メフィストフェレスに誘われて | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


母親に捨てられた少年が主人公の映画「ぜんぶ、ボクのせい」。
海辺で出会ったホームレスと、援助交際を繰り返す女子高生との心の交流を描いている。


内容が内容なだけに、オープニングからだいぶ重たい。
これが続くかと思いきや、オダギリジョーさん演じるホームレスの登場で、趣ががらりと変わる。
このホームレス、独特の価値観を持ち、とにかく自由なんだ。


悪いことばかりやってるんだけど、ユーモラスで憎めない。
独自の哲学があり、少年を導く様はまるで黒澤明監督の名作「生きる」に登場する伊藤雄之助さん演じるメフィストフェレスのよう。


少年はその出会いから生きるエネルギーに溢れていく。
やってることは犯罪まがいだが、自分に似た境遇を持つホームレスとの時間により、成長を遂げていく。
そう、ライアン・オニールとテータム・オニールが詐欺師を演じた「ペーパー・ムーン」とも重なる。


自分はカラッと笑える話しより、ずしんと重たい物語を好む。
人生はそんなもんだと思っているからか。
ずっと笑ってなんて過ごせないと思っているからか。


あともうひとつ、 何か展開が欲しかった気もするが。
それでも、あの伝説の大物俳優と一字違いの松本優作監督、まだ20代という若さでこんな達観した映画を撮れるなんて、これから大化けしそうな予感。
秋葉原無差別殺傷事件を描いた前作「NOISE」も観たくなった。


ホームレスがこの映画の核になる重要な台詞を言う。
私達人間に与えられた平等な権利とは?
ここから先は映画を観て。
とてもいいシーンなんだ。