
午前十時の映画祭で上映された「スケアクロウ」。
1960年代後半から70年代にかけて、アメリカ映画に生まれたアメリカン・ニューシネマの1本。
ニューシネマの中でも特に地味なバディムービーであり、ロードムービー。
アメリカン・ニューシネマというと、反社会的で暴走する若者が主人公。
社会に矛盾を抱えながら、凄絶に生き、凄絶に散る。
「俺たちに明日はない」「卒業」「イージー・ライダー」「明日に向って撃て!」「真夜中のカーボーイ」等、インパクトもあり、傑作揃い。
そんな中で「スケアクロウ」は、偶然出会った男二人の脆くも壊れやすい友情を描く。
主演はジーン・ハックマンとアル・パチーノ。
正に、アメリカン・ニューシネマ誕生と共にスターになった二人だ。
ジーン・ハックマンは巨体を活かした暴れん坊。
アル・パチーノはピエロであり、笑うことに生き甲斐を持つ男だが、孤独で深い闇を偲ばせる。
二人の冒険が物語の核だ。
アメリカン・ニューシネマに今も惹かれるのは、嘘がないからだと思う。
自分の周りも彼らのように、東京の地で希望や夢に邁進したが、ほとんどが皆、花開くことはなかった。
自分自身もまだ、社会に埋没したままだ。
飢え、渇望している。
社会の藻屑になりたくないと、願っている。
だが、所詮。
俺達の映画がアメリカン・ニューシネマなのだ。
だから今、年齢を重ねて観ても、胸に響く。
ジーン・ハックマンの新たな旅路に、微かな光を感じた。