
往年のハリウッド・ミュージカルを思わせるオープニング。
そこから怒濤の如く、主人公パールの暴走が露わになる「パール」。
A24がまた、やってくれた。
「パール」は「エックス」の前日譚である。
シリアルキラー誕生の物語だ。
ミュージカルのダンサーを夢見てる主人公が、道を激しく踏み外していく。
「オズの魔法使」の影響は顕著だ。
華やかな色彩、農場で歌い踊る主人公、案山子とのダンス、その光景が一変する。
そこにあるのは母親の存在だ。
1970年代のホラー映画が世界で大ヒットした頃の作品には、恐るべし母親が不可欠だった。
「キャリー」の母親はもちろん、「サスペリアPART2」の犯人も、明らかに常軌を逸した母親であった。
「パール」の母親も、主人公に現実を突き付け、農場に閉じ込める鬼母なのだ。
前作同様、「悪魔のいけにえ」の影響も大だ。
今回は、ロバート・アルドリッチの怪作「何がジェーンに起ったか?」からも、インスパイアされている。
下半身不随になった姉を監禁する異常な妹、確かにパールと重なるではないか。
ミア・ゴスの突き抜けた怪演も、称賛に値する。
決して美しくない彼女が、スターを夢見、嫉妬に狂い、「シャイニング」ばりに斧や鍬を振り回す様は、爽快感さえある。
特にラストの長回しのスマイルは、可笑しくも悲しく、感情に訴える。
タイ・ウエストの映画へのオマージュに溢れた演出も、絶品。
あっという間の102分だ。
ますますホラー映画ファンが増えることを期待したい。
夢破れても尚逞しく。
シリアルキラーに火がついた。
パールよ、負けるな!