
今年、ホラー映画の帝王ダリオ・アルジェント監督が10年振りに復活したのは、ファンとしては嬉しいこと。
その出来が決して良くなくても、撮ってくれたことに感謝感激。
作品のクオリティーが高かったら、言うことなしだが。
6年前に引退宣言をしたアキ・カウリスマキの復活もそう。
「枯れ葉」が現在、絶賛公開中だ。
これがもう完璧なラブストーリーで。
カウリスマキ復活の裏には、ロシアとウクライナの戦争があるのだろうか?
ラジオでは、絶えずニュースで何人の被害者が出た、と暗い話ばかり。
それを耳にしながら、主人公達は目の前の生活に必死。
これまでの作品同様、主役の男女は不器用でシャイ。
底辺の生活で、食うのもやっと。
無表情で寡黙、饒舌ではないカウリスマキの記号がいっぱい。
主演は「トーベ」でトーベ・ヤンソン自身を演じたアルマ・ポウスティ。
フィンランドでは、トーベの演技で主演女優賞を獲得したと言う。
今回もカウリスマキの世界にどっぷり、時にチャーミングに不幸な女を演じる。
カウリスマキらしく映画愛も散りばめられ、ゴダールやブレッソン作品が語られる。
ジム・ジャームッシュのあの映画も劇中に使われ、笑いを誘うのだ。
カウリスマキ作品らしい間と静寂の笑い。
もちろん日本への愛も健在。
歌われるのは、「竹田の子守唄」。
昔バンドをやっていた頃、ボイストレーナーが「あなたに合うと思う」と持ってきた曲が「竹田の子守唄」だったっけ。
メロディーの美しい曲だ。
カウリスマキ作品に久々会えて、幸せな気持ちになった。
こんな時、映画ファンで良かったとつくづく。
世界は暗いニュースが多いけど、困難を乗り越えて出会う男女もいる。