これはもうモロに「ニュー・シネマ・パラダイス」と言っていいでしょう。
もちろん脚本が違うので物語は違うけれど、インド版「ニュー・シネマ・パラダイス」。
あの映画と同様、映画への愛情がこれでもかと詰まった秀作。
パン・ナリン監督の自伝的映画。
母親の作った弁当を映写技師に渡して映写室で映画をタダで観たり、映画のフィルムを盗んで少年院に送られたりは、真実なのだと。
なかなかアグレッシブな少年時代で羨ましい。
インド版「ニュー・シネマ・パラダイス」であるから、監督が敬愛する映画監督へのオマージュでいっぱいだ。
映画ファンなら、それを探すのも楽しいかも。
それこそ「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い出させるシーンもあり、思わず笑ってしまう。
パン・ナリン監督が影響を受けたのは、まずは映画の元祖リュミエール兄弟。
列車のシーンが数々登場するが、彼自身もリュミエール兄弟からの影響の大きさを語っている。
それから映画に取り憑かれた男スタンリー・キューブリック。
「2001年宇宙の旅」の影響も絶大のようだ。
それと、イギリスの巨匠デヴィッド・リーン。
「旅情」や「ドクトル・ジバゴ」等傑作を次々生んだ監督だが、この映画では「アラビアのロレンス」へのオマージュを見せる。
日本の監督の名前も挙がる。
黒澤明監督、小津安二郎監督、そして意外なのは勅使河原宏監督。
世界の黒澤明監督は当然だし、小津安二郎監督も世界中にファンがいる。
勅使河原宏監督はどちらかというとアート系の監督であり、クセも凄い。
「砂の女」や「他人の顔」、「おとし穴」、日本人でもマニアしか知らないような映画を観てるパン・ナリン監督の幅の広さ。
デジタルではなく、フィルムへの愛が顕著なのも、この映画の特徴。
例えば最近だと、日本映画「ケイコ 目を澄ませて」やショーン・ペンの新作「フラッグ・デイ 父を想う日」が16ミリフィルムで撮られていた。
デジタルの時代、フィルムで撮られる映画が今では珍しいのだ。
もうひとつは光への拘り。
この世の中が、いかに光で溢れているのかを我々は知るのだ。
光の鮮やかなこと!
映画を愛し、フィルムに夢中になり、光を追求 する少年よ、未来は眩しい光に満ちている。