幸福の黄色いフウセン | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


こういう映画にこそ、是非足を運んでほしいなと思う。
「とべない風船」。


豪雨災害で妻子を亡くした漁師の男と、教師の仕事で挫折した女の心の交流を描いている。
2018年7月の西日本豪雨から生まれた作品。
舞台は瀬戸内海。


喪失と再生を描いた映画は数多く、傑作も多い。
この映画は奇を衒うこともなく、実にシンプルでストレートだ。


過去を引きずり、不器用に生きる男と、その周りの人間の優しさ。
何もない島の美しさと、人間の温もりが伝わってくる。


東出昌大さんと三浦透子さん共演。
三浦透子さんは間違いなく、「ドライブ・マイ・カー」以降、映画の神に選ばれた女優でしょう。
昨年公開された「そばかす」も良かったし、我々の背中を押してくれた。


今回も変わらぬ自然体と、抑えた芝居の中で表情を巧みにコロコロ変える。
主人公の東出昌大さんも私生活では色々あったのだろうが、作品選びは抜群。


この映画でも、苦悩する男の脆さと生きる強さを体現し、観客の涙を誘う。
ひたむきに役を生きる姿が美しい。


乗り越えるのは容易ではない。
それでも彼は生きなければならない。
妻子のためにも。

自分もまだまだ再生していく。