」で、映画の歴史に名を残したウィリアム・フリードキン。


昔観た時は、括りがゲイ映画であり、露骨な表現ばかりが目についた。
だが時を経て観ると、猟奇殺人を扱ったクライムムービーであったことを思い知らされる。
アル・パチーノが演じるのは、ゲイ連続殺人事件を潜入捜査する警官。


事件を調べていくうちに、自身が狂わされていくところが見所の一つ。
謎が深まるエンディングと言い、アル・パチーノがこの役を選んだ理由が分かる。
実際に1970年代にニューヨークで起きた連続殺人事件が元ネタ。


ゲイの男性が殺害されてバラバラにされ、ビニール袋に入れられてハドソン川に投げ捨てられていたと言う。
当時の社会的背景も浮き彫りになる。
失敗作かと思われたこの1作だが。


リメイク版の「恐怖の報酬」だってそう。
オリジナルのクオリティーと比較され、さんざんな憂き目に遭ったものの、再上映され、評価も高まった。
テレビムービーばかりを撮った晩年のフリードキン、実に勿体ない。


大人になって観ると変わる映画がある。
例えば、「竜二」なんかは若い頃には良さが分からなかった。
年齢を重ねて、まさかの感動にぶち当たる。


それと同じように、時代が変わって観ると気付かされる映画もある。
1990年代の猟奇殺人事件映画の流行を経て、LGBTQの時代を迎えた今、映画が一層の輝きを放つ。
単なるカルトムービーではないのだ。