アラン・ドロン再来呪縛から抜け出した男 | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


ラファエル・ペルソナ。
アラン・ドロンの再来と日本で紹介されたのは、11年前。
「黒いスーツを来た男」が公開された頃だ。


確かに美しく、整った顔。
しかし、その後あまり作品に恵まれず、少なくとも日本ではラファエルの名前はほとんど聞かれなかった。
主演最新作が「ボレロ~永遠の旋律」である。


ラファエルが演じるのは、名曲「ボレロ」で有名なモーリス・ラヴェル。
映画ファンなら「愛と哀しみのボレロ」での、ダンス・シーンが強烈に焼き付いていることだろう。
映画「ボレロ」は、その「ボレロ」誕生とラヴェルの生みの苦しみの物語である。


人間モーリス・ラヴェルは、謎に包まれていた。
私生活も決して思い通りではなく、彼の音楽も簡単には受け入れられなかった。。
それがラファエルという俳優と、ぴたっとはまった。


40歳代になり、深い皺も刻まれ、渋い大人の男の顔になったラファエル。
俯きがちな悲哀に満ちた表情は、モーリス・ラヴェルの人生と見事に重なった。
苦悩から解放され、「ボレロ」で彼が指揮する勇姿もまた、ラファエルの魅力を存分に発揮するのだった。


ただ煌びやかなのではなく。
ただ華麗なのでもない。
困難を乗り越えた末にようやく辿り着いた、自信に溢れたラヴェルの姿がそこにあった。


監督は「恍惚」や「ココ・アヴァン・シャネル」のアンヌ・フォンテーヌ。
今回は得意の女性映画ではなく、ラファエルの色気を十二分に引き出した。
それだけでなく、モーリス・ラヴェルの深淵にぐいぐいと迫った。


役に近付くための10キロの減量。
実際にほとんどのピアノも本人が弾いていると言う。
ラファエル自身も、こういう役を待っていたと語っている。


こんなラファエル・ペルソナが見たかった。
誰もを唸らせる代表作が生まれた。
美貌だけではない俳優ラファエルに、フランス映画ファンは大いに溜飲を下げたに違いない。